機動駐在コジロウ




身から出たサービス



 いつのまにか、友達が遠い存在になってしまった。
 少し会わない間に、美月は別世界の住人と化してしまったかのようだ。携帯電話の透明モニターに表示した動画 の中では、派手な塗装を施されたレイガンドーが人型重機と壮絶な格闘戦を繰り広げていた。いつものボクシングが 主体の格闘スタイルだが、武公との一戦を教訓に大幅に技の種類を増やしたのだろう、プロレス技や関節技も多様 して対戦相手を追い詰めていた。リングサイドに立つ美月は声を嗄らして指示を送り、レイガンドーを自在に操って 彼を勝利に導いていた。ライトに照らされた美月の顔は生命力が漲っていて、別人のようだった。

「忙しそうだもんなぁ、ミッキー」

 つばめは畳に寝そべりながら、携帯電話を操作して動画を閉じた。今、メールを送っても、美月の手を煩わせる だけだろうし、鬱陶しがらるかもしれない。だから、電話を掛けるだなんて以ての外だ。けれど、美月とまたお喋りに 興じたいし、近況報告もしたい。遊びには行けなかったが、それはそれは刺激的な夏休みだったからだ。
 首から提げたチェーンが動き、しゃらりと小さく鳴る。胸元に乗っていた強化ガラスの筒が転がり、畳に落ちたので 胸の上に戻した。結局、新免工業社長の神名円明から贈られたナユタの収納ケースは使うことにした。ナユタを裸で 持ち歩くのは危ないし、なくしてしまったら大事だからだ。コジロウは気に食わないようだったが、せっかくあるものを 無駄にするのは勿体ないでしょ、と言うと納得してくれたようだった。
 気持ちを持て余したつばめが意味もなくごろごろと転がっていると、庭先にいた武蔵野がそれを見咎めた。縁側に 近付いてきて片膝を載せると、首から提げたタオルで顔を拭った。今し方までトレーニングをしていたからだ。

