手の中の戦争




第六話 鋼鉄の心



私は、器用ではない。


だから、上手く笑ったり泣いたり出来ない。感情を表に出すタイミングを、失ってしまうことが多いのだ。
私は人並みに感情があり、普通に怒ったり笑ったり悲しんだりしているのだが、外からはそう見えないらしい。
だけど、私としてはこの性分は嫌いではない。下手に感情を出して、事を荒立てなくて済むことがあるからだ。
だが、普段から押さえてばかりいると、いざ出てしまうと歯止めが聞かなくなって困ってしまうこともある。
今回も、そんな感じだった。




夜道を走るニュービートルは、峠道に差し掛かっていた。
ライトがなかったら一寸先は闇というような道を、すばる隊員は実に見事なハンドル捌きで擦り抜けていく。
何度も通っているから、なのだろうけど本当に器用だ。車一台が通るのがやっと、という狭さの道が続く。
高速道路を下りて、市街地に添った県道を抜けて山道に入ったのは良いけれど、私は次第に不安になった。
本当に、こんな場所に人型兵器研究所なんてあるんだろうか。タヌキにでも、化かされやしないだろうか。
カーブに次ぐカーブで酔いそうになりながら、私は横目にすばる隊員を窺った。彼女は、ずっと黙っていた。
ハンドルを握る手は固く、表情もどこか強張っているように見える。何か、気掛かりなことでもあるのだろうか。
運転に集中しているにしては、様子が違っているように思える。私はそれが気になり、すばる隊員に話し掛けた。

「どうかしたんですか?」

「ん、あ、うん…」

すばる隊員は間を置いてから反応し、私にちらりと目を向けた。

「別に、なんでもあらへん。ただ、ちょいと疲れたなぁ思うて」

「仕方ないですよ。ずっと走りっぱなしですもん」

私はすばる隊員の横顔から目を外し、カーステレオの液晶パネルに表示されているデジタル時計に目をやった。
中学校の近所にある児童公園を出発したのが、大体午後〇時近く。そして、時計の時刻は現在午後七時過ぎ。
すばる隊員の話では、人型兵器研究所までの所要時間は六七時間と言うことだったが、多少伸びてしまった。
大分長いこと乗っているせいで、さすがに背中が痛かった。座りっぱなしというのも、ストレスが結構溜まる。
カーステレオからは、雑音混じりのラジオ番組が聞こえている。山の中になると、電波の入りが悪いのだ。
テンション高くトークするDJは、その合間に知らないアーティストの曲が流しているが、なかなか良い曲だ。
山道故の舗装の悪さで、ニュービートルの車体が時折揺れる。カーブを曲がるたびに、遠心力が体に掛かる。
バッテリーが上がってしまうので、カークーラーは既に切ってあり、その代わりに窓を少しだけ開けていた。
うるさい音を立てて吹き込んでくる夜風は、有機的な匂いと重たい湿気を含んでいて、ひんやりしていた。
窓の外を過ぎていく森を見つつ、ゲリラ戦には丁度良いかも、と思った。木もまばらだし、隠れやすそうだ。
その代わり、敵も隠れやすいだろう。慎重に戦略を練って進まなくては、あっという間にやられてしまう。
こういう時こそ、北斗と南斗の出番だ。二人の高性能なセンサーさえあれば、ゲリラ戦だって目じゃないのだ。
いや、今後はそういう過信はやめておこう。そういう甘えが心にあったから、グラント・Gに負けてしまった。
私はそう思いながら、ヘッドライトに照らされた道路脇の草むらを見ていたが、何かが反射したことに気付いた。

「あれ?」

目を凝らしているうちに、車が通り過ぎてしまった。だが、ほんの一瞬、雑草の間にレンズが見えた気がした。
大きさは大したことがなかったが、あれは明らかに監視カメラだ。ここは既に、人型兵器研究所の敷地なのか。
ということは、私達が人型兵器研究所に向かっていると言うことは、とっくにあちらにはばれているのだろう。
すばる隊員の様子がおかしいのも、そのせいかもしれない。考えてみれば、私は高宮重工の関係者ではない。
特殊機動部隊の隊員ではあるけど、それ以上でもそれ以下でもないのだから、少々まずいのかもしれない。

