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ハマは恋えているか



 見よ、あれがコスモクロック21の灯だ。


 東京メトロ銀座線の外苑前駅から各停に乗り、新橋駅でJR東海道線に乗り換える。
 そして辿り着いたのが、横浜駅である。兜森繭はピンク色のパスケースに入れたPASMOを手にして自動改札に 向かおうとしたが、振り返った。連れ合いは苦労しつつも電車から降りたが、慣れない乗り物に乗ったせいで感覚が 不安定になっているのか、触角を下げていた。繭は自動改札の場所を確かめてから、ホームに戻る。

「改札はこっち。あと、切符は落としていないよね?」

「おう」

 力なく応じたのは、巨体の人型カブトムシ、カンタロスである。繭はカンタロスの中右足の爪の間に区間料金分の 切符が挟まっていることを確かめてから、彼の上右足を掴んで引く。

「ほら、しっかりして」

「電車ってのは狭いし、足元はぐらぐらするし、なんかこう色んな連中の匂いがして気持ち悪ぃ……」

「バスよりはマシだよ」

「人間の感覚で出来上がっちまった世界なんてクソ喰らえだ」

「そう言えるのなら、大丈夫だね。それで、待ち合わせの場所なんだけど」

 繭はカンタロスを引っ張って自動改札を抜けると、中央通路を見渡して案内板を探した。

「ええと、市営地下鉄に乗って桜木町駅に行く、ってことだから、あっちだね」

「そこに行くと何があるんだよ」

「えーと……」

「解らねぇのに行くのかよ、女王のくせに無防備すぎるぜ」

「でも、誰かに呼び出されて待ち合わせるのって、初めてだから」

 ちょっと恥じらいながら、繭は携帯電話の液晶画面をカンタロスに見せた。そこには、数日前にもらったメールの 文面が表示されていた。みなとみらいに一緒に行こうね、という文面に路線の乗り換えの案内が添えられ、一枚の 画像が添付されていた。そこには、見るからに活発そうな笑顔を浮かべた女子高生が写っていた。クセ毛なのか、 髪が全て外側に跳ねていて、前髪をヘアピンで留めてある。

「なんだ、このメスは」

 カンタロスが訝ると、繭は携帯電話を閉じた。

「ええと……なんて言えばいいのかな……。とにかく、うん、知り合い、かな」

「なんだよ、そのグチャグチャした言い方は」

「私にもよく解らないけど、でも、こうしてメールが届くってことはそういうことなんだし」

「だから、どういうことなんだよ」

 カンタロスは繭の小さすぎる背を睨み付けながら、大股で歩いた。繭は苛立ちを隠そうともしないカンタロスを窺い つつも、期待と不安に駆られていた。メールの送り主、美空由佳と繭が知り合った経緯は一言では言い表しづらい。 だが、繭とメールアドレスを交換してくれたばかりか、こうして遊びに行こうと誘ってくれるのだから、由佳は繭のこと を友人として扱ってくれている証拠だ。それが、嬉しくてどうしようもない。これまで、繭には友人と呼べる人間は一人 もいなかったし、カンタロスと出会うまでは本当に独りぼっちだった。両親も家族ではなかった。だから、友人と遊ぶ ことなんて夢のまた夢だった。

「カンタロス、これ、似合うかな」

「それを俺に聞くのは何度目だよ、あ?」

 繭が振り返ると、カンタロスは鬱陶しげに触角を曲げた。それもそうだろう、着ていく服を決めた時から、家を出た 後から、更に移動する道中でも何度も聞いてしまったのだ。カンタロスは人間の着る衣服に対して執着もなければ 美意識もないので、聞くだけ無駄ではあるのだが、聞かずにはいられなかった。それだけ、自信がないのだ。
 繭が悩み抜いて選んだ服は、無難なものだった。無地の黄色いブラウスの下に大きな花柄のフレアースカート を合わせてライトブラウンのタイツを履き、白いニットのポンチョを羽織り、ショートブーツを履き、ベレー帽も被ってみた。 我ながら少女趣味な恰好だとは思うが、買い込んだ服を着てみたかったし、オシャレしたくて気が済まなかったからだ。 だが、カンタロスは繭の女心を理解出来るはずもなく、ツノの生えた頭を反らして嘆いた。