「なんだ、締まりのない」

「遊びに行きたーい。でも、ミッキーを誘えなーい」

 仰向けになったつばめが拗ねると、隣の部屋で洗濯物を畳んでいた道子が言った。

「ですねー。美月ちゃんのお父さんが立ち上げたロボット格闘技団体のRECは、滑り出しは絶好調ですからねー」

「REC、って何の略?」

 録画するわけでもあるまいに。つばめが聞き返すと、道子はタオルを重ねながら答えた。

「ロボットエクストリームクラッシュ、ですねー。壊れることが大前提なんですよ。実際、その通りですが」

「そんなのが受けるのか? 確かに過激だろうが、壊すだけなら車同士のがあるだろうが」

 縁側に腰掛けた武蔵野が訝ると、道子はアイロン台を出しつつ返した。

「受けているから、動画の再生回数も物凄いんですって。ロボットと車じゃ迫力が段違いなんですから」

「あれ? でも、ミッキーはお父さんに利用されたから絶縁同然になったんじゃなかったっけ? だから、お母さんに 連れられて一ヶ谷に来たって聞いたような」

 つばめが首を傾げると、道子はコードレスアイロンを充電台から外し、スイッチを入れた。

「色々あったんですよ、色々」

「まあ、家庭の事情は色々だからなぁ」

 武蔵野も同調したので、つばめもなんとなく同調した。

「色々、ねぇ」

 便利な言葉である。美月は父親との関係が修復出来たのだろうか、と考え始めてしまうと、美月の様子が余計に 気掛かりになってくる。だが、美月は今までつばめに助けを求めてこなかったし、彼女のプライドを尊重しているから つばめの方も美月にやたらと構ったりはしない。どちらもべたべたした付き合いは好まないし、距離感を大切にする べきだと互いに弁えているから、この友人関係は成立しているのだ。
 けれど、やはり気になる。メールの一通ぐらいならいいよね、電話だって五分ぐらいなら、とつばめは携帯電話を いじりかけたが、寸でのところで自制した。ここで下手なことをして美月に鬱陶しがられたら、取り返しが付かなく なってしまうかもしれない。つばめはこの数ヶ月で人生の一大事を何度となく迎えているが、美月にとっては今こそが 人生の一大事なのだから。
 あ、お姉ちゃんにもミッキーのことを話してあげよう、とつばめは上体を起こしかけた。が、すぐに美野里がいない ことを思い出して寝そべり直した。気にしないようにしているつもりなのに、美野里がいない事実を思い知ると胸が つんと痛む。寺坂からは心配するなと言われたし、一乗寺からも美野里の行方は捜査中でいずれ発見してあげると 言われたが、どうにも落ち着かなかった。美野里がいなくなっただけで、足元が不確かになってくる。
 これまでのつばめの人生で、美野里が欠けていたことはない。十年前、一浪した美野里は大学受験に励みすぎて 体を壊し、一時期入院していたことはあるが、それぐらいだ。ふと気付けば傍にいてくれて、つばめを構ってくれて、 大切にしてくれて、誰よりも何よりも愛してくれる。それが美野里だったからだ。美野里を連れ戻したい、お母さんの ようになってほしくない、どんな事情があっても一緒に暮らしたい。そう思うたびに、つばめは切なくなった。
 けれど、どうやって美野里を見つけ出せばいいのだろう。道子とアマラの能力でも目星が付けられないのであれば、 手の打ちようがない。他の遺産を使うにしても、何をどうすればいいのだろうか。日々、悩みは尽きない。
 初秋を迎えても、まだまだ暑苦しい。風通しのいい合掌造りの家であろうとも、日向に入れば暑さは外とはなんら 変わらずに力強い。だが、肌にまとわりつく空気の粘り気が弱ってきたので、確実に季節は移り変わりつつあった。 夏休みの頓挫した計画を秋にやり直そうかな、と頭の片隅で考えつつ、つばめは上体を起こした。

「ん?」

 玄関先に目をやると、巡回に出ていたはずのコジロウが戻ってきていた。彼の場合、人間よりも遙かに高速かつ 細密な警備が行えるので小一時間もしないで帰還するのだが、それにしては早すぎる。つばめの記憶が確かなら、 コジロウが船島集落周辺の巡回に出たのは十分ほど前だ。つばめは起き上がると、サンダルを突っ掛けた。

「コジロウー、どうかしたのー?」

 サンダルの底をぱたぱたと鳴らしながらつばめが駆け寄ると、コジロウは船島集落の入り口である道を指した。

「つばめの私有地への立ち入り許可を要請された。よって、つばめの判断を請う」

「んー?」

 つばめは振り返ると、目を凝らし、コジロウが指し示した先を見上げた。曲がりくねった坂道の上には、先程まで 携帯電話のモニターで見ていた動画に写っていたトレーラーが停車していた。青と黄色のサイケデリックな配色の コンテナには、REIGANDOO! の文字が躍っている。ということは、つまり。
 トレーラーの助手席から下りてきて手を振っているのは、紛れもなく美月だった。色気のない作業着とサイドテール は相変わらずだったが、元気よくつばめに呼び掛けている。つばめも美月に呼び掛け返してから、すぐにコジロウに 許可を出せと命じた。コジロウは頷き、両足からタイヤを出してスキール音を撒き散らしながら駆け抜けていった。 つばめは自宅に駆け戻ると、ブラウスにアイロン掛けをしている道子とトレーニングを再開した武蔵野に叫んだ。

「ミッキーが来てくれたー! ひゃっほーい!」

「おい、道子、知っていたのか?」

「そりゃあもちろん。監視衛星と集落の周辺にばらまいた監視カメラとその他諸々で察知していましたし、本物の美月 ちゃんとそのお父さんだと判明していましたよ。でも、一から十まで報告しちゃうと、つばめちゃんに変な警戒心を 抱かれちゃいそうで」

