校舎の雰囲気は、いつもとは違っていた。 一歩中に踏み込むと、外の喧噪との距離が開き、妙な静けさが感じられる。そして、緊張感が満ちている。 廊下には泥と砂の足跡が散らばっていて、敵が逃げ込んだのだと解る。静かなわりに、人の気配はあった。 だが、息を殺しているために、どこにいるかなどは正確に解らない。近いはずなのに、距離感が掴めない。 相手は、プロだ。私みたいな、生半可な技術と覚悟でこの場にいるのではない。経験と実績があるのだ。 気配が掴めなくて、当たり前だ。こういう場合は、北斗とグラント・Gに頼るしかない。私は、二人を見やった。 北斗は自動小銃を持ち、いつでも引き金を引けるようにして壁に背を貼り付け、教育棟の入り口の傍にいた。 グラント・Gはその反対側におり、固まっていた。無駄な音を立てないためなのか、首すらも動かさない。 北斗は校舎の中をじっと睨んでいたが、ちぃ、と悔しげに舌打ちした。落としていた腰を上げ、首を前に出す。 「ええい、やかましい。雑音が混じるではないか!」 「Oh,yes! 奴ラニハ、礼儀ッテモノハネェノカヨ!」 グラント・Gも、腹立たしげにする。二人とも声を潜めていて、近くにいなければ聞こえない程度の声量だった。 二人が何に対して苛立っているのか、考えずとも解る。今回の事件をスクープしようと押しかけた、報道陣だ。 自衛隊以外のヘリの騒音も聞こえてくるし、リポーターの声もしてくるし、人が集まればやかましくなってしまう。 そのため、校舎の中の気配が掴みづらいのだ。人間より遥かに感覚の優れた二人は、余計に厄介なのだろう。 下手に感覚が鋭敏な分、いらない音まで拾ってしまうのである。グラント・Gは、左腕のドリルを一回転させた。 「ダガ、コノママジャ埒ガ明カネェナ。サッサト事ヲ進メネェト、Trouble ガ起キチマウゼ?」 「自分もそう思う。だが、武器弾薬は限られている。一階で使い切るわけにはいかん」 北斗が呟くと、Oh、とグラント・Gは少し楽しげにした。 「ダッタラ、オレニ任セナ、brother。イイ方法ガアルゼ!」 「具体的には?」 私が尋ねると、グラント・Gは左腕のドリルを掲げる。 「オレノ、コノデストロイドリルヲ使ウノサ! very very funny ダゼ!」 「デストロイドリルとは…名が付いていたのか」 北斗が意外そうにすると、グラント・Gは妙に自慢気にデストロイドリルを振り回した。 「Oh,yes! very cool ダロ? オレガ一階ニ突ッ込ンデ、敵ヲ掻キ乱ス。ソノ間ニ、二人ハ前進シテクレ!」 「了解した。一階の制圧は任せたぞ、グラント・G」 北斗が頷くと、グラント・Gはキャタピラを軋ませながら教育棟の入り口に入っていった。 「meet again,brother グラント・Gの大柄な影が、廊下に進んでいった。Hahahahahahahahaha、とテンションの高い笑い声がする。 その声を掻き消そうとするかのように、銃声が轟いた。だが、それにも全く怯むことはなく、彼女は進み続ける。 不意に、敵の銃声が破壊音で途切れた。激しいモーター音と共に、コンクリートが打ち砕かれた音が響いた。 それが、何度も続いた。時折、人間と思しき悲鳴も混じるが、その悲鳴は機関銃の銃声によって潰された。 廊下から流れてくる砂埃と硝煙で、私はむせそうになったが咳を堪えた。硝煙の中に、鉄錆の匂いがあった。 私は、出来る限りそれを感じないようにするため、気を張り詰めさせた。今は怯えるな、後で怯えればいいんだ。 敵の悲鳴の合間に、絶叫もする。Grant,Grant.G、と英語で彼女の名を叫んでいるが、彼女は聞き入れていない。 