鬼蜘蛛姫




第二話 享楽の縫い始め



 転じて、城下町。
 首の根本をさすりつつ、九郎丸は人間に化けた格好で城下町を歩いていた。元々の体格が大きくないので人間に 化けたところで大した変化はなく、四尺足らずで小柄なチヨと並んでもあまり差はなかった。高下駄のおかげである 程度は背丈を水増し出来ているが、それがなければちんちくりんである。チヨは城下町に出かけること自体が楽しく てたまらないのか、足取りも軽く鼻歌まで零している始末だった。つい先程まで死体も同然だったとは思えぬほど、 チヨは生命力に溢れている。叢雲のみならず八重姫が圧倒されてしまったのも、おのずと理解出来る。
 いつのまにか暗雲は晴れていて、雲間から日差しすら注いでいた。本条城を取り囲んでいる街中は、雨の最中は 人影らしい人影はなかったが、日差しが出てきたからかちらほらと現れるようになった。市場では商人が外を窺い、 客が来ないか待ち侘びている。けれど、誰も彼も不安げで、辺りを窺いながら歩いている。脇目も振らずに前進して いるのは、チヨだけである。脇差しを差した侍や槍兵の姿も目に付き、警戒しているようだった。考えるまでもない、 八重姫の再来を危ぶんでいるのだ。だが、それを知るのは城内の者達だけらしく、城下町の住民達は殺気立った 兵士や侍を見ては驚いて足早に通り過ぎていった。瞬く間に、あらぬ噂が駆け巡ることだろう。
 市場にやってきたチヨは、次から次へと買い込んだ。おしめにするための使い古しの浴衣、やはり古着の着物と 帯、糸丸の飴湯を作るために不可欠な鍋、飴、糸丸の分と自分の分の椀と箸、寝ムシロ、などなど。それらの荷物を 持たせられた九郎丸は、人前でボロを出さないために文句を殺した。ただでさえ嫌いな人間に正体を見透かされ でもしたら、腹が立つどころでは済まないからだ。チヨは商人に代金を払ってから、怪訝そうに尋ねた。

「御侍様が色んなところにおらんるけど、なんかあったんけ?」

「それがよう、お城に化け物が出たらしいんでさぁ」

 永楽通宝を銭袋に入れてから、商人の男は声を潜めた。

「ここだけの話だが、御殿様の大事な大事な嫡男が攫われてしもうたとかで。俺はお城にもちょいと物を売っていて だな、そこの下男から聞いたから間違いねぇ。だが、あんまり大きな声で言ったりすんじゃねぇぞ」

「そら解っとるよ。御侍様に目ぇ付けられたくねぇすけん」

 チヨがへらへらと笑って手を振ると、商人の男はチヨと九郎丸を見比べた。

「しかし、お前さん方はあんまり見ねぇツラだな。何度も市を立てているんだが、山伏なんか見たの初めてだ」

「おらの兄貴だ。とおーい山さ登って、つらーい修行しとったんだて。ほんでな、おらもとおーい街でずうーっと奉公を しとって、里帰りしてもええって御許しを頂いたから、兄貴と一緒に帰ってきたんさ。んで、お姉に子が産まれたって 聞いてな、お土産にしようと思うて色々と買っとるんさ」

 長話をすると素性を怪しまれてしまうので、チヨは適当にはぐらかして市場から離れた。九郎丸もチヨと共に市場 から離れ、人通りの多い街中からも離れた。城下町から遠く離れ、集落に程近い川に来ると、チヨは足取りを弱め、 川縁で立ち止まった。大荷物を持たせられてうんざりしていた九郎丸は、これ幸いと足を休めた。手近な場所にでも 座れ、と九郎丸は手を振って促すが、チヨは応えなかった。ぼんやりと突っ立っているチヨは集落を見つめていたが、 片方だけの目からぼろぼろと涙を落とし、その場にしゃがみ込んだ。

