鬼蜘蛛姫




第十三話 裁かれぬ業苦



 家老はいい顔をしなかった。
 それもそうであろうな、と荒井久勝は胸の内でちらりと思ったが、言葉にも顔にも出さなかった。だが、側室を一人 でも多く娶らなければいけないのは家老も承知しているので、二つ返事で了承した。丁寧に頭を下げて襖を閉め、 家老が奥の間から離れていくのを待ってから、久勝は胡座を掻いていた足を伸ばした。側仕えには天守閣の自室 に向かうと言うと、側仕えが付き従ってきた。襖を開けられて廊下に出ると、角を曲がってやってきた女中がすぐに ひれ伏して床板に額を擦り付ける。廊下に面した部屋の障子戸が開き、その中でおのおのの仕事をしていた侍が 久勝にひれ伏す。角を曲がるたび、廊下を過ぎるたび、何十人もの者達が首を差し出してくる。いつものことであり、 これが平常なので何をどう思うこともないが、少しでも動くたびに回りの者達も動いてくるので少々煩わしい。
 天守閣に至ると、側仕えはすぐさま身を引いた。そうするように命じてあるからだ。久勝は一人きりになれる時間を 味わえるとほんの少し心が浮き立ったが、やはり顔には出さなかった。後ろ手に襖を閉めた久勝は深く息を吐いて 肩の力を抜くと、障子戸を少しだけ開けた。だが、空が曇り始めていたために光源は頼りなく、薄暗かった。しかし、 火を灯すほどの暗さではない。久勝は自室の隅に固めてある道具を出すと、麻袋を開いた。
 胡座を掻いて薬研を据え、そこに麻袋の中身を落とす。車輪の軸を握って体重を掛け、それを磨り潰していくと、 日干しした草の葉は粉々になっていった。それを更に細かくするべく、何度となく薬研の車輪を往復させる。静かな 部屋には石と石が擦れ合う音が響き、乾き切った葉が砕けるかすかな音も混じっている。車輪を外してから葉の粉を 一抓みし、指の間で細かさを確かめる。まだ荒い、もうしばらく潰さなければ。

「致し方ないことなのだ」

 久勝はそう自分に言い聞かせながら、ごりごりと薬研を鳴らす。

「そう、致し方ない……」

 そう言えば、どんなことも許されるとでも思っているのか。否。そんなはずはない。久勝は己の言葉を内心で否定 してから、無心に葉を砕き続ける。石臼で碾いた麦のような細かさになった葉を指の間で擦り合わせ、久勝はその 出来を確かめるために葉の粉を舌先で舐め取った。ざらついた粒子を粘ついた唾液に混ぜ、苦いばかりの葉の粉を 胃袋に収める。効き目が出てくるのはもうしばらく先であろう。その時を初恋の相手と待ち合わせした生娘のように 弾んだ気持ちで待ち侘びながら、久勝は薬研の中身を紙で包み、折り畳んだ。
 これを飲ませれば、あの娘も簡単に籠絡出来る。元より大した生まれの娘でもないが、八重姫の呪いを確かなもの とするためには不可欠なことなのだ。薬効はこれまでの女達で確かめている。飲ませる相手の体格に応じて薬の 量を加減しなければならないが、それも勘で覚えている。少々面倒なのが、女が孕んだ頃合いを見計らって別の薬 を飲ませることだ。多すぎては産む前に死んでしまうし、少なすぎてはまともな形の赤子が産まれてしまう。八重姫に 呪われている男の種なのだから、まともであっていいはずがないのだ。側室が立て続けに死んだため、その後釜に 収まろうと擦り寄ってきた下働きの娘達から正気を奪い、早々に厄介払い出来たのもこの毒のおかげだ。