銃声が数発聞こえると、その絶叫も止んでしまった。グラント・Gは更に壁を壊したのか、校舎全体が少し震えた。 「行くぞ、礼子君。今のうちに前進するのだ」 「了解」 私は頷き、駆け出した。北斗は私のすぐ前を、身を屈めながら走って、二階に続いている階段を昇っていった。 階段の踊り場まで駆け上がった直後、背後で強烈な爆風が吹き抜けた。思わず足を止めると、北斗が急かした。 「立ち止まるな、前に進むのだ!」 「了解!」 私はグラント・Gのことが気になったが、それよりも今はこちらの方が優先だ。目の前の、北斗の背を追った。 一足先に二階に辿り着いた北斗は、足を止めた。私が止まると、北斗は私を制してから、腰を落とした。 「顔を出すな!」 北斗は強く叫ぶと、自動小銃の引き金を押し込んだ。ががががががっ、と間近で銃が撃たれ、空気が震えた。 人間の呻きと共に、何かが飛び散る音、鈍い落下音、苦しげな絶叫。北斗の銃声が止むと、それらも止んだ。 私は、北斗の背後から廊下を窺った。二階の教室の掲示板には、二年生の誰かが描いた絵が張り出してある。 ステンレス製の水盤の傍には、節水、と書かれた張り紙があるが、そのどちらにも赤黒い飛沫が散っていた。 辺りには、硝煙と共に生臭く吐き気を催させる匂いが立ち込めていた。私は、思わず口元を押さえて唸った。 「…う」 こんな光景、まともに見るものじゃない。だが、真正面にあったので、否応無しに目に飛び込んできたのだ。 手に自動小銃やサブマシンガンを持った、自衛隊に良く似た恰好をした敵の戦闘員は、全員射殺されている。 いずれも防弾装備のない急所を狙われていて、顔面、首、腕、足などを撃ち抜かれ、肉が吹き飛ばされている。 見てはいけない、と思って目を逸らしたが、目に焼きついてしまった。喉元に、苦いものが込み上げてくる。 「大丈夫か、礼子君」 北斗は自動小銃を下ろし、私を見下ろした。私は北斗の袖に手を掛け、力一杯握り締めた。 「あんまり…」 「生理現象なのだから、仕方あるまい。だが、これから先は慣れていかねばならんぞ」 北斗は淡々と言い、行くぞ、とさっさと先に進んでいく。私は足を前に進められなかったが、強引に前へと出した。 昼休み前で、何も食べていなかったので胃の中が空っぽだったのが幸いし、辛うじて吐き戻すことはなかった。 北斗の背だけを見るようにして、前に進む。ジャングルブーツの靴底に、粘ついた液体がまとわりついてくる。 二年C組の教室の前までやってくると、北斗は足を止めた。今し方射殺された死体が、壁によりかかっていた。 北斗は脇のホルスターからソーコムを抜くと、おもむろに発砲した。死体のすぐ後ろを狙って、二発撃った。 ぴん、と薬莢が飛び、足元に転がる。北斗はソーコムを脇のホルスターに差し込むと、私の腕を引っ張った。 「何も見るな、礼子君」 私もそうしようと思って前だけ向いていたが、視界の隅に入ってきた。死体の影に、もう一人、いたらしかった。 北斗のソーコムで撃ち殺されていたが、それがまた、凄まじかった。頭の原型が、いや、これ以上は止めよう。 私の腕を掴んでいる北斗の手は、心なしか力が強かった。私を連れている不安からか、それとも別の感情か。 きっと、そのどちらなのもだろう。私は、北斗が本来の役割を果たしているところを見るのは、初めてだった。 これが、戦闘兵器である彼の使命なのだ。人間に成り代わって、人間を制するために造られた、人間の道具だ。 だから、北斗が人間を殺すのは、必然なんだ。怖いとか思わないわけではないけど、もう、覚悟は出来ている。 私は北斗に掴まれている腕をずらして、北斗の大きな手に触れた。