スズ姉さん。オレは、帰れるから戦えるんだ。 オレが打ち砕いて大破させた部下共から出た炎が、煙を上げている。足元に流れる黒いオイルが、燃えていた。 辺りは、別世界になっている。広大な海岸線は、戦いながら移動していたせいでスクラップが散らばっている。 オレと同じボディカラーのマシンソルジャー共は、装甲を拳の形に抉られてエンジンを殴り壊されていた。 砂の感触が不快で、関節に入り込んだのがじゃりじゃりする。装甲を開いて蒸気を噴き出し、過熱を抑えた。 手近なスクラップに腰を下ろし、口の中に溜まっていたオイルを吐き捨てた。口元を拭ってから、気付いた。 オレは、この口をスズ姉さんと重ねたことがある。四度も強引に。だが、その口で部下の配線を噛み切った。 砂に吐き出したオイルの中に、ケーブルの破片がある。でかいタンクを黙らせるために、駆動配線を切ったんだ。 「姉さん」 都市部の向こうに沈む夕日が、傷だらけで塗装の剥がれた手を照らした。部下のオイルに汚れた、薄汚い手だ。 辛くないわけがない。だが、辛いなんて言っちゃならねぇ。オレは強い男で、強い兄貴で、強い戦士なんだから。 折れちゃいけない。弱くなったら、弟共まで弱くなっちまうのが目に見えてるし、スズ姉さんも不安になるからな。 だがよ。ちったぁ、泣いてもいいだろう。ボディを洗浄して修理したら、また姉さんの部屋に帰るから、その前に。 目元から、冷却水が溢れてくる。口だけなんとか笑わせてやってから、力一杯拳を握って声を堪えて、涙を流す。 殺しちまった部下達のためになら、少しくらい、オレが泣いたって構わないだろう。いや、むしろ泣かせてくれ。 泣くだけ泣いたら、ちゃあんと帰るからよ。 05 12/1 Metallic Guy レッドフレイムリボルバー |