「お前って奴ぁ、本当に面倒臭ぇな! そんな薄っぺらい布切れなんか、どうせ破いちまうに決まってんだから、拘る だけ時間の無駄なんだよ! 何着たって変わりはしねぇんだよ!」

「えっ、あっ、ちょっ」

 人前で言うことではない。しかも昼間から。繭が慌てると、カンタロスは前のめりになって繭にツノを向ける。

「おまけに、余計なモノを髪と肌にべたべた付けやがって。そのせいで、女王の匂いが解りづらいんだよ」

「気にするところ、そこだけ?」

「女王。お前にそれ以外の価値があるとでも思ってんのかよ、思い上がるんじゃねぇ」

 カンタロスは爪先で繭の額を弾き、複眼を背けた。

「要するにぃ、そっちのカブトムシさんは面白くないんですぅ。可愛い可愛い自分の彼女がぁ、自分以外の相手と会う ために着飾ったのがぁ。みゅっふふーん」

 出し抜けに声を掛けてきたのは、少女を伴ったウサギ獣人だった。ラベンダーのピーコートに手編みのふわふわ した白いマフラー、ワインレッドのコーデュロイのミニスカートを着ていて、ヒールの高いロングブーツを履いている。 その姿に、繭は目を丸めた。人間離れしたピンク色の長い髪と白い体毛が生えた耳と尻尾もさることながら、その 容貌があまりにも整っていたからだ。驚くほど長い睫毛に縁取られた金色の瞳は宝石のように煌めき、白い肌は 透き通るようで、スカートから伸びる足はモデル並みの細さだ。とんでもない美少女もいたものだ、と繭は凄まじい 衝撃を受け、息を飲んだ。鍬形桐子も美少女だったが、それとはまた別のベクトルの美少女だ。

「うげぇっ!?」

 が、カンタロスは途端に仰け反り、後退った。

「ど、どうしたの、カンタロス?」

 繭がウサギ獣人の美少女とカンタロスを見比べると、カンタロスは左前足で繭を掴んで背後に隠す。

「こいつはヤバいんだよ、でもってメスじゃねぇ! 何しに来やがった、クソウサギ! はっきりとは覚えていねぇが、 お前に二度と会いたくねぇってこたぁよく覚えてんだよ!」

「ちょっと失礼だよ、ねえ、って、え? メスじゃない? え、え?」

 繭は今にも暴れ出しそうなカンタロスを懸命に引き留めながら、ウサギ獣人とカンタロスを再度見比べた。

「カブトムシさんが何を言っているのかはイマイチ解らないですけどぉ、ボクが女の子じゃないってことがすぐに解る のはさすがに虫の嗅覚ですぅ。それが解らないままだったら、これでもかと繭ちゃんを可愛がれたんですけどねぇ」

 ひーちゃんは別格ですけどぉ、とウサギ獣人はロリータドレス姿の少女にウィンクしてから、繭に近付いた。

「兜森繭ちゃんですぅ? んで、こっちのDVモラハラクソ昆虫がカンタロスですぅ?」

「え、ええ、まあ」

 敢えて後半は否定せずに繭が頷くと、ウサギ獣人は情報端末を出してメールを見せてきた。そこには、繭が受け 取ったものと似通った文面が表示されていて、添付されている画像も同じだった。これはどういうことなのかと繭が ウサギ獣人を見上げると、ウサギ獣人は尻尾を振ってスカートの裾を翻した。