一瞬、身動いだようだったが、掴んできた。 死体も血も落ちていない、反対側の階段までやってくると、北斗は一度足を止めた。振り返らずに、言った。 「礼子君。それで、良いのか。本当に、良いのか」 北斗の手が、私の手を柔らかく包んだ。私も、北斗の手を握り返してやる。 「いいのかって聞かれたら、良くないって思うけどさ。でも、そういうところも含めて、北斗は北斗だから」 人を殺すことは、いいわけがない。その相手がどういう人間であろうと、殺してしまうのは悪いことだと思う。 北斗や南斗、グラント・Gは、人間の代わりをしているだけだ。彼らは、そのために造られた戦闘兵器なのだから。 それを、とやかく言うのは、何かずれていると思う。悪いことだけど、いいことじゃないけど、それが必然なのだ。 それに、北斗や南斗やグラント・Gが戦ってくれなければ、もっと人が死ぬ、もっとひどいことになってしまう。 北斗は私に振り向こうとしなかったが、笑ったようだった。その証拠に、声色が少しだけ明るくなっていた。 「自分も、そういうところを含めて、礼子君が好きなのだ」 「先、進もう」 そう言われて、私は変に照れてしまった。うむ、と北斗は頷くと、私の手を離して自動小銃を構え、階段を昇った。 私は北斗に続いて三階に向かう階段を昇りながら、階下を見下ろした。一階の廊下には、瓦礫が転がっている。 グラント・Gはまだ暴れているのか、そこかしこから破壊音がする。おいおい、一階を全部壊す気じゃないだろうな。 北斗は慎重に階段を昇り、三階の廊下に面した壁に背を当てた。私もその後ろに身を隠し、様子を窺った。 だが、三階に来た途端に、人の気配はなくなった。専門棟からの銃声や、一階からの轟音しか、聞こえてこない。 敵戦闘員は、一階と二階にいたのが全員ではないはずだ。それに、太陽が逃げ込んだ先は、ここしかない。 専門棟にいるのであれば南斗や神田隊員から報告があるだろうし、逃亡を図ったなら、捕まえられているはずだ。 だから、ここへ追い詰められているに違いない。だが、どうして、わざわざ退路を失うような真似をするんだ。 そんなことをしては、今度こそ捕まえられるか、射殺されるだけだ。逃げてしまった方が、余程良策に思える。 形勢逆転出来るような作戦でも、あるのだろうか。だが、仲間のほとんども失って、戦力も大分削れている。 作戦があるにしても、一人きりではどうにもならない。投降するのか、いや、もしくは自決でもするのだろうか。 どちらにせよ、後味の悪い結末になりそうだ。もっとも、後味の良い戦いなんて、この世にないと思うけど。 『こちら南斗、北斗、応答せよ』 不意に、耳に差し込んだイヤホンから南斗の声がした。北斗は、すぐさま応答する。 「こちら北斗。教育棟、一階、及び二階の制圧を完了。損害ゼロ、敵戦闘員、全滅」 『専門棟の制圧も完了した。損害ゼロ、敵戦闘員、全滅。李太陽は確認出来ず、そちらにいるものと思われる』 「了解」 北斗が返すと、南斗が言った。 『礼ちゃんは?』 「無事だ。無用な心配をするな」 『りょーかい。んじゃ、オレとカンダタもそっちに向かうわ。今度こそ、李太陽を確保しねーとな。交信終了!』 南斗からの無線が切られた。北斗は、一度専門棟の方に目をやったが、私を見下ろしてきた。 「前進しようではないか、礼子君」 「なんで? 南斗と神田さんが来るまで、待っていた方がいいんじゃないの?」 私が訝ると、北斗は自動小銃のマガジンを外し、新しいものを付けた。 「その僅かの間に、李太陽に自決でもされたら困るではないか。