「あの、すばるさん」

私がすばる隊員に向くと、すばる隊員は狭くて急なカーブを抜けてから、私を横目に見た。

「あ、ええよ、別に気にせんでも。礼子ちゃんは自衛隊の関係者でもあるけど、北斗と南斗に関わっている時点で、うちら高宮重工の関係者でもあるねん。せやから、なーんも気にせんといてや?」

「すみません、すばるさん。なんか、私の我が侭で振り回しちゃって」

「せやから、ええんやて。うちは、礼子ちゃんをここに連れてきたことをなーんも後悔しとらへんねやから」

すばる隊員はにっこりと笑み、口調を明るくさせる。

「それより、そろそろ着くで。前、見とき」

そう言われたので、私は顔を上げて前に向いた。最後のカーブを抜けると、急に森が開けて、空間が現れた。
自然そのものの山の中にある、不自然な建物。強烈なサーチライトに照らされていて、そこだけ明るい。
長方形の箱に似た建物がいくつも連ねてあり、高い塀に囲まれていて、様々なアンテナも立っている。
ニュービートルは、真正面の門に近付いていき、減速して停車した。すばる隊員は、運転席から下りる。

「ほな、ちょい待ちや」

フロントガラス越しにそう言ってきたすばる隊員は、門へと駆けていき、その門柱にある機械をいじった。
特殊機動部隊専用営舎の玄関に着いているような、カードリーダーにカードキーを差し込み、読み取らせる。
パスワードを何度も入力して、指紋と網膜認証をした。それらが全て終わると、すばる隊員は門から離れた。
間を置いてから、重厚な門がゆっくりと開いていった。すばる隊員は、急いで車へと戻り、運転席に座った。

「早いとこせんと、閉まってしまうねん。急ぐで!」

すばる隊員がアクセルを押し込むと同時に、ニュービートルは急発進した。私は、思わぬことに戸惑った。
そのまま、ニュービートルの丸っこい車体は一直線に門の間に滑り込み、前庭と思しき場所で停車した。
ぎゅっ、とブレーキを掛けられた車体がつんのめり、揺れた。重たい音に振り返ると、門はもう閉まっていた。
本当に早かった。ていうか、こんなに早くて大丈夫なのか。うっかり人間とか、挟まれたりしないのかな。
私が目を丸くしていると、すばる隊員はニュービートルをのろのろと動かし、建物の正面玄関の脇に付けた。
ぎっ、とサイドブレーキを引いて、イグニッションキーを抜いてエンジンを止めると、車内は静まった。

「さ、降りや」

私はすばる隊員に従い、シートベルトを外して車から降りた。久々の外界は、思いの外、空気が冷えていた。
山の上だからだろうか、冷えの鋭さが違う。私が首をすぼめていると、外へ出たすばる隊員は私を手招く。

「二人に会う前に、ちぃと休もか。さすがに、うちも疲れてしもてん」

「ここ、寒いですね。山の上だからですかね」

私は鳥肌が立っている二の腕をさすり、肩を縮めた。

「そやね、ちぃと寒いかもしれへんね。熱っついコーヒーでも飲もか、めっちゃ旨いん淹れたるで」

すばる隊員は、私の少し前をゆっくり歩いていった。座り続けで足が鈍っていたのは、どちらも同じらしい。
サーチライトに照らされている人型兵器研究所は、白亜の壁が眩しく、高宮重工のロゴが右上に輝いていた。
研究棟と思しき建物の奥の方には、研究員の寄宿舎だと思われる、ベランダの付いている建物が建っていた。
そうか。ここが、北斗と南斗の実家なんだ。厳密にはそうではないのかもしれないけど、私はそう思った。
こんな山奥の研究所で造られて、生まれて、そのまま自衛隊に放り込まれて、ずっとずっと戦わされて。
北斗と南斗にとってはそれが当たり前のことだけど、当たり前だからこそ、なんだか悲しくなってしまった。
それ以外の、生き方などないのだから。