「ボクとひーちゃんはぁ、繭ちゃんと同じく由佳ちゃんに誘われて横浜に来たんですぅ。んでぇ、由佳ちゃんから事前 にもらっていたメールに繭ちゃんの写真が添付されていたからぁ、顔を知っていたんですぅ。それとぉ、由佳ちゃんに 文句言っちゃダメなんですぅ。あの子は交友関係が広いリア充まっしぐらなタイプですからぁ、繭ちゃんと由佳ちゃん の友達の概念には大きく隔たりがあるのは明らかですぅ。ボクもちょっと前までそうだったんでぇ、ボクとひーちゃんが 現れたことが繭ちゃんにとってどんだけ不愉快なのかも解りますけどぉ。だから、ここでボクと繭ちゃんも友達になる ですぅ。そうすればぁ、なんにも問題はないですぅ」

「……え」

 ミイム宛てのメールを見せられた途端に心中で凝った黒い感情を見透かされたばかりか、フォローもされ、繭は怒る よりも先に感心した。言われるがままに赤外線通信でメールアドレスを交換すると、ウサギ獣人は握手してきた。

「ボクはミイムですぅ。んで、そこのお姫様がヒエムスですぅ」

「ヒエムス・ムラタと申しますわ。以後、お見知りおきを」

 白とピンクのロリータドレスを着ていて淡い色味の茶髪を見事な巻き髪にしている少女、ヒエムスはスカートの裾を 持ち上げて膝を曲げ、一礼した。パフスリーブの肩に末広がりの袖口、パニエでふんわりと膨らませたスカートの中 にはドロワーズを着込み、両サイドに大きなリボンが付いたヘッドドレスを被り、足元はつま先が丸い赤いエナメルの 靴だ。革製のハート型のハンドバッグを提げているが、財布とハンカチと携帯電話だけで満杯になってしまいそうな 小ささだった。その代わりにミイムが荷物の大半を持っているらしく、彼は大きめのキャンバス地のリュックサック を背負っていた。うわあ凄い、本物の甘ロリだ、と繭は見入られながらも名乗り返した。

「兜森繭です。で、こっちがカンタロスです」

「まあ、御立派な殿方ですこと。宇宙夫婦ギャラクティカの主演の俳優さんに、とてもよく似ておられますわね」

 カンタロスを見上げてヒエムスが感嘆すると、カンタロスは威圧感を剥き出しにして顎を開く。

「あぁ? なんだよ、この薄い布の固まりは。おまけに臭ぇ、バラみてぇな匂いまみれだ。食欲失せるぜ」

「それは何よりだよ、カンタロス」

 繭は肩から提げているポシェットを押さえ、苦笑した。この分なら、カンタロスの人間への補食衝動を弱めるため に持ってきた、ラベンダーとミントを混ぜたアロマスプレーの出番はなさそうだ。生まれて初めて出来た友達の由佳 を食べられたら、たまったものではないからだ。

「それじゃ、ブルーラインに行くですぅ」

 ミイムがヒエムスと手を繋いで歩き出すと、カンタロスはむっとした。

「なんでお前が仕切りやがるんだよ、クソウサギ!」

「カブトムシさんがぼやぼやしているからですぅ。そうこうしている間にも、由佳ちゃんとパルさんが待ち惚けしている んですぅ。皆で一緒に遊べる時間には限りがあるんですぅ。だからぁ、さっさと行くに限るんですぅ!」

「そういうわけですので、参りましょう、繭さん」

 ヒエムスに促され、繭はカンタロスの右上足を掴んだ。

「うん、行こう」

「だから、このクソウサギがどれだけクソッ垂れなのか解ってねぇんだよ、女王は! 大体だな……」

 カンタロスは繭を押し止めようとしたが、繭は手袋を填めた手でカンタロスの爪を一本握って捻ると、カンタロスは びくんと身動いで黙り込んだ。彼を黙らせるために最も有効な手段は神経糸を引き摺り出して噛むことだが、関節も 弱点なので、そこを責めてやると大人しくなる。暴力で訴えかけることしか出来ない相手に訴えかけるには、やはり 暴力を用いるしかないからである。仲睦まじいミイムとヒエムスを横目に、繭は自分と彼の関係の生臭さにげんなり した。が、それでもいいのだと好意と行為を受け入れたのは繭自身なので、嘆くのは止めた。
 横浜市営地下鉄の改札口に行くと、美空由佳とその連れ合いである青いロボット、ブルーソニックインパルサーが 三人と一匹の到着を待ち兼ねていた。由佳は淡い緑色のセーターにオレンジのダウンベストを合わせ、デニムの ホットパンツにチョウの柄が入ったタイツとハイカットのスニーカーを履いていて、筒型のショルダーバッグを肩から 提げている。由佳はブーツのヒールを鳴らしながら駆け寄ってくると、繭に笑いかけてきた。