 武蔵野に小声で問われて道子が苦笑する。台所に飛び込み、友人を出迎えるために御茶菓子や茶碗を引っ張り 出し始めたつばめの姿を見、武蔵野もまた似たような表情になった。右目以外は常人の武蔵野を除けば、つばめの 周囲には化け物だらけだ。それ故に、節度を弁えて能力は使わなければならない。

「ねー、どーしたのー?」

 土曜日なのをいいことに昼間まで寝ていたのか、寝起きの一乗寺がふらふらとやってきた。髪は寝癖で跳ね放題で 寝間着代わりのジャージは裾から下着がはみ出していて、だらしないことこの上ない。当然、ノーブラである。男の ままであれば、だらしないがそれほど問題はないのだが、今の一乗寺はれっきとした女性だ。

「はいはい、ちょっとこっちに来て下さい。せめて着替えてから出てきて下さいよ、御客様が来るんですから」

 道子はアイロンのスイッチを切ってから玄関先に小走りに駆けていき、一乗寺を家の中に連れ込んだ。目が半分も 開いていない一乗寺は力なく呻きながら、奥の間に連行されていった。道子のされるがままではあるが、身支度が 整うのであればいい。武蔵野も目のやり場に困らずに済むからだ。
 嬉々としてヤカンで湯を沸かしているつばめに、武蔵野は一乗寺が来たことを報告した。つばめは戸惑いもせず に来客が増えたことを受け止め、湯飲みの他に軽食も用意してくれた。といっても、それはつばめ達の朝食の余り である。昨夜の夕食の残りの炊き込み御飯をおにぎりにしたものに温め直した豚汁とキュウリのぬか漬けを添えた だけではあるが、寝起きの人間にはそれぐらいが丁度良いだろう。
 湯が沸いて緑茶が入った頃合いに、美月とその父親が乗ったトレーラーが到着した。つばめが出迎えると、美月 は途端に満面の笑みになった。少女達が歓声を上げながら戯れる中、トレーラーの運転席から美月の父親が外に 出てきた。船島集落に来るのは乗り気ではなかったらしく、警戒心が見て取れた。

「いらっしゃいませー。美月ちゃんのお父さんですねー」

 奥の間から戻ってきた道子がにこにこしながら出迎えると、小倉貞利は身構えた。

「あ、ああ」

「まあ、そう気を張るな。俺達はあんたには何もしないし、あんたの娘にも何もしない。俺達が何者かは解っている んだろうが、だからってむやみやたらに敵視するものじゃないぜ。疲れるだけだ」

 まあ上がってくれ、と武蔵野が促すと、小倉は周囲に目を配らせた。

「御邪魔します」

 はしゃぎながら連れ立って家に上がる少女達を気にしつつ、小倉の目線が至るところに向いた。武蔵野は無意識 にその目線の先を辿っていったが、特に異変は見受けられなかった。だが、後で調べておいても損はないだろう。 この男も遺産に関わっているのだし、佐々木ひばり以外で佐々木長孝と最も密接に接したのは小倉だけだ。つばめ や武蔵野達が知り得ない情報を掴んでいる可能性は高いからだ。
 応接間に通された美月は、次から次へと喋った。つばめもまた止めどなく喋り、互いの身辺に起きていた出来事を これでもかと語り尽くした。それ以外では、少女同士でなければ通じない語彙やニュアンスで喋り、武蔵野と小倉 は道子に何度か通訳を求めたほどである。コジロウはと言えば、庭先に立って主人が談笑する様を見守っていた。 主人と護衛の距離を守っているのだ。トレーラーから出てきたレイガンドーも同様で、大人しくしていた。
 お喋りが一段落し、お代わりした緑茶も底が尽きてきた頃、美月が急に態度を改めた。それまでは崩していた膝を 直して正座すると、背筋を伸ばしてつばめに向き直った。