すばる隊員に連れて行かれたのは、休憩室だった。
門を入った真正面にあった建物、第一研究棟と言うらしいが、その建物の最上階にある手狭な部屋だった。
仮眠室を兼ねているようで、私達が入った部屋の隣には、似たような作りの部屋がずらりと並んでいた。
私達は、その中の一室を借りていた。すばる隊員が持ってきてくれたコーヒーの湯気が、部屋に満ちている。
ベッドとテーブルとテレビぐらいしか物がない、殺風景な部屋では、外からの虫の鳴き声が聞こえてくる。
私は、すばる隊員が貸してくれたカーディガンを半袖のセーラー服の上に羽織って、コーヒーを啜っていた。
疲れた体に、砂糖とミルクをたっぷり入れたコーヒーが染み入り、お腹の中からじわりと温まってくる。
すばる隊員は猫舌なのか、何度も湯気を吹いてから啜った。慎重に飲み下してから、ふう、と息を吐いた。

「後で、隊長はんと神田はんにも連絡せぇへんとな。心配されてまう」

「そうですね」

私は、大振りのマグカップを膝の上に置いた。高宮重工の社名ロゴが入っていて、結構恰好良い。

「ああ、それとな。北斗と南斗のおるところ、先に教えといたるわ」

すばる隊員は、薄型テレビが置いてある棚の中からメモ帳とボールペンを取ると、テーブルに持ってきた。
メモを一枚破くと、その上にさらさらと書いた。建物の地図らしき絵の下に、英語が書き加えられた。

「これ、パスワードな。これがないと、北斗と南斗のおる部屋には入れへんねん。よう覚えときや」

そう言いながら、すばる隊員の指が英語を示した。Red flame revolver、という、仰々しい雰囲気の言葉だった。

「レッド…フレイムリボルバー?」

今まで、こんな単語は聞いたことがない。直訳すれば、赤い炎の回転式連発拳銃。全くもって意味不明だった。
だが、パスワードにされているのだから、恐らくは北斗と南斗に関係があるのだろうけど、想像も付かなかった。

「覚えたら、ここんとこで燃やしとき。ないとは思うんやけど、うっかり外へ漏れたら大変やから」

すばる隊員は棚からガラス製の灰皿を持ってくると、ごとり、とテーブルに置いた。私は頷き、メモ用紙を睨んだ。
特殊演習の時にも、暗記しろ、と言われることはままあるので、私はそれの要領で地図と単語を覚えることにした。
簡単に線を引いただけなので、多少歪んでいる横長の長方形。絵の端に、第一研究棟一階、と書かれている。
その中が区切ってあり、目的の部屋が書かれている。というか、一階が全部目的の部屋と言っても過言ではない。
北斗と南斗がいるらしい人型兵器開発研究室は、一階をぶち抜いて造ってあり、その中に更に部屋があるようだ。
人型兵器開発研究室の中心に四角く囲ってある空間があり、その中に、メンテナンスドッグ、と書いてある。
その、メンテナンスドッグ、の字には二重で丸が書いてあることからすると、北斗と南斗はここにいるようだった。

「あと、こいつも必要やね」

すばる隊員は、先程使っていたカードキーを出した。銀色で、人型兵器研究所、と小さく書いてある。

「人型兵器開発研究室には監視カメラと通報システムがごっつぅあるんやけど、気にせんといてや。礼子ちゃんなら大丈夫やと思うから。その辺のシステムはな、北斗と南斗のコンピューターにもちょいと繋げてあるんよ。せやから、なんもならんと思うで」

私は、すばる隊員の差し出してくれたカードキーを受け取った。一見するとプラスチックだが、手触りが金属だ。
だが、見た目はどこからどう見てもプラスチックだ。クレジットカードとか、キャッシュカードに良く似ている。
だけど、金属みたいな感じがする。私が不思議に思いながらカードキーを見ていると、すばる隊員は言った。

