ドラゴンは滅びない
not Ruin Dragon





登場人物紹介



ギルディオス・ヴァトラス 「こういう仕事は、嫌いじゃねぇからよ」
主人公。生前は傭兵の重剣士で、全身鎧に内蔵した魔導鉱石に魂を宿して長らえている。
死後五百年以上長らえているが人格は享年の二十九歳で止まっており、短絡的で直情的。
元共和国軍少佐で、元異能部隊隊長。刀剣が好きで、爬虫類が嫌い。通称ニワトリ頭。

伯爵 「我が輩の存在の大きさと、貴君らの矮小さは比べることすら無駄である!」
五百七十六歳。ハーフドラゴンの魔法薬学者フィフィリアンヌに生み出されたスライム。
ワインレッドでゲル状の物体で、本名はゲルシュタイン・スライマス。饒舌、そして毒舌。
自称貴族だが、当然ながら爵位はない。ワインとお喋りが好きで、乾燥と夏場が嫌い。

ヴィクトリア・ルー 「暇なんだもの。仕方ないわ」
十二歳。呪術師。希代の呪術師グレイス・ルーの一人娘であり、その悪しき才を継ぐもの。
冷酷かつ狡猾な少女だが、甘いものを欠かすと気力体力魔力が途端に低下してしまう。
大人びているが、根は年相応に子供っぽい。得物は斧。お菓子が好きで、力仕事が嫌い。


フィフィリアンヌ・ドラグーン 「ならば、我が牙の元に忠誠を誓え」
五百八十六歳。ハーフドラゴンの魔法薬学者で、魔導師協会の元会長。重度の活字中毒。
ギルディオスと伯爵の友人。外見は十二歳程度で、無表情で理屈っぽい。現在行方不明。

フィリオラ・ヴァトラス 「あの、私、そんなにデレデレしてましたか?」
二十八歳。魔導師。フィフィリアンヌの末裔であり、竜の血の発現者。現在は子育て中。
レオナルドの妻で、一人娘がいる。気弱で臆病だが、母親になったことで芯が強くなった。

レオナルド・ヴァトラス 「連合軍の連中がここまで来たら、その時はオレが戦うさ」
三十六歳。元国家警察刑事。念力発火能力者。魔法も扱えるが、滅多に使うことはない。
気が強く口が悪く、血の気が多い男だが、家庭内の主導権は妻にほとんど奪われている。

リリ・ヴァトラス 「年頃の女の子に向かって、そんなことを言わないでくれる?」
八歳。レオナルドとフィリオラの間に生まれた娘で、かなり短いが竜のツノが生えている。
父親の能力を継いだ念力発火能力者だが、制御力は皆無に等しい。天真爛漫な少女。

ラミアン・ブラドール 「私のように、魔に魅入られた末に過ちを犯してはならんよ」
生前は吸血鬼。肉体を滅ぼされて魂を抜かれ、銀色の骸骨のような魔導兵器と化した。
ブラッドの父親。優雅で気品に溢れた立ち振る舞いを行う紳士で、妻子を深く愛している。

ジョセフィーヌ・ブラドール 「だって、ジョー、みたんだもん」
四十二歳。ブラッドの母親。予知能力者で、幼少時は異能部隊の隊員として活躍していた。
先天的に知性が成長しないので、人格は未だに五歳の幼女のまま。家事全般が得意。

ブラッド・ブラドール 「そういうのって、結構理不尽じゃね?」
二十歳。魔導師。ハーフヴァンパイア。金に近い銀髪を持つ長身の青年で父親似の美形。
少年のように快活で人が良いが、生意気な部分がある。魔法よりも、拳で戦う方が得意。

リチャード・ヴァトラス 「僕も、人のことは言えないけど」
四十歳。魔導師。レオナルドの実兄。以前は魔法大学の講師で、魔導師協会役員だった。
だが、共和国戦争時に戦争犯罪を犯し、戦犯となる。物腰は穏やかだが、腹の底は黒い。