「どうかしたのか、おい」

 面倒ではあったが九郎丸が声を掛けると、チヨはそれまでの強気な態度からは打って変わって泣きじゃくった。

「おらの家さ、どこにもねぇ……。知らねぇ家ばっかりだぁ……」

「そりゃそうだろう。お前さんがアレされてから、ひいふうみいよ、ざっと百年は過ぎておるんだからな」

 九郎丸の言葉に、チヨは顔を覆って背を丸めた。

「そんなら仕方ねぇけど、けんども、豪儀悲しいなぁ……」

「ケェッ」 

 九郎丸は唇を尖らせ、甲高い声を吐き捨てた。これだから人間は好かぬ。たかだか百年が過ぎたぐらいで悲しむ など、程度が低いにも程がある。女々しく泣き出したチヨは鬱陶しかったので、このまま放っておいてしまおうか、と 思っていると、首の根本が目に見えぬ糸によって引き絞られた。

「クケェッ!」

 八重姫の仕業か。荷物を転がしながら倒れ込んだ九郎丸は八重山の方角を睨み付けるが、糸は緩まない。

「おっ父もおっ母も、下の子らもみぃーんな死んでしもったんだろうなぁ……。おらしかおらんのかぁ……」

 声を詰まらせて肩を縮めるチヨから目を逸らすと、またも九郎丸の首の糸が引っ張られ、人間に化けているために 素肌が曝し出されている首の皮が浅く切れた。それどころか、肉にまで食い込んでくる。

「ギェエエエエッ!」

 あの女は本気だ。九郎丸が目を剥いて声を上げると、感傷を台無しにされたチヨが怒鳴った。

「ちったぁ静かにせんか! 悲しくてならんのに、なんで鴉どんに邪魔されねっとならんのけ!」

「文句なら俺でなく鬼蜘蛛の姫に申せ! 俺の首は今、飛ぶか飛ばぬかの瀬戸際なんだよ!」

 首に輪を掛けるように血が細く滲んだ九郎丸は妖力を手に宿して目に見えない糸を掴むが、八重姫が込めてくる 妖力の方が遙かに強いらしく、少し引っ張ったぐらいでは緩むどころか逆に手に傷が付いてしまった。慌てて糸から 手を離すが、こちらの様子が糸を通じて伝わったらしく、喰い込む力が一層強くなった。ぐげげ、と最早声ですらない 呻きを喉から漏らしながら九郎丸が身悶えていると、チヨは涙を拭ってから立ち上がった。