「それな、北斗と南斗と同じ合金で作ってあるんよ」

「これ、どういう素材なんですか? 触った感じが不思議なんですけど」

カードキーを裏返したりしながら私が尋ねると、すばる隊員は首を捻る。

「うちはそっち系、機械系やなくてコンピューター技術の方をやっとったから、詳しいことは知らへんねん。そやけど、それがえろう不思議なもんで出来とるんは解るんよ。それ以外は、よう解らへんのやけどね」

私は、北斗と南斗に使われているものと同じ合金であるカードキーを眺めたが、不思議だとしか解らなかった。
具体的に、何がどう不思議だ、と言い表すのが難しい。だけど、やっぱり、今までに見たこともない素材なのだ。
金属なのかプラスチックなのかは解らないけど、固いのは確かだ。でも、ちょっと曲げてみると、簡単に曲がる。
あんまり曲げると折れてしまいそうなので、途中で止めたけど、まるでゴム製であるかのように曲がったのだ。
ますます、訳が解らない。だけど、あんまり考えると深みに填ってしまいそうなので、考えるのを止めた。
私は、カードキーを握り締めた。これで、北斗と南斗に会うことが出来る。後少し、移動すればいいだけだ。

「ホンマ」

すばる隊員は両手の間に持ったマグカップに、目線を落とした。

「羨ましいで」

私が顔を上げると、すばる隊員は寂しそうな笑みを見せた。

「そこまで好きになれる相手がおるっちゅうのも、そこまで好きになってくれる相手がおるっちゅうも、どっちもホンマにええことや。礼子ちゃんも、北斗も、南斗も、幸せやなぁ」

「私は、すばるさんも好きですよ。形はどうあれ、すばるさんも私達と一緒に戦っているんですから」

私は手の中のカードキーから目を上げて、すばる隊員に向けた。すばる隊員は、目元を柔らかくした。

「ありがとうな、礼子ちゃん。うちも、礼子ちゃんのことは好きやで」

「そういえば、すばるさん」

私はあることを思い出したので、聞いてみた。神田隊員の時と同じく、今以外に機会がなさそうだからだ。

「すばるさんって、神田さんのこと、好きなんですか?」

「好き…ゆうか、なんて、ゆうか」

すばる隊員は徐々に頬を赤らめて、顔を伏せてしまった。

「神田はんて、めっちゃ優しゅう人やけん、うちにも優しゅうしてくれるやん? せやから、なんかな、うち、勘違いしてしもてん。うちが、神田はんのこと好きや思うのと同じぐらいに、神田はんも好きやと思うとってんとちゃうのかなぁ、なんて。そうでないのは、うちもよう知っとるんよ。神田はんは、ずうっと好きな人がおるんやから。うちなんかじゃ、その人には勝たれへん。せやから、うち、言わんといておこう思うてんねん。下手にそんなことゆうたら、任務に支障を来すかもしれへんしな」

すばる隊員の、気恥ずかしげで気弱な言葉が終わった。こっちまで、照れくさくなってしまいそうだった。
そして、彼女のいじらしさを感じ、私は感動した。神田隊員と同じくらい、すばる隊員も優しい人なのだ。
神田隊員の心を乱してしまわないように、自分の気持ちを抑え込んで、片思いに止めておこうとしている。
私は、今まで恋をしたことがないからすばる隊員の気持ちはよく解らないが、それでも辛いだろうと思った。

「それにな」

すばる隊員は目を伏せて、すっかり湯気の消えたマグカップを握り締めた。

「うちと神田はんは、住む世界が違うてるねん。せやから、なんにもせんで、なんにもならんままの方が楽なんよ」

切なげな呟きが、コーヒーの匂いと共に広がり、消えていく。

「うちは礼子ちゃんみたいには戦えへんしね。最初から、ただ見てるだけなんやから、そのままでええんよ」

すばる隊員は目元を拭うと、笑ってみせた。その笑顔は、痛々しく思えた。

「さ、礼子ちゃん、はよ行き。カササギは橋になるだけのもんや、織姫と彦星の逢瀬を邪魔したらアカン」

「…はい」

私はすばる隊員に掛ける言葉が見つからなかったので、頷いた。マグカップのコーヒーを、全て飲み干した。
インスタントではなく、ちゃんとドリッパーで淹れたものなので、冷めてしまった後も香りが高くておいしかった。