「ああ、八重、八重……」

 天井がぐるりと回転する。襖がぐにゃりと曲がる。足元に滑り込んでくる隙間風が冷たくなる。久勝は口の端を 奇怪に緩めながら手近な壁にもたれかかり、普段はあまり使わないようにしている表情筋を思い切り使った。喉の奥 からは隙間風と似たり寄ったりの笑い声が漏れ、手足の感覚が遠のいていく。だが、このマンダラゲを使い始めた ばかりの頃に比べれば、体が慣れてしまったのか効き目が薄くなっている。以前であれば、粉末をほんの一舐め するだけで酔いしれられたのだが。かといって、あまり多く口にするのは良くない。
 いつのまにか降り始めた雨が、障子戸の隙間から見える庭を潤わせる。薄暗さは毒々しく咲き誇るマンダラゲの 白さを引き立て、淫靡な輝きすら与えている。その色合いに見惚れながら、久勝は軽い酩酊に任せて追憶の中に 浸った。あの女は、あの日々は、この呪いは、夢幻ではない。久勝にとっては最初から最後まで現実なのだ。
 それ故に。




 荒井久勝は荒井家の嫡男として生まれ落ちた。
 父親の正室であった母親の顔は知らず、乳母に育てられた。男の兄弟はいずれも腹違いで側室の子だったことも あり、世継ぎは久勝であると物心付く前から決められていた。母親が久勝を生んで間もなくに死んだのは側室に毒 を盛られたからだという話を耳にしたことはあるが、定かではない。側室同士の怨恨渦巻く愛憎劇にまるで興味が ないということと、ふと気付いた頃には本条城から側室がいなくなっていたからだ。腹違いの兄妹達はそれまで通り に城で暮らしていたが、その母親達がいなくなったことを寂しがるどころか安堵しているようであった。親と離れ離れ になった子供らしからぬ態度だったので、少なからず疑問を覚えた久勝が兄妹達に尋ねようとすると、すぐさま従者 が飛んできて久勝を引き離してしまった。聞いてはなりませぬ、関わりなきよう、と何度となく説き伏せられたので、 久勝は疑問を解消出来ぬまま首を縦に振った。
 それから数年が過ぎ、久勝が元服したばかりの頃、もうお話ししてもよろしゅうございましょう、といつになく深刻な 顔をした家老に迫られた。間を置いてから少年時代の不可解な出来事を思い出し、久勝は長らく心の奥底で燻って いた疑問を解消するべく頷いた。壮年の家老によれば、荒井家は数百年前から蜘蛛妖怪に呪われている、とのこと であった。それはかなりややこしい因縁でありくどかったので大半を聞き飛ばしていたが、要約すると源平合戦の頃 に落ち延びた平氏の姫君を危険な八重山に導いた農民の一人が荒井家の落とし胤で、平氏の姫君を助けるどころ か手込めにしようとしていたので、蜘蛛妖怪はそれを恨んでいる、とのことだ。故に、荒井家は蜘蛛を見たら殺せ、 だがそれは心身共に立派な武士となって太刀打ち出来るようになってからだ、と言い伝えられているのだそうだ。 筋が通るようで通らない話ではあったが、あまりにも家老が真剣だったので無碍に出来るものでもなく、久勝はそれを 受け入れることにした。他の武家がどうであるかは知らないが、迷信を愚直に守ることもまた家督を継いだ者には 欠かせぬ仕事の一つなのだ、と思うようにしておいた。
 ある日、久勝は父親である荒井久繁に遠乗りに誘われた。それ自体はそれほど珍しいことではなく、乗馬が得意 な父親は事ある事に久勝を連れ回していたからだ。ほんの幼子だった頃は父親の馬の鞍に座らせてもらっていた が、十歳を過ぎた頃から久勝も自分の馬に乗るようになった。城から大分離れた森まで至ると、久繁は護衛の者達 に少々遠巻きにしているように命じた。久繁はどんどん森の奥に進んでいき、久勝は帰り道を見失うのではないかと 内心で冷や冷やしながらも父親の馬の尻を追い掛けていった。