「鬼蜘蛛の姫様が早う帰ってこいっつってんだな。そんなら、とっとと帰るけ。ほれ、荷物を忘れんでねえ」

「誰のせいで足止め喰ったと思っていやがる! 切り替えるのが早過ぎやせんか!」

 痛みと苦しさに絶えかねて九郎丸が喚くが、チヨは涼しい顔をして買い込んだものを抱きかかえた。

「泣くだけ泣いたから気が済んだんだいや。ほれ、早う飛ばんけ」

「人間が妖怪を顎で使うな!」

「おらを鬼蜘蛛の姫様のところに連れて帰らねぇと、御殿様の御子の子守が出来んくなっちまうすけん、鴉どんの首は 今度こそ飛んでしまうんでねっか?」

「……それは道理かもしれんが」

 九郎丸が口籠もると、ほれほれ、とチヨは急かしてきた。仕方なく、九郎丸はチヨを脇に抱えると、もう一方の腕に 糸丸を育てるために不可欠な物資を抱えて翼を広げた。と、同時に空中に飛び出し、人間には目視出来ぬように姿 を消した。行きではチヨは悲鳴を上げていたが、二度目ともなると慣れたらしく、人智を越えた高さから見る景色を 楽しむ余裕すらあった。その場慣れする早さに戸惑いつつも、九郎丸は叢雲山を目指して飛んだ。
 それを見送る目が一つ。橋の下からのそりと巨体を出した僧侶は、雨の湿り気が残る菅笠を少し上げて鴉天狗の 行き先を辿った。ぎょろりとした目に骨張った顔付き、先の尖った耳、獣じみた牙が並ぶ口という人間離れした形相 が強張り、呻きが漏れた。僧侶の着物を身に纏った妖怪、一つ目入道の丹厳たんがんは嘆息した。相手が天狗では、いかに 同じ妖怪であろうとも後は追えない。丹厳には空を飛ぶ力などないからだ。人柱となった娘の行方ははっきりしたが、 訳が知れると逆に動きづらくなった。鴉天狗が飛び去った方角にある叢雲山は旧き時代から長らえている水神 が守り、隣の八重山には人喰い妖怪として名の知れた鬼蜘蛛の八重姫が住み着いている。チヨを手に入れよう にも、さすがに相手が悪すぎる。ならば、機を待つしかあるまい。そんな結論に至った丹厳は菅笠を下ろして顔を 全て覆い隠し、人間らしい形相に化けてから、菅笠を上げた。顔の中央に埋まっていた目玉は右側に移動させ、目玉が 填っていない左目の部分には布を巻いて目が悪いかのように装った。そして、懐から鈴を取り出すと、ちりんちりんと 鳴らして托鉢に来たかのような格好で経文を唱えながら歩き始めた。
 色即是空、空即是色。




 首の皮一枚繋がった、とは正にこのことだった。
 チヨと荷物を抱えて叢雲と八重姫の待つ氷室まで舞い戻った時、九郎丸の首はほとんど落ちかけていた。首の筋 や骨までもが容易く切り裂かれ、羽ばたくたびにぐらぐらと揺れて血潮が噴き上がった。チヨは青ざめてはいたが、 九郎丸の首が落ちないようにと支えてくれたおかげで、なんとか飛ぶことが出来た。氷室の入り口に向かって降りた はいいが足元がよく見えなかったせいで蹴躓き、荷物とチヨが吹っ飛んでしまった。ついでに首も落ちかけた。氷室 に放り出されたチヨは叢雲がヒゲの尖端で受け止め、荷物は二人分の寝ムシロにくるんであったので椀も割れずに 済んだが、九郎丸は無事とは言い難い状況だった。いかに妖怪といえど、これはさすがに辛い。
 片肌を脱ぎ、形だけではあるが糸丸に乳を含ませている八重姫は待ちくたびれていたらしく、チヨに赤子の世話の 方法をしきりに尋ねてきた。チヨは八重姫の格好を見て驚いたようだったが、母親らしくなってきたと褒めた。おしめの 付け方と取り替える間合いから始まり、寝かし付け方、抱きかかえ方、飴湯の作り方、と教えていったが、飴湯の 作り方を教えられた段階で八重姫はあからさまに狼狽した。叢雲も、首を付け直した九郎丸も。