「ごちそうさまでした」

私はテーブルにマグカップを置くと、北斗と南斗のいる場所が書いたメモ用紙を再び見た。大丈夫、もう覚えた。
棚の中にあった、喫煙用と思しきライターと拝借する。灰皿の上に置いたメモ用紙の端に、小さく火を点けた。
火はあっという間に燃え広がり、メモ用紙を黒くする。数秒後には、縮れた灰となって、薄く煙を昇らせていた。
私はすばる隊員に礼を言ってから、休憩室を後にした。蛍光灯の消されている薄暗い廊下を、歩いていった。
火災報知器などの非常灯の赤い光が灯っていて、それが少し怖かったけど、幽霊に会うことなんて別に怖くない。
機関銃で狙われたり、目の前で仲間が倒れたりする方が余程怖いのだ。私はそう腹に据えて、歩調を早めた。
綺麗に磨かれたリノリウムの床に、ローファーの硬い底がぶつかる音が繰り返され、合間に私の呼吸が混じる。
そんなに急いでいるつもりではないのだが、自然と早足になってしまい、鼓動もばくばくと高鳴ってきていた。
一体、何を緊張しているのだろう。北斗も南斗も私の友達なのだから、会うのに緊張する必要なんてない。
階段を何回も下りて、一階の玄関ホールに出た。人型兵器開発研究室に向かおうとして、ふと、足が止まった。
玄関ホールの壁に、あまり大きさのない写真パネルがあった。パネルのガラスに、私の顔がぼんやり映っている。
近付くと、ガラスの反射が弱まり、中の写真が良く見えるようになった。最初は、それが何なのか解らなかった。
赤い。赤くてごつい。両肩に六弾倉式の弾倉を持ち、それ相応の太さの銃身を二本伸ばした、屈強なロボット。
親指を立てて、こちらに向けて笑っている。片目、こちらから見て左目なので本人の右目には、ゴーグルがある。
オレンジのゴーグルに隠されていない方の目は、鮮やかなライムイエローで、目元はきついが表情は優しかった。

 001 Red flame revolver

写真の下にあるネームプレートには、そんな名前が刻み込まれていた。あのパスワードと、全く同じ言葉だ。
そしてその下には、こんなことも書いてあった。カードキーと同じ素材だと思しき、金属板に印されていた。

 赤き鋼鉄の戦士、レッドフレイムリボルバーは、遥か銀河の彼方より訪れし、我ら人類の友人である。
 そして、高宮重工に人類の科学を超越したロボット技術をもたらした、いわばプロメテウスなのである。
 高宮重工に永久なる成功と人型自律実戦兵器をもたらしてくれた、愛に生きる鋼鉄の戦士に、敬意を込めて。

 高宮重工 人型兵器研究所所員一同

一度読んだだけでは、事態が理解出来なかった。つまり、この写真のロボットは、宇宙から来たというのか。
まるで下手なアニメや漫画みたいな展開で、私はすぐには飲み込めなかったが、そう言われれば納得出来る。
北斗と南斗の性能がずば抜けていることや、高宮重工が優れたロボットを作れる理由などが一気に説明出来る。
だけど、理解は出来ない。納得出来るのと理解出来るのは別だ。大体、いきなりそう言われても信じられない。
それに、そんなロボットが地球に現れたなら、世界は大騒ぎだ。うっかりしたら、戦争にだってなりかねない。
私はレッドフレイムリボルバーとやらの写真に背を向けて、歩き出そうとしたが、また足を止めてしまった。
あの赤には、見覚えがある。どこで見たのかは思い出せないけど、とにかく、あの赤は前に見た記憶がある。
どこで見たんだろう。だけど、見たのは確かだ。私はそれを思い出そうとしたが、すぐには出てこなかった。
ええい、今はそんなことをしている場合ではない。人型兵器開発研究室に行って、北斗と南斗に会わなければ。
そのために、ここまで来たのだから。





 


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