Clap




Metallic Guy



姉からの手紙を畳み、封筒に納めた。同封されていたイタリアの絵はがきも、その中に差し込んだ。
机の引き出しを開けて中に入れてから、縁側に目を向ける。大柄というか巨大なシルエットが、そこにある。
両肩に付いた弾倉と長い銃身の目立つ腕が、がしゃりと上がった。照準でも合わせているのだろうか。
私は椅子を引いて立ち上がり、障子戸を開いた。胡座を掻いて座るリボルバーが、おう、と振り向いた。

「スズ姉さん。手紙、なんだった」

「琴音姉さん、当分戻ってこられないってさ。まぁ、あの人は気紛れだしね」

私はリボルバーの隣に座り、敷石と生け垣の並ぶ庭園を見下ろした。彼の落ちてきた池は、今は平和だ。

「気が済むまで絵を描いてから、帰ってくるんだって。だから、あんたが見つかる心配もないわけよ」

「そうか。なら、都合が良いじゃねぇか」

がしゃり、とリボルバーは左腕を振り上げた。太い銃身が伸び、じゃこん、と肩の弾倉が回る。

「ゼルの野郎のせいでやばくなっちまうのは、オレらのいる日本だけだからな。その方が、安全ってもんだ」

「ボルの助」

私は、左目をゴーグルに覆われた横顔を見上げた。ん、と彼は顔を向ける。

「なんでぇ」

「さっさと帰ってこないと、今度こそ締め出しちゃうわよ」

「ああ、解ってるさ。大事なスズ姉さんを守るのが、オレの任務であり最大の稼働意義だ」

にやりと笑ったリボルバーは、拳を手のひらにぶつけた。ばぎゃん、と装甲がぶつかる。

「恐ぇ思いも寂しい思いも、絶対にさせねぇって約束すらぁ」

「なーに言ってんの」

いつになく意気込んでいるリボルバーから目を外し、私は膝を抱えた。何を調子の良いことを、と思っていた。
ゼルとの戦いが始まれば、長引くのは目に見えている。どう考えたって、二三日で終わるはずがない。
その間、私はまた一人になる。彼が来る以前のように、家に戻れば一人きりになってしまうのは間違いない。
けれど。リボルバーの言葉のおかげなのか、不思議と、そんなに寂しい気はしなかった。
それどころか、ちょっと嬉しいかもしれなかった。



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