ドラゴンは滅びない




狂乱の収穫祭



 数日後。ヴィンセントは、様子を窺っていた。
 足音を殺して息も殺し、魔力も最低限まで引き下げた状態で、身を屈めて深い草むらの中を慎重に歩いていた。
ファイドの話に寄れば、スモウが行われる収穫祭とは今日だ。彼らの行うスモウがどんなものか、見てみたかった。
ゼレイブの中心にある広場のような場所の傍まで近付くと、ヴィンセントは腹這いになり、草の合間に身を隠した。
 広場の中央には、ヴィンセントの祖国のそれとは明らかに違っているが、ドヒョウに似たものが造られていた。
俵の代わりに麦藁の束を並べて作られた円の中心には、平行に二本の線が引かれていて、ますますそれらしい。
ファイドにスモウの情報を教えたことは無駄ではなかった、とヴィンセントは表情には出さずににやにやしていた。
まさか、祖国からこんなにも離れた土地でスモウが見られるとは思わなかった。なんだか、心が浮き立ってくる。
遠い昔に極東の島国から船に乗って大陸に渡り、この共和国までやってきたが、里心が沸いたことはあまりない。
だが、それでも故郷は懐かしいものだ。あまり執着を持っていなかったはずなのに、嬉しくなっている自分がいる。
なんだかんだ言って、あの独特の文化を持つ国が好きなのだ。ヴィンセントは口元をにっと広げ、牙を覗かせた。
 ドヒョウの周囲には、急ごしらえのリキシ達が揃っていた。誰も彼も表情は暗く、明るいのはラミアンだけだった。
夫達の異様な姿に戸惑っているらしく、女達も曖昧な笑顔を作っており、子供達に至っては状況を理解していない。

「ほぼ全裸じゃないか…」

 レオナルドは顔を覆い、がっくりと項垂れた。普段は服の下に隠れているその屈強な体には、古傷が多かった。
特に目立つのが、左腕の銃創だ。十年以上前のものなので傷の窪みは肉に埋まっているが、痕は残っていた。

「僕、消えてもいいかなぁ!? いいよねぇ、消えていいよね!」

 マワシを締めている上に長い髪を結われてしまっているリチャードは、泣きそうな声を上げた。本気で嫌なのだ。

「東方の国の文化って、変わっているんすねー」

 元上官に流された形で参加する羽目になったピーターは、半笑いだった。アンソニーも、複雑な表情をしている。

「なんて恰好だ…」

「おっちゃん、どうして父ちゃんを止めてくれなかったんだよ? おっちゃんなら止められるって思ってたのにさぁ」

 恨みがましい目で、マワシ姿のブラッドはギルディオスを睨んだ。ギルディオスもまた、マワシを締めていた。

「いやあすまん、お前ら、恨むならオレを恨め」

 それは半分嘘で、半分本当だった。ギルディオスは居たたまれない気持ちになりながらも、内心では笑っていた。
リキシとは、こんなにも滑稽な姿をしているのか。他国の文化を笑うわけではないが、この姿はかなり異様なのだ。
共和国を含めた西方では、肌を曝して戦わない。むしろ肌を見せないように、甲冑で覆い尽くして身を守るのだ。
その解りやすい事例として、ギルディオスの全身甲冑がある。近代になって廃れたが、その風潮は残っている。
だから、肌を曝して戦うこと自体が有り得ないことなのだ。増して、一対一での戦闘なら、弱点は少ない方がいい。
けれど、ほぼ全裸で戦うことがスモウの大前提なので、それを崩してしまったらスモウではなくなってしまうのだ。
男達からは強烈な反発をされ、当日になっても愚痴をこぼされてしまっているが、ラミアンが強攻したのである。
極東の島国への憧れとスモウの素晴らしさを饒舌に語るラミアンに呑まれてしまい、逆らえなくなったとも言うが。
 そして、そのラミアンは浮かれていた。巨体すぎるために参加出来ないヴェイパーを相手に、今も特訓している。
魔導兵器同士なので思い切り出来るので、ヴェイパーはラミアンの素早くも強い張り手をちゃんと受け止めていた。

「オレ様、超つまんねー!」

 戦闘能力が高すぎるためと攻撃的すぎる性格のために参加出来なかったフリューゲルは、不満げにぼやいた。
その足元で、リリはなんともいえない顔をしていた。父親の滑稽かつ不可解な恰好が、受け止めきれないからだ。