自分達の任務は、あくまでも確保なのだ」 「他の戦闘員は殺しまくったのに? ていうか、前もそうだったよね」 私も、MP5Kの残弾を確かめた。まだ一発も撃っていないので、丸々残っている。北斗は、廊下に顔を出す。 「李太陽は未成年であるし、偽造とはいえ日本国籍を持っておる。殺すと後々が面倒なのだ。だからだ」 「あ、そう」 私は、そのドライな理由に納得しつつもげんなりした。確かにそうだが、あまりはっきり言わないでくれ。 北斗は廊下から三階の教室を凝視していたが、ふと、上を見た。私はその先を辿ったが、天井しかなかった。 「ここではないな。屋上におるぞ」 「何、解るの?」 「解るとも。李太陽は礼子君と自分達の偽物のドッグタッグを持っているのだが、その双方に発信器が仕込まれておるのだ。高宮重工の造ったものだ、仕込んでおらんわけがない。今は、そのどちらも自分達の真上だ。だから、李太陽は屋上にいることになる。さあ行くぞ!」 北斗はそう言うと、階段を更に上に昇っていった。用意周到というかなんというか、高宮重工はやっぱり恐ろしい。 私も、北斗の後を追った。先程からずっと階段を昇りっぱなしなので、さすがに足がくたびれてきてしまった。 だが、足を止めてはいけない。私は気合いを入れて、階段を昇りきり、屋上に繋がる扉の前へとやってきた。 北斗はその扉に手を掛けようとしたが、止めた。私を制すると、かなり慎重な手付きで、ドアノブを回した。 磨りガラスの窓が填っているスチール製の扉が、ほんの少しだけ開けられた。その隙間から、細い糸が見えた。 あれはきっと、ワイヤーだ。ということは、その先に手榴弾があるのか。北斗は扉を閉めると、窓を叩き割った。 派手な音がして、磨りガラスが砕けて飛び散った。北斗はそこから腕を突っ込んで、手榴弾を外してしまった。 「とお!」 外した手榴弾を持ったまま、北斗は扉を蹴破った。スチール製の扉は大きくへこみ、でかい足跡が付いた。 「お返しだっ!」 北斗は手榴弾のピンを抜いて投げ捨てると、振りかぶった。その手榴弾が向かった先には、人影が立っていた。 彼は急いで飛び退き、落下してくる手榴弾から距離を開いた。数秒後、閃光が迸り、熱い衝撃波が抜けた。 その爆音が耳に残って少し痛くなったが、私はそれを堪えながら目を開いた。屋上には、黒い煤が付いている。 放射状のヒビが入っている真っ黒な焼け跡からは、薄く煙が昇っている。その先では、太陽が身を屈めている。 「七分四十八秒…。予想より早いな」 「これでも、自分にしては遅い方だがな」 北斗は、太陽を見据えた。太陽は制服のままだったが、ホルスターを身に付けて、自動小銃を背負っていた。 太陽は素早く自動小銃を構えると、その銃口を私に向けた。私が身動ぐよりも先に、北斗が自動小銃を挙げる。 「徐装せよ、李太陽! もう、お前に勝ち目などない!」 「さっさと諦めな、死ぬよりかマシだろ?」 いきなり、南斗の声がした。見上げると、北斗の反対側に南斗が浮いている。こちらも、自動小銃を構えている。 太陽は驚いたのか、急に南斗に振り返った。南斗はにやっとしながら徐々に高度を下げて、屋上に降りてきた。 「武器を捨てて手を挙げな。動くんじゃねぇぞ」 「南斗、神田さんは?」 私が南斗に尋ねると、南斗は太陽に銃口を向けたまま、校門側を指した。 「こっちに来るはずだったんだけど、なんか引っ掛かることがあるっつって、オペレートトレーラーに」 「まぁ良いだろう。カンダタなどおらずとも、自分達だけで充分だ」 北斗は屋上に踏み出ると、太陽との間を狭める。南斗もまた、太陽の背後へとじりじりと迫っていく。 「そうそうそう。