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03.寄り添う



 この時間が、永遠であってほしい。

 胸に感じる彼女の体温、規則正しい呼吸と鼓動、僕から離れたくないとでも言うように、腕を掴んで離さない手。
腕の間に納まってうたた寝をする由佳さんは、気持ちよさそうに目を閉じている。温かな日差しが、心地良い。
窓際に座っている僕と彼女は、かれこれ一時間ほどこの状態でいる。理由は簡単、由佳さんが起きないからだ。
 僕としては、手にしていた本も読み終えてしまったし、いい加減に動きたいけど、そんなことは出来るはずがない。
うっかり動いて起こしてしまったら悪いし、それに、この状態も悪いものじゃない。むしろ、最高と言える状態だ。
僕はそっと文庫本を下ろし、床に置いた。ずっと伸ばしていた背筋を少し曲げて、自由な右腕を由佳さんに回した。
引き寄せて抱き締めると、声とも付かない声が漏れた。由佳さんは僕に縋るように体を丸め、もっと深く寝入った。
 こうなってしまえば、もうしばらく起きないだろう。やれやれ、と思いながらも、僕はとても幸せでならない。
通常よりパワーを大分下げている手で、優しく髪を撫でてやる。その滑らかな手触りが、装甲越しでも感じられる。
ぱきり、とマスクを開けてゴーグルも頭部に収納し、素顔を晒す。僕は由佳さんの頬に手を添え、小さく言った。

「まだ、起きないで下さいね?」

 額に軽く口付けてから、僕は笑う。このまま、愛しい彼女と、愛すべきコマンダーと一つになってしまいたい。
身も心も由佳さんに捧げているのだから、それに近しいのだとは思うけど、それでもまだ僕としては不充分だ。
 隣と言わず、傍と言わず、永遠に在りたい。

 ずっと、あなたの傍にいたい。




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