「でも、それで良かったんじゃないの。あんな恰好をしなくていいんだから」

「オレ様はアレやってみたいんだぞこの野郎」

 くけけけけけけけけ、とフリューゲルは笑った。リリの隣に立つロイズは、顔を背けた。

「僕は絶対にしたくないなぁ…」

「レオさん、ちょっと体型変わりましたよね。明るいところで見ると余計にそう思います」

 夫のマワシ姿を眺めていたフィリオラがさも残念そうに眉を下げたので、レオナルドは即座に言い返した。

「それを言うなら兄貴の方だろうが。オレはまだ平気だ」

「でも、大分鈍ってきたんじゃないの? 昔に比べると明らかに筋肉が落ちてない?」

 リチャードはレオナルドに近寄ると、弟の腹に拳を埋めた。咳き込んだレオナルドは、兄の手を振り払う。

「なんで殴るんだ!」

「ブリガドーンで僕を殴ってきたじゃないか。そのお返し、まだしていなかったから」

「女々しいことするな、この馬鹿兄貴が」

「どう考えてもあれはレオが悪いよ。だから、それ相応の復讐をしたまでだよ」

「いや、あれは兄貴が悪い。殴られて当然なんだ」

 レオナルドは兄に呆れながらも、言い返さずにはいられなかった。こんな男が父親になると思うと、気が滅入る。
不安げながらも期待に満ちた目でリチャードを見つめているキャロルの下腹部は、すっかり大きく膨らんでいた。
下腹部が膨らむと同時に丸みを帯びたキャロルの体型を見ていると、八年ほど前のフィリオラの姿を思い出す。
フィリオラの中にいたリリは、出てくるとすぐに大きくなって、気付いたらもう八歳になってませた少女になっている。
その愛娘は、とリリに目をやると、リリはヴィクトリア顔負けの恐ろしく冷めた目で父親のマワシ姿を見つめていた。
それを見た途端、レオナルドはこの場から逃げ出したくなった。父親として、男として、やはりこの恰好は情けない。
だが、逃げたらますます情けなくなる。レオナルドは精一杯の意地を行使し、逃げ出したい気持ちを押さえ込んだ。

「それでは、そろそろ始めましょうか」

 ヴェイパーとの特訓を終えたラミアンは、男達を見渡した。当然マワシ姿なのだが、銀色のマントは外していた。
だが、彼の姿が一番異様であることには変わりない。ギルディオスもかなり妙だが、ラミアンには負けてしまう。
マワシは長い布を折り曲げて結び付けるので、布が幾重にも重なることになるので、完成すると当然分厚くなる。
体格が大きければ、まずそちらに目が行くのでマワシの太さなど気にならないのだが、ラミアンの場合は逆だ。
銀色の骸骨とも言える不気味な姿をしている魔導兵器なので、マワシを圧倒するほどの肉はどこにも付いてない。
なので、股間部分にきっちり締め付けてある立派なマワシだけがやけに大きく感じ、かなり変な体型になっている。
ギルディオスは、ラミアンの恰好を見るたびに必死に笑いを堪えた。笑ってはいけないと思うと、余計に笑える。
 すると、硬いものを強く叩く音が連続した。見ると、皆から離れた位置で座っていたヴィクトリアが震えていた。
どうしたのか、とギルディオスが近寄ろうとすると、ヴィクトリアは体の下に隠していた石盤を白墨で叩いていた。
伸び放題の長い黒髪が掛かっているヴィクトリアの肩越しに見えた石盤には、同じ文字が延々と書かれていた。

『あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは』

 震えているように見えたのは、声を出せないまま笑っているからだった。

『あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは』

 ギルディオスはヴィクトリアに近付くと、彼女の肩を小突き、耳元で呟いた。

「何が可笑しいんだ、ヴィクトリア」

『全部が』

 ヴィクトリアは石盤を裏返すと、そう書いて答えた。ギルディオスも、つい笑ってしまう。

「特にどの辺が可笑しいんだ?」

『アルゼンタム』

「解るぜ」

『あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは』

 余程可笑しいのか、ヴィクトリアは先程書いた笑い声の上に更に笑い声を重ねた。笑いすぎである。

「笑うのはいいが、その辺にしとけよ。白墨が割れちまうぞ」

 ギルディオスはヴィクトリアの頭を軽く叩いてから、立ち上がった。ヴィクトリアは、ちらりとドヒョウへ振り返った。
それで、長い髪に隠れていた表情がようやく見えた。ヴィクトリアは口元を歪ませ、悪魔じみた顔で笑っていた。
元々表情が少ないのと、悪意に満ちた笑顔ばかりを浮かべていたせいなのだろうが、少しばかり怖いと思った。
だが、ヴィクトリアが斧を振るう以外のことで笑ってくれるのは久々なので、ギルディオスは嬉しくなってしまった。
実に現金なもので、一人でも喜んでくれると思うと気合いが出てくる。いつのまにか、スモウに乗り気になっていた。
 ドヒョウでは、最初の勝負が始まっていた。一番手はレオナルドとリチャードで、二人は向かい合って立っていた。
いわゆる審判であるギョウジという役割をしているのはファイドなのだが、彼は普段と変わらない白衣姿だった。