キャロル・ヴァトラス 「私は、いつでも構いません。心の準備は出来ています」
二十四歳。リチャードの妻。共和国戦争前はヴァトラス家の屋敷でメイドとして働いていた。
夫のリチャードを心から愛し、死ぬ時は一緒と決めている。純粋で、努力を惜しまない性格。

ダニエル・ファイガー 「私を父と呼ぶな、隊長と呼べと命じたはずだ」
四十四歳。元共和国軍大尉で、異能部隊隊長。念動能力者で、抜きん出た実力を持つ。
生粋の軍人気質。妻、フローレンスを守れなかったことを悔やんでいる。無類のネコ好き。

フローレンス・ファイガー 「あたし達、やっと親らしくなった気がしない?」
故人。享年三十四歳。元共和国軍少尉で、異能部隊唯一の女性隊員。精神感応能力者。
ダニエルの元部下であり妻で、魔導技師でもある。一年前に、何者かに殺害されている。

ロイズ・ファイガー 「母さんを救えなかったくせに、何が上官だ、何が部下だ!」
八歳。ダニエルとフローレンスの息子。異能部隊の最年少隊員で、空間湾曲能力者。
人造魔導兵器のヴェイパーが一番の友達。父親と気が合わず、衝突を繰り返している。

ヴェイパー 「これ以上ヘマをしたら、フローレンスに笑われちゃうよ」
十五歳。元共和国軍異能部隊所属の人造魔導兵器で、フローレンスの手で生み出された。
自我が成長し、年相応の知能を持つようになった。ロイズを守り抜くことが、最重要任務。

ファイド・ドラグリク 「彼女の薬は最高だが、何分高くてならんのだよ」
年齢不詳。黒竜族の医師。竜族の生き残りで、フィフィリアンヌとは長年の仕事仲間。
専門は魔物全般だが、人間の治療も行っている。人当たりが良く、毒のない性格。

グレイス・ルー 「騙し討ちと卑怯な戦略が呪術師の基本なの」
年齢不詳。呪術師。ヴィクトリアの父親。外見は二十代後半の好青年。三つ編み丸メガネ。
趣味は悪事で策謀と暗躍を好むが、妻子が出来たことで性格が丸くなった。現在行方不明。

ロザリア・ルー 「あんたが苦痛に苛まれる様は、なかなか素敵なのよね」
三十九歳。元国家警察刑事。ヴィクトリアの母親。グレイスの魔力で、若さを保っている。
拳銃を乱射して殺戮を行うことを好む。基本的に冷めているが、夫と娘のこととなると別。

ルージュ・ヴァンピロッソ 「邪魔立てするなら、魂までも焼き尽くす」
年齢不詳。魔導兵器三人衆の指揮を執る、女性型人造魔導兵器。砲撃主体の攻撃を行う。
生前は吸血鬼。毅然としているが、脆い一面もある。男性経験が一切なく、免疫がない。

フリューゲル 「オレ様は世界最強世界最速の魔導兵器なんだぞこの野郎!」
年齢不詳。魔導兵器三人衆の一員で、高機動型人造魔導兵器。空中からの爆撃が得意。
生前は人造魔物のワーバードで、実験動物として生み出されていた。柄も悪いが頭も悪い。

ラオフー 「儂とおぬしらが戦うても、おぬしらが死ぬだけじゃ」
年齢不詳。魔導兵器三人衆の一員。最も大柄で凄まじい腕力を持ち、近接戦闘では最強。
生前はワータイガー。東方出身。言動は老人そのもので魚釣りが趣味だが、気性は激しい。

ヴィンセント 「つくづく、旦那は面白ぇお人でごぜぇやすなぁ」
年齢不詳。本名、白石ヴィンセント又吉。極東の島国出身で、ネコマタと呼ばれる魔物。
訛りの強い、独特の喋り方をする。のらりくらりと生きているので、あまりやる気がない。

アレクセイ・カラシニコフ 「脱走兵の殺処分、完了」
二十八歳。大国の諜報機関に所属する諜報員だが、任務の都合で連合軍の配下にいる。
戦時中に生体改造手術を受け、生体魔導兵器と化した。魂と共に、感情を失っている。