「何、どうしたの?」

 つばめがきょとんとすると、美月は座卓に額をぶつける勢いで頭を下げた。

「お願い、つっぴー! コジロウ君を試合に出してほしいの!」

「試合って、RECの?」

 つばめが聞き返すと、美月は顔を上げて両手を合わせた。

「そう、そうなの! 会社に所属しているロボットのスケジュール調整が間に合わなくて、次の興行に出るロボットの 頭数が足りなくなっちゃったの! 他の格闘ロボットをブッキングしようにも、武者修行を兼ねた全国興行の時に、 手当たり次第に強いロボットを叩きのめしちゃったせいで修理が間に合っていないの!」

「だから、私のところに来たの?」

「そう! だって、個人で人型ロボットを所有している人間なんて限られているし、しかもその性能が抜群なロボットを 持っているのは更に少数だし! てか、コジロウ君以外に考えられないの! ファイトマネーも出すし、メンテナンスも 修理費用も全部こっちで持つし、つっぴーの衣装だってどうにかするから!」

 美月は目を輝かせて、というレベルを通り越して、ぎらつかせながら迫ってくる。つばめは臆し、身を引いた。

「え? 私の衣装って?」

「うちのルールだと、ロボットのオーナーはセコンドと同等なんです。だから、オーナーも顔出しするんだが、全試合を ネットで生放送するから、当然ながら顔が丸出しになってしまうですよ。佐々木さんは事情が込み入っているから、 顔出しはするべきじゃないから、隠した方がいいんです。それに、その方が確実に盛り上がるし」

 小倉に説明されたが、つばめは腑に落ちなかった。

「盛り上がるって、なんで?」

「ああ、そうか。RECには、まだマスクマンのオーナーがいないんだな?」

 武蔵野が手を打つと、小倉は言った。

「そうなんですよ。うちの方向性はプロレス寄りの総合格闘技に定まったので、プロレスの御約束も取り入れていくと 決まったんですが、格闘ロボットのオーナーなんてまだまだ絶対数が少ないんですよ。更に言えば、どのオーナーも ベビーフェイスになりたがるんです。いや、気持ちは解りますよ、そりゃ俺だって正義のロボットに憧れた延長でこの 業界に入った口ですから。ですけど、ヒールがいないと成立しないんですよ、ショービジネスとしては。子供のごっこ 遊びじゃあるまいし、正義か悪かで揉めるのは……」

「で、つっぴーとコジロウ君には強烈なヒールになってもらおうと思って」

 美月がにんまりしたので、つばめは更に半身を下げた。最早、嫌な展開しか予想出来ない。

「え?」

「本官は公用車であり、商用行為に使用することは法律に違反する」

 縁側から上がってきたコジロウが、美月に向けて少々威圧的に言い放った。

「そう、そう! だから、悪いんだけどその話は」

 コジロウの援護を受け、つばめが断ろうとすると、奥の間のふすまが唐突に開いた。

「いいじゃーん、俺が許可しちゃうったらしちゃーう!」

 そう叫びながら飛び込んできたのは、バニーガールの格好をした一乗寺だった。さすがにハイヒールのパンプスは 履いていなかったが、豊かな胸としなやかな腰を強調する黒のレオタードと柔らかな太股を締め付ける網タイツは 鮮烈すぎた。ウサ耳のカチューシャを揺らしながら、一乗寺はつばめにしがみついてくる。化粧臭かった。

「許可が出なかったら、俺が適当に上司を脅しちゃうんだからなー! だって面白そうじゃーん!」

「つっぴー、この人、誰?」

 呆気に取られた美月が一乗寺を指すと、つばめは一乗寺を引き剥がしてから答えた。

「一乗寺先生だよ。ほら、寺坂さんのお寺で会ったじゃない」

「え、あ、でも、つっぴーの先生って確か、男の人じゃあ……」

 妹さんですか、と美月がおずおずと尋ねると、一乗寺は胸を反らして乳房を見せつけた。

「違うよぉミッキー。俺は俺、男でも女でも俺は一乗寺昇なのだ! どうだぁ、一晩でドンペリ百本は入れてもらえそうな 体だろー! 入れてくれたらサービスしちゃうけどね!」