「妖怪も神様も火は扱えんの?」

 市場で買ってきた火打ち石を手にしたチヨは、きょとんとした。

「というより、扱ってはならぬといった方が確かだ」

 叢雲がチヨに鼻面を近寄せると、チヨは眉を下げた。

「だども、湯を沸かさねっと飴湯なんて作れねって。赤子に生水なんて飲ませるわけにはならねぇし、そんなことして しもたら、腹ぁ下して死んでまういや」

「カカカカカカカ。こればっかりは、さしもの鬼蜘蛛の姫でもどうにもなるまい。諦めい」

 九郎丸が嘲笑うと、八重姫は鴉天狗を一瞥した。

「次は腑を引き千切ってくれようかえ」

「そんなら、おらが湯を沸かしてこさえるしかねぇなぁ。だども、鬼蜘蛛の姫様んとこで寝起きするのはなぁ……」

 チヨは身を引き、叢雲の鼻先にしがみついた。叢雲はチヨを蔑ろには出来ず、言った。

「ならば、おぬしは我の元で暮らすがよい。我への供物だ、我の傍におるのが道理というものだ」

「さすがは水神様、お優しゅうこって!」

 チヨは叢雲の堅いウロコも構わずに頬を寄せ、にんまりした。

「ならば、煮炊きはそなたに任せようぞ。他のことについて教えてくれぬかえ」

 乳を吸って落ち着いたおかげで泣き止んだ糸丸を抱きながら、八重姫はチヨに近付いた。チヨはうっと呻いて 逃げ腰になったが、深呼吸した後に八重姫に近寄った。

「そんなら、ちゃんと覚えれいや。鬼蜘蛛の姫様は、その子のおっ母になるんだすけんに」

「言われるまでもない」

 八重姫は腰を落とし、チヨに少しだけ目線を近付けた。抱いてばかりいると赤子も疲れてしまう、と言われたので、 八重姫はそれに従って糸丸を丸めた寝ムシロの上に横たわらせた。チヨは古い浴衣を差し出して寸法を示し、その 大きさに切り分けてから、四方を縁取るように縫っておしめを作るんだ、と言ったので、八重姫は糸ではなく爪先で 浴衣の布地を切り分けた。常日頃から糸を操っている八重姫にとって、布を縫うことなど造作もない。口から出した 糸の先を寄り合わせて針にし、手を動かしていくと、何枚ものおしめが出来上がっていった。その手際をチヨからも 叢雲からも褒められたので、少しだけだが良い気分になった。ついでに古着の着物の寸法も直してくれ、とチヨから 頼まれたが、それぐらいは自分でやれ、と言い返して針を付けた糸を吐き捨てた。やはり古着を解いて作った替え のおくるみにくるまれて新しいおしめを付けてもらった糸丸は、清潔になったのが気持ちいいのか、声を上げた。
 チヨが沸かした湯で作った飴湯を糸丸に飲ませてやると、満足するまで飴湯を飲んだ糸丸はとろりと瞼を下げて 寝息を立て始めた。その寝顔を見た途端、安堵と同時に奇妙な感覚が襲い掛かってきた。八重姫は糸丸の傍らで 腹這いになると、無防備な寝顔を穴が空くほど見つめた。チヨは糸丸の飲み残しの飴湯に沸かし直した湯を足して 飲みつつ、叢雲にどこに住むべきかとしきりに尋ねた。叢雲は絶え間ないチヨのお喋りに辟易しつつ、人が住めそうな 場所を探してくる、と言い残し、川に沿って這いずっていった。妖力を存分に注いで首を繋げた九郎丸は、八つの 目を全て開いて糸丸を凝視している八重姫の形相の凄まじさに肝を潰した。
 これからは、山が騒がしくなりそうだ。




 糸、糸、糸。
 指先一つ、動かせない。呼吸すらもままならない。こんなにも近くにいるのに、触れられない。狐火さえ出せれば、 焼き切ってしまえるのに。だが、この糸は締め上げると同時に妖力をも吸い上げていく。失血よりも凄まじい喪失感 が腰と言わず全身から力を抜き去り、眠気を誘う。眠れば最後、覇気を失ってしまうばかりか、この糸の主に取って 喰われかねない。妖狐の白玉は血臭から吐き気を催す腐臭に変わりつつある臭気をもろに吸い込んでえづいたが、 ぐっと歯を食い縛った。蜂狩貞元とその部下達が惨殺された現場には蜘蛛の糸がびっしりと張り巡らされ、隙間すら なかった。触れれば骨すらも断ち切るという抜群の切れ味は変わっておらず、今し方目の前に降ってきた一枚の 枯れ葉が細切れになっていた。手足に巻き付いた糸が肌を裂かずにいるのは、着物が阻んでくれているからだ。 だが、下手に動けば着物が切れてしまい、呆気なく手足が落ちるだろう。白玉と貞元が宙吊りにされてから、一昼夜 が過ぎただろうか。二人を戒める糸はどこからか飛んできてみるみるうちに縛り上げたため、糸の主は現れず終いで、 自由を求めて争うことすら出来ずにいた。その歯痒さたるや。