「繭ちゃん、久し振り! 元気にしてた?」

「ええ、まあ……」

 会ったら話したいことがいくらでもあったはずなのに、いざ当人を目の前にすると上手く喋れない。繭は俯きがち に返事をすると、由佳は腰を曲げて繭を覗き込んできた。その距離のなさに少し臆し、繭は身を固くする。

「あの」

「かぁーわーいーいー! あー、いいなぁ、繭ちゃんはちっちゃいからこういうのが超似合う! 私なんか、中途半端 に背があるから、そういうのがあんまりでさー。髪もちょっと内ハネなのがまた。あー、いいなー」

 由佳は心底羨ましげに、繭の恰好を上から下まで見回してきた。そして、ミイムとヒエムスを絶賛した。

「ミイムさんはヒールが似合いすぎてヤバい! 足が長いから! ひーちゃんは今日もお人形さんみたい!」

「みゅふふふ、それだけ褒められると十センチのヒールを履く甲斐があるってもんですぅ」

「あらまあ、解り切ったことを仰って。嬉しゅうございますわ。由佳さんもお似合いでしてよ」

 ミイムとヒエムスが由佳に応じると、由佳は行儀良く立っているインパルサーに振り返り、示した。

「んで、もう知っているとは思うけど、これがパル」

「ブルーソニックインパルサーです。よろしくお願い……」

 します、と言いかけたところで、カンタロスが突進して青いロボットを薙ぎ倒した。青い翼が盛大に床と擦れて火花 が散り、車が追突したかのような打撃音が構内に響き渡った。仰向けに転がったインパルサーはその反動で両足が 高く上がった後に落下し、大の字になって呆然としていたが、起き上がって半泣きになった。

「いきなり何をするんですかぁー! 皆さんと横浜に遊びに行けるから、隅々まで機体洗浄してワックスを塗り直して おめかししたのに! 台無しですよ、これじゃ!」

「おめかしするんだ……」

 ロボットなのに、と言いかけて、繭は飲み込んだ。由佳は内股で座り込んだインパルサーを見、苦笑する。

「パルは中身が乙女だから。私よりもずっと」

「で、DVモラハラクソ昆虫の御山の大将は、なんでまたパルさんを襲ったんですぅ?」

「理由もない暴力を振るうのはミイムママだけで充分でしてよ」

 ミイムとヒエムスがカンタロスの後ろ姿を見上げながら咎めると、カンタロスはぎぢりと顎を鳴らした。

「このガラクタ野郎が俺の女王に触りやがったこと、俺が許すわけねぇだろうが!」

 まだそれを引き摺っていたのか、と繭はちょっと呆れた。その理由は、繭と由佳が出会った経緯にある。三ヶ月 前、世田谷区の片隅で細々と世界征服活動に勤しんでいた悪の秘密結社ジャールが、どういうわけだか世界征服 を達成してしまったのである。悪の秘密結社ジャールの社長である暗黒総統ヴェアヴォルフが、祖父の祖国である ドイツで大魔導師ヴァトラ・ヴァトラスの魔導書を手に入れたことが事の発端だ。理屈は解らないが、とにかく強力な 魔法を手に入れたヴェアヴォルフは、あれよあれよという間に世界中のヒーローを平らげていき、ついでにヒーロー 協会と怪人協会も掌握した。そして、世界中の影に隠れていた人外に人間と同等の権利を与え、強力すぎる魔法 を用いて社会の理をも作り替えてしまった。つまり、人外ありきの世界にしてしまったのだ。
 その結果、人型昆虫の女王と交尾して種の繁栄を行うための戦いを繰り広げていたカンタロスを始めとした人型 昆虫は、人間を脅かす無法者の人型昆虫を倒す戦士という立場を得た。インパルサーやミイムを始めとした異星から の訪問者も移民扱いされるようになり、地球外知的生命体との外交の窓口としても重宝されている。だが、件の 魔法の効力はそれだけではない。本能によって人間を喰わずにはいられなかったカンタロス達の本能すらも改変 したため、カンタロス達は食品として加工されたものを食べるようになった。繭は人間や人型昆虫を手当たり次第に 補食していたカンタロスを知っているし、カンタロスもその頃の感覚を引き摺っている。それが少し寂しくもあるが、 彼と共に生きられるのであればそれでいいか、とも思う。

