光にも、色々ある。 ベランダに出した椅子に座る律子が、怪談ばかりを集めた本をめくっている。挿絵だけでもおどろおどろしい。 オレはそれを横目に見ていたが、目線を外した。ちゃんと見なくても何が書いてあるか解るし、何より怖い。 理屈の通らない不快感があって、どうにもこればっかりは苦手だ。そんな話のどこが面白いんだか、解りゃしねぇ。 壁に背を預け、シールドジェネレーターを内蔵した大きな両腕を足の間に投げ出したオレは、センサーを弱めた。 オレの装甲を舐めるように注いでいる柔らかな昼間の日差しが気持ち良くて、意識のレベルを低下させていく。 休眠状態一歩手前、といった状態になった頃、律子が言った。分厚い怪談の本から顔を上げて、オレの方に向く。 「フェンサー君の名前って、いい名前だよね」 「あ?」 眠気から引き摺り戻されて、オレは多少不機嫌になりながら返した。律子は、メガネの奧で笑う。 「だって、フォトンって光って意味でしょ?」 「だからなんだっつーんだよ」 「ディフェンサーはディフェンスで、守るって意味でしょ? だから、光を守るっていう名前じゃない。光を守るなんて、私はとっても素敵だと思うなぁ」 にこにこと楽しげに笑う律子に、オレは複雑な気持ちになってしまった。オレは、光なんて守ったことはない。 むしろ、その光で破壊するマシンソルジャーだ。オレは、自分のシールドを武器として使うことの方が多いくらいだ。 だけど。一度だけなら、守ったことがあるかもしれない。あの文化祭の日に、高校上空での戦闘の時に、お前を。 オレはそんなことを思いながら、また読書に戻った律子の横顔を眺めた。子供っぽいけど、可愛いツラしてるよ。 守る価値のある光があるとするならば、光と呼ぶべきものがあるとするならば、それは間違いなく律子だ。 オレの存在を認めてくれて、オレのコマンダーになってくれた女。そして、オレが初めて好きだと思った女だ。 いくらでも、守ってやるよ。考えただけで照れくさくて仕方ないから、そんなことは絶対に言えねぇだろうけどな。 日差しが柔らかい。だけど、それは昼間だからだけじゃない。柔らかくて優しくて、守ってやりたい光の傍だからだ。 コマンダーってのも、そんなに悪いもんじゃねぇな。 05 12/3 Metallic Guy イエローフォトンディフェンサー |