「まず最初に、スモウの規則を説明しておこうではないか」

 ファイドはドヒョウに立っている兄弟を見比べながら、ヴィンセントから聞き出した決まり事を説明した。

「殴り、突き、蹴りは禁じ手、つまりは反則であってそのどれか一つでもしたら反則負けとなる」

「だってさ、レオ。残念だねぇ」

 にやにやしたリチャードに、レオナルドは言い返した。

「要は打撃を加えなければいいんだろうが。体力勝負で、兄貴がオレに勝てるわけがないだろう」

「人の話を聞けと躾けられなかったのかね、君達兄弟は」

 話の腰を折られたファイドが文句を言うと、二人は渋々黙った。ファイドは咳払いをしてから、続ける。

「ドヒョウの外に出るか、体に少しでも土が付いたら負けとなる。マワシが外れた場合も負けだ。それと、このドヒョウには、フィリオラに頼んで魔法封じと魔力封じを丹念に施してあるので、魔法は一切使えないはずなのだが、万が一にでも魔法か異能力を使ったらそれもまた反則負けとする。解ったかな」

「あらま」

 リチャードが残念がると、レオナルドも舌打ちした。その態度に、ファイドは呆れた。

「最初から魔法や異能力で戦うつもりだったのかい、君達は」

「そりゃそうですよ。こんな人間火炎放射器と、真っ当にやり合えるわけがないじゃないですか。魔法でも何でも使わないと、こっちがやられちゃいますってば」

 と、リチャードがレオナルドを指すと、レオナルドもリチャードを指した。

「これは連合軍だけじゃなく、ブリガドーンまで吹っ飛ばしちまう非常識極まりない魔導師なんだ。そんなのと体一つで戦うんだ、炎の一つや二つを出したって許されるのが道理じゃないのか」

「仲が良いねぇ、君達は」

 ファイドは皮肉混じりに言いつつ、右手を二人の間に下ろした。

「ほれ、見合って見合って」

「こうか?」

 レオナルドはファイドから教えられた通りに、ドヒョウの真ん中に引いてある線の一方にしゃがみ、拳を付けた。
リチャードも、仕方なさそうにその恰好を取った。二人共、羞恥心は消えていないが、もう開き直るしかなかった。

「はっけよーい」

 ファイドは右手を振り上げると、スモウを始める合図の言葉を叫んだ。

「どすこい!」

 これは、不意打ちだった。予想していた言葉と違った言葉だったので、ヴィンセントは体の力が抜けてしまった。
ラミアンの奇妙な出で立ちや及び腰で向かい合っている二人を見たせいで込み上がった笑いが、出てしまった。
詰めていた息が鼻から抜け、笑いを堪えているせいで草ががさがさと震えてしまったので、必死に息を詰めた。
これまで我慢したのだから、と押さえ込もうとしていると、頭上の空気が僅かに揺れて大きな影が被さってきた。
はっとして顔を上げると、そこにはフリューゲルが浮かんでいた。フリューゲルは、ヴィンセントの首根っこを掴む。

「くけけけけけけけけけけけけ! 何やってんだよ、ヴィンセント!」

「こ、これ、下ろしておくんなせぇ、鳥の兄貴!」

 ヴィンセントはじたばたと抵抗するが、フリューゲルはぴょんぴょんと跳ねながら皆の元へ戻ってしまった。

「リリ、リリ、ネコいたぞー! 裏切り者で二重…なんだっけ、まあいいか、とにかくネコだぜこの野郎ー!」

「あ、ヴィンちゃんだあ!」

 リリは目の消毒と言わんばかりに、首根っこを掴んで持ち上げられているヴィンセントを見上げた。

「なーなーなーお前ら、これどうする! なーなーなー、ニワトリ頭ー!」

 フリューゲルはヴィンセントをぶらぶらと揺さぶりながら、ギルディオスの目の前に突き出した。

「てめぇ、いやがったのか」

 ギルディオスはこれまでの恨みも込めて、ヴィンセントの両のヒゲをぎゅっと引っ張った。

「へ、へぇ」

 ヴィンセントは死を覚悟しつつ、小さく返事をした。ギルディオスはヴィンセントの顎を掴み、持ち上げる。

「今度は何が目的だ、あん?」

「だ、旦那ぁ…」

「命乞いなんざしても意味はねぇからな」

「いえ、あの、甲冑の旦那じゃあありやせん。黒竜の旦那でやんすよ」

「ファイドか?」

 ギルディオスはヴィンセントの顎を無理に動かし、ぐいっとファイドに向けた。フリューゲルもそちらに向く。

「お前はオレ様達のことを探っていたんじゃなくて、あいつに用事なのか? なんだ、つまんねぇの」

「え、あ、へぇ…」

 誤魔化せるなら誤魔化してしまおう、とヴィンセントが思っていると、リチャードが両手を上向けた。

「言い訳をするんだったら素早く、なおかつ論理的にしなくちゃダメじゃないか。密偵なら嘘は器用に吐かないと」

 先手を打たれてしまい、ヴィンセントは言葉に詰まった。そんなことを言われては、何を言っても嘘に聞こえる。
無論、本当のことを言うつもりは毛頭ない。けれど、リチャードによって安易な嘘を吐けなくなったのは事実だった。
他の者達の冷ややかな眼差しが、ヴィンセントを舐めてくる。ヴィンセントは、ただ曖昧に笑っているしかなかった。