「ここで良かろう」

 年季の入った木々が生い茂る森の奥で、久繁はようやく馬を留めた。久勝も馬を留める。

「父上、このような場所に何があるのでござりまするか」

「うむ。荒井家に蜘蛛の呪いが掛かっていることは、そなたも知っておろう」

「はい。耳に入れました」

「家督を継ぐ気はあるな」

「はい。父上のように、荒井家を盛り立てて参りまする」

「ならば、儂に付いてまいれ」

 久繁は馬を手近な木に繋ぎ止めておいてから、草むらへと分け入っていった。久勝も馬から下りて手綱を繋ぐと、 久繁の背を追っていく。胸当てを巻いて矢筒を背負った狩猟装束姿の父親は周囲をしきりに気にしながら、足早に 進んでいくので久勝は懸命にその後を追い掛けた。良く見ると、草むらには分け入った痕跡が残っており、地面にも 薄く足跡が付いている。その足跡は今し方付いた久繁の足跡と全く同じ大きさなので、恐らく、久繁はこの森の奥を 何度も訪れているのだろう。だが、どんな理由があって。久勝が訝っていると、草むらが途切れたところで久繁は足を 止めた。久勝は伸び放題の雑草を掻き分けて進み続けると、久繁は畑を背にして待っていた。

「父上、これは……」

 久勝が目にしたのは、畑を埋め尽くす鮮やかな白の花だった。畑の畝に立ててある青竹に細い蔓を巻き付けて おり、葉を広げて日差しを受け止めている。久繁はその花を一瞥してから、息子に向き直る。

「これぞ、蜘蛛の呪いぞ」

「この花が、でござりまするか?」

 今一つ話が見えないので久勝が訝ると、久繁は顎髭を撫で付ける。

「左様。マンダラゲという名を聞いたことはあろう」

「はい。人を惑わす毒を帯びた花だと。では、これがそのマンダラゲなのでござりまするか、父上」

「そうだ。何代もの前の荒井家の当主が、唐渡りの種を手に入れて育て上げたものから種を取り、再び畑に蒔いて 育て続けておる。どうだ、見事なものだろう」

 久繁は末広がりの白い花弁を、皮の厚い指先で軽く持ち上げる。

「確かに見事な花ではありまするが、何故、父上がそのような毒の花を」

 久勝が問うと、久繁は語り始めた。

「荒井家を縛る蜘蛛の呪いを、本物とするためぞ。八重山で平氏の姫君を見殺しにしたのは荒井家の血筋の者で あるかもしれぬが、ただそれだけのことであり、荒井家が八重山に巣くう蜘蛛には仇を成したことなどない。むしろ、 叢雲山共々奉っておるわい。呪いなどありはせぬ。儂はそのようなものを信じてはおらぬ。だが、荒井家は蜘蛛に 呪われているが故に血筋を保てている節もまるでないわけではないのだ。本条藩は見ての通り、小さく貧しい藩で あり、有力な大名と繋がりを持つのはなかなかもって大変なのだ。天望の見えぬ藩に嫁ぐような女もおらず、いたと しても十万石にも届かぬ武家であろう」

 久勝が余程腑に落ちない顔をしていたらしく、久繁は少し笑う。

「それでなぜ嫁を娶れるのか、と思うたのだな? だろうな、儂も最初はそう思うたわい。ならば、先にその絡繰りを 話してしんぜよう。蜘蛛の呪いとは、女が死する呪いなのだ」

「何故でありまするか」

「蜘蛛妖怪が女だからであろう。儂にはそれ以上のことは解らぬ。だが、いかなる女であろうとも確実に死するのは 揺るぎなきことであり、死因がなんであれ蜘蛛の呪いだと断定されるのだ。つまり、だ。どこぞの武家で扱いづらい 女を荒井家に嫁がせれば、武家が名を汚すことも手を汚すことはなく、その女を始末出来るという寸法なのだ」

