気怠い眠りと夢から覚めて、現実に戻る。 目を刺してくる鋭い朝日に眉間を歪めながら、寝返りを打った。すぐ傍に、丸められた薄い背があった。 肩を隠している布団を払って、滑らかな肌に手を添える。なるべく起こさないようにしながら、引き寄せる。 長い黒髪を退けて、その下にある首筋に顔を埋める。血の通った人間の生温い温度が、体中に伝わってくる。 昨夜の情事の名残のような赤い痕を探し、彼女の鎖骨の上に見つけた。オレは、それに指を当てて這わせた。 「愛してるぜ」 形の良い耳元に囁いてから、オレは笑った。腕の中にある女の、何もかもが愛おしくて溜まらなかった。 つんと澄ました表情と態度に垣間見える残虐さも、乱射の際の狂気を含んだ眼差しも、母親らしい時の姿も。 このまま、また寝入ってしまいたかった。とても欲しかったものが手の中にある幸せは、最上の悦楽だ。 裏切ったときの爽快感や他人を陥れたときの気持ちよさとは全く違う幸福感が、全身に満ち足りてくれる。 もう、オレを一人にするなよ。いきなり死んだりするなよな。そんなことを思いながら彼女を、妻を抱き締める。 お前が来るまでずっと孤独だったとか、情けないくらい寂しかったとか、いくらでも言いたいし教えてやりたい。 だけど、そんなものはもうどうでもいい。オレの手の中にロザリアがいるんだから、どうだっていいことだ。 なぁ、ロザリア。お前だけなんだぜ。このグレイス・ルーが、うんざりするほど気に入っちまった女はな。 その体の、温もりすら逃したくないぐらいだ。 05 12/1 ドラゴンは眠らない グレイス・ルー |