「おお、ヴィンセント!」

 急に、ラミアンが明るい声を発した。ラミアンは両手を広げて、ヴィンセントに歩み寄る。

「丁度良いところで現れてくれた! どうだね、君も私達と共にスモウを取らないかね!」

「…ぶへっ」

 ラミアンの奇怪な様相に耐えきれなくなり、ヴィンセントは吹き出した。ギルディオスは、口元を押さえる。

「まあ、あれを見て笑わねぇ奴はいねぇよな」

「そいつぁありがてぇ申し出でごぜぇやすが、吸血鬼の旦那、あっしはこんなにも小せぇ魔物でして」

 ヴィンセントが断ろうとすると、フリューゲルは高笑いした。

「くけけけけけけけけけけけけけけけ! でも、お前ってでっかいネコに変化出来るじゃんかよこの野郎! オレ様、一度見たことがあるぞ! ラオフーよりもちっこくてルージュよりも幅が広いぐらいだったんだぞこの野郎!」

「あっ、こら、余計なことをお言いなさんな!」

 ヴィンセントがフリューゲルを諫めても、もう手遅れだった。

「それは興味深い事実だ!」

 ラミアンは仮面の奥の瞳を輝かせると、舞台上の役者のように大きな動きで空を仰いだ。

「ならば、スモウの取り組みを決め直さねば! それでは、ヴェイパーとフリューゲルにも加わってもらおう!」

「えっ、僕も!?」

 突然名を呼ばれたヴェイパーは、戸惑いながらも嬉しそうに自分を指した。だが、フリューゲルはむくれた。

「えー、オレ様は嫌なんだぞこの野郎! スモウするのはいいけど、そんな恰好するのは嫌だからなこの野郎!」

「君が勝てばリリも喜ぶと思うがね、フリューゲル」

 ラミアンがさも素晴らしいことであるかのように言うと、フリューゲルはリリと見つめ合ってから、顔を上げた。

「だったら、やってあげてもいいんだぞこの野郎」

 フリューゲルの素直な返答に、ラミアンは満足げに頷いた。

「人数は合わせなければ、勝負にはならぬからな」

 またもや芝居がかった動きで、ラミアンは萎え切った顔をしているジョセフィーヌに手を差し伸べた。

「さあ、ジョー! 更に三人分のマワシを準備してくれたまえ! 我が家にはまだそれだけの布があるはずだ!」

「一つ、言っていいかしら」

「なんだね、ジョー」

「ラミアン。あなたが生身じゃなくて本当に良かったわ」

 安堵と脱力と嘲笑が入り交じった口調で零したジョセフィーヌに、ブラッドは同意せざるを得なかった。

「今度ばかりはオレもそう思うよ、母ちゃん」

「わあ、僕もスモウを取れるんだ! うふふふふふ、嬉しいなぁ!」

 ラミアンに流されたらしく、ヴェイパーが浮かれてくるくると回った。ラミアンは、かなり嬉しそうに頷く。

「そうだろうとも、ああそうだろうとも!」

「僕達、すっかり放置されていない?」

 ドヒョウに立ったままのリチャードは、レオナルドと顔を見合わせた。レオナルドは、舌打ちした。

「そのようだな」

 ギルディオスは、ラミアンの浮かれ具合が空恐ろしくなってきた。彼はヴィンセントに対して警戒していないのか。
ギルディオスは、ヴィンセントに対する敵意は引っ込んでいない。また、ヴィンセントが行った所業も忘れていない。
魔導兵器三人衆と連合軍の間を行き来していた、二重の密偵であり、アレクセイとエカテリーナとも関係があった。
ゼレイブに潜入していた理由は、アレクセイとエカテリーナが攻め込む頃合いを見計らうためではないだろうか。
だとすれば、スモウなど取っている場合ではない。だが、浮かれ切ったラミアンには何を言っても聞こえないだろう。
何かあったら、その時は自分が動けばいい。ギルディオスは腕を組むと、困り顔のヴィンセントの様子を眺めた。
 こんなに珍妙な収穫祭は、生まれて初めてだ。





 


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