「では、父上。母上方がお亡くなりになられたのは、そういうことなのでござりまするか?」

「左様」

 久繁はそれまで胸の内に隠していた秘密を暴露出来るからか、どことなく清々しげだった。

「儂らは死ぬことを前提として嫁がされてきた女に世継ぎを産ませることが出来、女の方も気分が良いまま死地へと 至ることが叶うのだ。儂はマンダラゲを嗜んだことはないが、これを飲ませた女達は、皆、けたけたと笑い転げて 実に楽しそうでのう。そのうちに気を失って、そのままコロリと死んでしまう。女が死んだらば、儂はまた蜘蛛の呪いで あるぞと城の者達に触れ回る。そしてまた女を娶り、同じことを繰り返す。それが荒井家という一族なのだ」

「それのどこに、蜘蛛が関わっているのでござりまするか」

 やや声を震わせた久勝が俯くと、久繁は首を捻る。

「さあてなぁ。蜘蛛妖怪が八重山に巣くっておる、という話は源平合戦の終わり頃より語り継がれているが、所詮は お伽噺に過ぎぬし、儂も本物と出会ったことはない。だが、文句は言われまいて。こうして荒井家に連なる呪いで、 蜘蛛妖怪に箔を付けておるのだから」

「それは、その蜘蛛に対する愚弄ではござりませぬか」

「愚弄か。面白い。だが、久勝や。現世の生き物ですらない化け物に儀礼を貫いたところで、田畑が肥えるわけでも なければ藩領が増えるわけでもないのだ。使えるものは使い切らねばならぬ」

 解ったか、と念を押され、久勝は理解したと返したが口ばかりであった。正室である母親が死んだのも、側室達が 死んだのも、父親の手によって育てられたマンダラゲの毒を盛られたに違いないであろう。その衝撃たるや凄まじい ものがあったが、久繁の手前、動揺した素振りは見せられなかった。久繁は久勝が荒井家の呪いを引き継いでくれる のだと信じたからか、いつになく上機嫌になり、マンダラゲの育て方を意気揚々と説明してきてくれた。久勝はそれに 生返事で答えながら、着物の下にじっとりと滲んだ冷や汗を持て余していた。
 遠乗りの後、久勝は久繁から秘密裏に古びた巻物を与えられた。それはマンダラゲの処方を書き記した書物で、 一度にこの分量を含ませれば死ぬ、この分量にこの毒を混ぜれば奇形児が生まれる、この薬草を混ぜれば効能 が長続きする、などと多種多様な使い道が印されていた。文面だけでもおぞましいことこの上なく、すぐにでも焼き 捨ててしまいたくなったが、理性的に考えてみればまるで無益な手段でもないのだ。マンダラゲの毒が効いている間は 女は体の自由が利かず、その間はいかなることも好きに出来る。まともな体である頃に世継ぎを産ませた後に毒を 含ませて処分した後、若い女を娶るのも悪くはない。但し、家臣には含ませるなと厳命が印されていた。それもそう だろう、蜘蛛の呪いはあくまでも荒井家にだけ訪れているものであり、荒井家以外の人間が呪われてしまっては、 辻褄が合わなくなってしまう。その辺りだけ気を付けておけばどうにでも出来るのだ、と思ったら、久勝の胸中に泥水 に似た淀みがじわりと広がってきた。
 久繁から話を聞いた時はあまりにも理不尽なことであり、他愛もない言い伝えを擦り切れるまで使い潰している だけではないか、と馬鹿馬鹿しくも腹立たしくなったが、いざその呪いを十二分に活用出来る立場になれると知ると、 苛立ちやら何やらが霧散した。それからというもの、久勝は遠乗りをしてマンダラゲの畑に足繁く通い、父親の花から 取った種を植えて一から育て始めた。それまで久勝は作物を育てたことはなかったので、土から芽が出て伸びて いく様を見るのがやたらと面白く感じられ、わくわくしながら馬を走らせていった。あまりにも頻繁なので家老からは 咎められたが、久繁はそれを諌めてくれた。遊べるうちに遊ばせておいてやれ、と。
 マンダラゲの畑に通うようになってから季節が巡り、初夏から初秋へと移り変わった。誇らしげに咲いていた毒の 花々も萎れて種を孕み、蔓と葉も茶色く縮むようになった。種を集めるべく畑にやってきた久勝は、枯れた花の根を 畝から引き抜きながら、ふと、あることを思った。