後は拘束するだけなんだから、オレらだけで事足りるっつーの」 太陽は二人を睨んでいたが、手にしていた自動小銃を放り投げた。ホルスターからも、拳銃を抜いて捨てた。 「そう、それで良いのだ」 北斗の銃口は、太陽の額に向けられていた。太陽はもう一挺の拳銃も抜いて放ろうとしたが、グリップを握った。 太陽は正面の北斗に狙いを定めると、躊躇いなく引き金を引いた。北斗が逃げるよりも先に、弾丸が炸裂する。 だが、予想していた硬い音はせず、北斗の顔のゴーグルに赤い塗料が飛び散った。それは、マーカー弾だった。 「なっ」 マーカー弾で視界を奪われた北斗が一瞬戸惑うと、太陽は身を翻して、南斗のバイザーにも同じように撃った。 「ふぎゃっ!」 変な悲鳴を上げ、南斗は仰け反った。バイザーで弾けたマーカー弾は、バイザーだけでなく、顔全体も汚した。 なんで太陽がそんなものを、と思ったが、すぐに思い当たった。これ、私が持っていたマーカー弾じゃないか。 そういえば、敵戦闘員に奪われたままだった気がするが、こんなところで使われるなんて思ってもみなかった。 北斗の影から、太陽は身を滑らせて現れた。私がMP5Kを上げるよりも先に、太陽は二発ほど私に撃った。 「やっ」 胸とヘルメットに命中し、赤い塗料が広がった。私は着弾の衝撃で仰け反りそうになったが、足を踏ん張った。 ヘルメットを伝って落ちてきた塗料がゴーグルに付いて、汚れてしまう。私は、急いでゴーグルを拭った。 太陽はマーカー弾の入った拳銃を下ろしてホルスターに戻すと、紺色のスラックスのポケットに手を入れた。 何を出す気だ、と私が身構えると、太陽は携帯電話を取り出した。フリップを開き、ボタンを数回押す。 「人型兵器ってのはな」 太陽は携帯電話を握り締めると、うっすらと笑った。 「高宮の専売特許じゃねぇんだよ」 反対側のポケットを探った太陽は、何かを私に放り投げた。私の足元に、ちゃりっ、と二枚の金属板が落下した。 「そいつは返すぜ。お前らを誘き出すために狙ってただけだからな」 私は、私のドッグタッグと北斗の偽物のドッグタッグを拾い上げた。太陽の笑みは、更に冷たさを増した。 「鈴木礼子」 太陽は、穏やかな口調で言った。 「オレ達は、この世界を守りたいだけなのさ。それ以上でも、それ以下でもない」 「シュヴァルツの人達は、そうかもしれない。でも、あんたはそうじゃないと思うけど?」 私は、MP5Kの引き金をいつでも絞れるようにした。太陽は、口元を上向けた。 「まぁな。オレには、世界の平和だとか宇宙からの侵略者だとか、そんな下らないことはどうでもいいんだよ。オレが楽しけりゃ、それでいいんだからな!」 視界の端で、何かが飛び出した。来たな、と太陽はそれに振り返る。その影は、空に向かって、高く飛んでいく。 空の太陽を覆うほど飛び上がったものが、こちらに向かって落ちてくる。屋上に、やたらと大きな影が出来た。 その影が、徐々に近付いてくる。屋上ではなく、校庭に接近してきたそれは、紛れもなく人型のロボットだった。 ごお、とジェットポッドを逆噴射させ、空中に停止した。ダークグレーの装甲を持った、巨大な戦闘兵器だった。 巨大だがいかつくはなく、全体的にすらりとしている。手足も長く、顔もほっそりしていて、背の翼も長い。 胸の装甲には黒い文字で、飛龍、と書かれていた。社名は書かれていないが、間違いなくシュヴァルツ工業製だ。 顔とゴーグルに付いたマーカー弾を拭った北斗と南斗は、いきなり現れた大きなロボットを凝視していた。 太陽は、酷薄な笑みを作った。携帯電話を閉じると、屋上付近に上昇してきた飛龍なるロボットに手を翳した。 「舞え! 飛龍 06 8/11 |