エカテリーナ・ザドルノフ 「それが我らの任務」
二十四歳。アレクセイと同じく大国の諜報員。任務も同じなので、常に行動を共にしている。
生体改造手術も同時期に受け、生体魔導兵器と化した。アレクセイとは一心同体と言える。




用語解説



魔導鉱石
魔力を帯びた鉱石。宝石のようなものから、金属まで様々な種類がある。
中でも希少な宝石系は魔力が高いため、純度と大きさによってはかなりの値段になる。

魔力測定器
魔導鉱石の特性を利用した、魔導機械。大振りの懐中時計のような外見をしている。
測定方法は至って簡単で、検査対象の相手に持たせるだけで測定が出来る。
内蔵された魔導鉱石に持った者の魔力が吸収・測定されると、その量に従って文字盤の
針が動く仕組みになっている。魔力のない者が持つと、当然ながら微動だにしない。

魔導拳銃
魔法陣と魔力を込めた魔導鉱石・鉱石弾を弾薬とした、回転弾倉式拳銃型の魔法発動機。
通常の魔導砲は一種の魔法しか放つことが出来ないが、弾倉を回転させることにより、
数種の魔法を放つことが可能。だが、構造が厄介であるため、一つ作るのにも時間と金が
掛かってしまう。鉱石弾に大きさがないせいで、充填魔力が足りないと威力が出ないという、多大なる欠点もある。実戦向きではなく、どちらかといえば趣味の武器。

魔導兵器
本来は魔導技術で作った機械を指す言葉だが、昨今では魔導技術で動く人造人間を指す。
機械式、無機式、生体式など様々な種類があるが、軍事用では機械式が主流である。
魔導兵器の核となる人造魂、或いは死者の魂を維持するのが難しいため、需要は少ない。
死者の魂の場合は魔導兵器一種、人造魂の場合は魔導兵器二種、として分類されている。

魔導師
近代では衰退の一途を辿っている魔法技術を有し、その技術を生業にしている者の総称。
一般的には魔物退治や魔法薬の調合と販売などを請け負っているが、希に戦闘も受ける。
共和国戦争によって魔導師協会が壊滅する前は、魔導師協会の管理下の元の免許制で
あったが、魔導師協会が壊滅し共和国政府が倒れた今では、免許は無意味なものと化し、
正式な魔導師は存在しなくなった。よって、現在の魔導師とは自称魔導師なのである。
魔導技師とは、魔導技術を用いた機械技術を扱う技術者を指す名称で、魔導兵器の開発者や製作者は、大抵の場合は魔導技師である。

竜族
高い知能と魔力を持った、巨体の種族。二本のツノと翼、飛行能力があることが特徴。
寿命は人間より遥かに長いが、その弊害なのか繁殖能力は低く、絶対数は限られている。
高位の者は人間に擬態することが可能だが、その姿を維持するにはかなりの魔力が必要。
人類文明の近代化と共に絶滅への道を辿り、現在では数えるほどしか生存していない。
竜王朝や竜王都は、過去に起きた帝国との戦争で既に滅びてしまっている。

共和国
三百年ほど前から勢力を増した国家で、王国と帝国の両国を吸収し国土を拡大させた。
急激な経済成長と共に軍事力を大幅に強化して、近隣諸国に睨みを利かせている。
だがその内部では貧富の差が激しく、貧民街へと流れざるを得ない住民も少なくない。
そして十年前に近隣諸国との摩擦の末に勃発した、国土全体が戦場と化した戦争、
共和国戦争では、近隣諸国の連合軍に大敗し、政府は解体されて国家の機能を失った。
現在は、近隣諸国を始めとした各国政府によって成された組織、国際政府連盟の統治下
にあり、国民の大半は難民や移民として近隣諸国に移り住んだので、人口は約十分の一
にまで落ち込んだ。国際政府連盟の手によって復興が始められた、との話だが、国土の
ほぼ全ては瓦礫と死体に覆われたままで、本当に復興が始められたのかは定かではない。

旧王都
王国のかつての王都だが、栄華は失われている。戦争前は、工場街として栄えていた。
共和国戦争中期に起きた戦闘でかつての王宮も完全に破壊され、以前の姿はない。