「八重姫にお会い出来ぬのであろうか」

 鬼蜘蛛の八重姫。それこそが荒井家を呪う蜘蛛妖怪の名であり、与り知らぬうちに荒井家の罪を擦り付けられて いる哀れな女の名でもあった。だが、妖怪はただの絵空事であり、そんなものは人間の思い違いが生んだものだと 決まり切っている。幽霊の正体見たり枯れ尾花、である。だが、八重山に昇ったところで、山道を踏み外して谷底で 死んだ旅人の死体を見つけるのが関の山だ。しかし、空想上ではあるが憎まれている相手のことを何も知らずにいる のはずれている気がしないでもない。むしろ、敵の手の内を調べていた方がそれらしくなるのではないか。
 そう思った久勝は、マンダラゲの種が入った麻袋を腰に提げてから馬に跨った。通りすがりの農民に、八重山に 向かう、と言うと涙を流さんばかりに説き伏せられた。どの農民と出会っても反応に大差はなく、八重山に近付けば 近付くほど大袈裟になるので、久勝はなんだか本物の化け物と相対するかのような気持ちになってきた。農民達の 哀願を振り切っていくのに一種の快楽を覚え始めた久勝は、馬の足を速めた。
 八重山に入ってみると、なるほど確かに険しい山道だった。久勝は跨っている馬は山道にはそれほど慣れている わけではないので、入って間もなく下りて手綱を握ってやることにした。山道も何本かに分岐していたので、帰り道を 見失わないようにと手拭いを裂いて枝に結び付けていきながら、奥へと進んでいった。風雨に曝されて擦り切れた 布の切れ端や誰かの骨が時折目に入り、最初の頃こそ驚いたが、何度となく見つかるのでそのうちに驚きが薄れて しまった。八重山の中腹まで昇った久勝は足を止め、振り返った。麓の農村が一望出来、良い景色だった。

「さて……」

 この辺りで、大立ち回りの真似事でもしてみようか。久勝は腰にぶら下がる刀に手を掛け、思案した。鬼蜘蛛の姫 などどうせ実在しないのだから、襲われるわけもない。野党が出てきたとしたら、その時は斬り捨ててしまえばいい。 ここであれば大声を上げれば麓には聞こえるであろうし、殿の世継ぎが危険を承知で八重山に昇ったとの話も農民の 間を駆け巡っているはずだ。派手な見世物とは言い難いだろうが、それらしく思われればいい。
 抜刀した久勝は、鬼蜘蛛の八重姫がそこにいるかのような気持ちで、えいやあ、えいやあ、とひとしきり暴れて声を 上げた。わざとらしい唸りも漏らし、意味もなく枝葉を切り、土を蹴り、時には恨み言を吐き付けてみたりと、いか にも悪い輩と競り合っているような芝居を行った。そのうちに段々楽しくなってきて、気付いた頃には日暮れ始めて いた。これはいかんと刀を収めた久勝が、馬を引いて八重山から下りると途端に農民達が駆け寄ってきた。彼らは 余程久勝の身を案じていたのか、叢雲神社で祈っていた者達もいたほどだった。久勝は自分の茶番劇が通用した 喜びを感じたが、物を知らない農民達を騙したのが少し心苦しくもなった。だが、これで、久勝の掛けた呪いは盤石 なものとなった。鬼蜘蛛の八重姫が八重山に巣くっているのだと、誰もが信じるはずだ。
 後は、娶った女に毒を含ませてやればいい。





 


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