「お、おぉぉぉ……」

 悔恨を溢れんばかりに込めた呻きを漏らしながら、一際太い糸に全身を拘束されている蜂狩貞元は身を捩る。 が、鎧が切り裂かれただけであり、脱することは出来なかった。僅かに緩んだとしても、糸自身が意志を持っている かのように動いて先程以上の力で締め上げてくる。彼の足元には削げた肉が散らばり、雑草に埋もれている。

「お前様ぁ……」

 白玉が哀切に呟くと、貞元は手っ甲を填めた手を震えるほど強く握る。

「恨めしい、恨めしい、恨めしいぞ!」

「どうか、どうかお気を確かになさいまし。白玉は御側におりやす」

「儂の首はどこにある! 儂の兜は、儂の面頬は、どこにあるというのだぁああっ!」

 貞元が荒れ狂うと、ぎちぎちぎちぃっ、と糸が軋んで何本かが外れかけたが、すかさず締め付けてくる。

「早う返せ、儂の首を! 儂の藩を! 儂の部下を!」

「ああ……なんとお労しや……」

 白玉がたまらずに顔を背けると、貞元は怒りに任せて命じた。

「刀を持てい! さあ早う持たぬか、白玉や!」

「無理にごぜぇます、お前様。今は大人しゅうしておるしかありやせん」

 貞元の刀は、二人の足元から離れた位置に転げている。白玉が首を横に振ると、貞元は頭のない首を逸らして 野太い叫びを撒き散らした。かつては戦場で兵士達を奮い立たせていた雄々しい声には、今や荒井久勝への怨念 しか宿っていなかった。怨霊となった貞元の怒りに応えたのか、不意に流れ込んだ冷たい風が木々をざわめかせ、 成仏することもなく墓に入ることもない数多の亡霊が渦を巻いた。形にすらならず、意志すら朧気な白く濁った霊魂が 貞元にまとわりついてくる。だが、皆、貞元の強烈な怨念に打ち勝つどころか逆に圧倒され、水泡のように爆ぜては 消えていく。亡霊が一つ消えるたび、貞元の呼気が和らいでいるのに気付き、白玉は喜んだ。

「お前様、お楽になられたんで?」

「楽? そのような容易いものではないぞ、白玉や」

 胴の下で厚い胸板を上下させて深く息を吸った貞元は、生前のように語気が穏やかになっていた。

「人の怨念というものは、誠に良い味がするものぞ。念が深ければ深きものほど、儂の御魂に甘きものをもたらし、 血肉を補うかの如く埋めてゆくのだ。そうさな……戦場の物陰でそなたを貫いた時のような、たまらぬ快感よ」

「まあ……」

 その喩えに白玉が頬を染めると、貞元は哄笑した。

「亡霊は人の血肉に勝る兵糧よ! 幸いに、この山には亡霊が溢れかえっておるわ。恐らくは、この糸の主が旅人 や山越えせんとする者を喰い漁っておったに違いない。ならば、すぐには動かずに英気を養わねばな。腰を据えて 機を見計らい、動くべき時を見定められる者こそ良き将というもの。皆の衆、儂に喰らわれい! そなた達が長らく 宿しておった無念、儂が身を持って晴らしてくれようぞ!」

 旗竿を付けて馬に跨り、軍配を振り翳しているかの如く、貞元は声を張り上げた。木々の狭間に身を潜めていた 亡霊が呼応し、彼らのどよめきを受けた森が波打つ。人らしき形を持った亡霊、首だけの亡霊、手足だけの亡霊、 臓物がすっぽりと抜けている亡霊、亡霊、亡霊、亡霊、亡霊。言うならば、亡霊の行軍だ。その中には貞元の部下 であった武将や兵士の姿もあり、貞元に引き寄せられた末に取り込まれた瞬間、部下達は歓喜の叫びを上げた。 白玉は貞元がおぞましい覇気を取り戻していく様を見つめ、心の底から惚れ惚れした。
 それでこそ、蜂狩貞元という男だ。





 


11 7/14