「何、どういうことなんだ? 佐々木さんの先生は、男っぽい格好の女性だったのか?」

 小倉が半笑いになると、美月は困惑して首を傾げる。

「違う、そうじゃない。ちゃんとした男の人だったよ。サイボーグじゃないから、体を乗り換えることなんて出来ないし。 確かに言動は同じだし、顔も似ているけど、でも……」

「こいつに関しては、あんまり深く考えない方がいいぞ。だから、俺は何も考えないことにした」

 武蔵野の真っ当な忠告に、美月は頭が転げ落ちそうなほど捻っていた首を元に戻した。

「……それがいいですね」

「せっかくだからさぁ、俺もラウンドガールとかやりたーい。ね、みっちゃん?」

 一乗寺が振り返ると、そこにはメイド服からバニーガールに着替えた道子がポーズを決めていた。いつのまにか、 二人分の衣装を揃えていたらしい。この分だと、道子の部屋にはまだまだ衣装があるのだろう。その費用は道子の 預金から捻出しているであればいいのだが、と朧気な不安を抱きつつ、女性型アンドロイドの抜群のプロポーション を見せつけている道子に声を掛けた。

「道子さんもやりたいの? ラウンドガール……」

「んー、私はどちらかっていうと演出ですかね。RECの動画を一通り拝見したんですけど、音響と映像のタイミング が合っていませんよね。だから、演出をしているのはその道のプロじゃないですよね?」

 道子に指摘され、小倉は苦笑する。

「資金が足りないんでね。お恥ずかしい話、借金だらけで」

「液晶ビジョンとパイロと花火を設置して、ドバーンと豪快なのをやってみたいけど、あれは高いから……」

 美月が嘆息すると、道子は親指を立ててウィンクした。

「御心配なく! ホログラフィーと音響でそれっぽいのは作れますから! スポンサーもいますから!」

「ちょ、ちょっと、それって私の?」

 つばめが腰を浮かせると、一乗寺が澄まし顔になる。

「コジロウがここぞとばかりに格好良く動かせるんだよ? 見たくないの? コジロウが技を決めるところ」

「いや、別に。だから、別にお金も出さないよ」

 つばめは格闘技には更々興味がないからだ。美月はあからさまに落胆し、小倉もまた残念がり、武蔵野はそりゃ そうだと言わんばかりの顔になり、ええーっ、と一乗寺と道子は声を揃えて嘆いた。コジロウは警官ロボットである のだから、その本分を越えた行動は取るべきではないし、コジロウの使い方としては間違っているからだ。美月が 大変なのも解るが、それとこれとは別である。友達だからといって、何から何まで許すものではない。

「悪いけど、この話はなかったことにしようよ。コジロウもその気じゃないし」

 つばめは佇まいを直し、美月を見据えた。だが、美月も食い下がる。

「ファイトマネーも弾むから! ただとは言わせないから!」

「お金の問題じゃなくてさあ」

「とりあえず衣装だけでも見てみてよ、コジロウ君の改造デザインも!」

 身を乗り出してきた美月は携帯電話を突き出し、ホログラフィーを投影して画像を表示させた。つばめはそれだけ ならばと画像を見、息を詰めた。そこに写っていたデザイン画は、ハーレーダビッドソンを思わせる極太のパイプを 何本も生やして黒光りするチェーンを手足に巻き付けた、絵に描いたような悪党のロボットだった。マスクフェイスも ゴーグルが細めになっている上、目尻に稲妻のペイントが入っている。両耳のパトライトもカバーが差し替えられ、 暴走族が改造車に付けているウィングのようなスケルトンパーツになっていた。カラーリングはダークパープルで、 胸部には白抜きでドクロがあしらわれている。コジロウとは似ても似つかない、別物のロボットだった。 
 けれど、つばめの鼓動は跳ねた。





 


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