「あれは仕方ないことだと何度説明すればお解りになるんですか、カンタロスさんは!」

 インパルサーはよろけつつも立ち上がり、若干上擦り気味の口調で反論した。涙声なのだ。

「大体カンタロスさんは、繭さんを体の中に入れずに運ぶ時の持ち方がいい加減なのが悪いんですよ! あの時、 僕がお遣いの帰りで偶然通り掛かったというか飛び掛かったからいいものを、そうでなければ繭さんはアスファルト と仲良くしてしまいましたよ! 責めるのであれば、僕でなくて御自分の繭さんの持ち方です! ちゃんと抱えていれば、 繭さんを落としてしまうことはなかったんですよ! いいですか、よくご覧なさい、女性の抱き方はこう!」

 そう言って、インパルサーはおもむろに由佳を横抱きにした。途端に由佳は赤面する。

「ちょおっ、ちょっ!?」

「女性は柔らかいので持つ時に不安になるかもしれませんが、こうやって背中と腰を支えながら、膝の裏を持って 抱えると安定するんです。もちろん、スカートを押さえるのを忘れてはいけません。愛する女性の秘密の花園を公衆の 面前に曝すなど、以ての外です。男の名折れです」

 やたらと気合いを入れて語ったインパルサーは、涙声ではなくなっていた。由佳は顔を覆い、呻く。

「あーもう、パルって奴は本当に……」

「腹の中に入れた方が簡単で確実に決まってんだろ。俺が女王如きに気を遣う理由なんてねぇだろ」

「いいえ、あります。大有りです。女性は大事にすべきです、それが愛する女性なら尚更です」

「恥ずかしいことをぽんぽん言うんじゃねぇ!」

「愛を示すことが恥ずかしいと思う方が恥なのです! さあ、愛する女性に愛を伝えましょう! 全力で!」

 インパルサーは由佳の肩越しにぐっと拳を固めてみせたが、カンタロスは辟易して爪でツノを引っ掻いた。

「こいつ、どっか故障してんじゃねぇのか?」

「生憎、通常運転だよ」

 由佳は横抱きにされたまま、全てを諦めた顔で天井を仰いだ。

「それはそれとしてぇ、さっさとみなとみらいに向かうですぅ。ていうかぁ、改札の前でラブコメ劇場を繰り広げていると ものすんごーく迷惑ですぅ。公序良俗に反しますぅ。それ以前に話が進まないですぅ、横浜駅のダンジョン攻略する だけで終わっちゃいそうですぅ。コンゴトモヨロシクしたくないですぅ」

 そう言って、ミイムはサイコキネシスを放ってインパルサーとカンタロスを改札の前から追い払った。実際、一体と 一匹の馬鹿馬鹿しいやり取りを遠巻きに眺めていた人間や人外達は鬱陶しそうだったが、カンタロスが見るからに 凶悪なので注意出来なかったようだった。インパルサーに反論しようにも語彙が追い付かないので、カンタロスは 口惜しげではあったが、繭に従って区間料金分の切符を買った。インパルサーも切符を買った。飛行能力のある 人外達は普段は空を飛んで移動しているから、電車に乗る機会も滅多にないため、IC乗車券を持っていないという か持つ必要がないからである。それ以外の面々はIC乗車券を使い、横浜市営地下鉄に乗った。
 目指すは、みなとみらいだ。








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