国家警察
共和国国家の警察組織だったが、共和国戦争終結と共に国際政府連盟に解体された。

共和国軍
共和国の保有する軍隊だったが、共和国戦争終結と共に国際政府連盟に解体された。

連合軍
共和国戦争中に結成された、周辺諸国の軍勢で構成された多国籍軍。近代兵器を用いた
作戦を得意とし、各国の予算を資金源とした豊富な軍資金を使って大量の兵器を配備
している。兵力もまた大量であり、共和国軍最盛期のおよそ十五倍近くにも及んでいる。
多国籍軍ではあるが、実質的に実権を握っているのは大陸の北部に位置する大国であり、
上層部も大国の上位軍人ばかりが占めている。共和国上空に出現した謎の飛行物体、
ブリガドーンに対して強い興味を示しているが、今のところは表立った動きはしていない。

異能部隊
共和国内に居住する特殊能力者、或いは高魔力者を集めて組織された特殊戦闘部隊。
共和国戦争が勃発する前に解体されたが、かつての隊員達は再び集い、生きている。

魔導師協会
共和国政府配下にある、共和国内の魔導師を統一管理する組織だったが、共和国戦争が
勃発して首都が襲撃されたことで魔導師協会本部も壊滅状態に陥り、禁書の魔導書が
多数奪われた。戦時中の混乱で組織としての機能をほぼ全て失い、空中分解してしまった。
そして、共和国戦争中に魔導師が行った魔法による大量破壊行為を、人類への脅威と
見なした国際政府連盟の手によって、魔導師協会の役員や腕の立つ魔導師は逮捕され、
戦犯と同様の処分を受けた。だが、ステファン・ヴォルグ現会長だけは戦後五年を経過した今も発見出来ずにいる。

通貨
単位はネルゴ。一ネルゴは七円程度。一ネルゴ銅貨、十ネルゴ銅貨、五十ネルゴ白銅貨、
百ネルゴ銀貨、千ネルゴ札、一万ネルゴ札とある。千ネルゴで金貨一枚とほぼ同等。
だが、共和国戦争勃発と同時に経済が麻痺してしまったので、貨幣価値は無きに等しい。

共和国戦争
十年前に起きた、大陸北西部を巻き込む規模に発展した戦争。共和国と周辺諸国の間に
生まれていた経済的、政治的な摩擦が高じた結果、双方の外交問題に発展してしまった。
当初は和解案も出たのだが、共和国はそれを振り切り、自国軍を進軍させて隣国の領土を
侵し、一方的な破壊活動を行った。その戦闘を皮切りに共和国軍と隣国の戦争が始まった
のだが、隣国は周辺諸国に援軍を求め、大規模な多国籍軍、連合軍を編成して進軍した。
その規模は共和国軍を遥かに上回り、共和国軍の反撃もものともせずに共和国領土に
侵攻し、首都を壊滅させた。それ以降は連合軍の一方的な戦いで、共和国軍は衰退の
一途を辿り、最終的には将軍などの上位軍人らも全て拘束され、連合軍に処刑された。
死者の数は膨大であり、また損害も巨大であり、近代社会における重大な汚点である。
戦時中、特に目立った活躍をしていた特務部隊を率いていたのは竜族であるという噂が
あるが、特務部隊隊員の大部分が脳改造手術を受けて自我を失っているため、証言を
得られないので定かではない。特務部隊隊員であり共和国軍中尉でもあった戦争犯罪人、
リチャード・ヴァトラス中尉は事の詳細を知っている可能性が大きいが、ヴァトラス中尉も
また行方が解らずその生死は不明である。戦後五年が経過した現在も、不透明な部分が
多く、連合軍と国際政府連盟による事実確認調査は継続されている。

ブリガドーン
共和国領土上空に、突如として出現した巨大な飛行物体。山に酷似した外見をしている。
遥か上空にあることと、ブリガドーン周辺の空間に異常が見られるため、内部を調査
した者はいない。その正体、目的、構造は一切不明。また、ブリガドーンという名も
誰が付けたのかは定かではないが、いつのまにか通称として世間に浸透している。








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