機動駐在コジロウ




毒を喰らわばサラリーまで



 ホットスナックの自動販売機から、過剰に熱した紙箱が転げ落ちてきた。
 紙箱の端を抓んで取り出し、手早くテーブルに載せてから、武蔵野は熱さを誤魔化すために手のひらをズボンに 擦り付けた。中身はタカが知れているが、こんなものでも何も食べないよりはマシだ。ホットスナックの自動販売機と 隣り合っている缶ジュースの自動販売機に小銭を入れ、コーラのボタンを押すと、冷え切った缶が転げてきたので それを取り出した。安定性に欠けるテーブルに赤いビニールカバーの丸椅子を寄せ、腰を下ろす。

「今頃、あのヘビ野郎は無事でいるだろうか」

「何、気になるん? あんなクソヘビを」

 うどんの自動販売機から出てきたうどんをテーブルに置いた伊織は、不愉快げに漏らした。箸立てから割り箸を 一本抜き、片方を口で銜えて割ってから、伊織はうどんを啜った。熱さも感じづらいらしく、湯気の昇る麺を冷ましも せずに頬張っている。うどんの上には、ぶよぶよにふやけた天ぷらと思しき物体が申し訳程度に載っていた。薄暗い 休憩スペースの片隅では、高守がカップラーメンの自動販売機で買って湯を入れた、カレー味のカップラーメンを 膝に載せて座っていて、時折壁掛け時計を見て出来上がるのを待っている。

「ドライブインっちゅうことは、ドライブにインしたっちゅうことじゃな? ほんなら、これがドライブなんじゃな!」

 ほうかほうかー、と駐車場にいる岩龍は無邪気に喜んでいた。このドライブイン自体が手狭なので駐車場も それほど面積はないのだが、岩龍以外の車両はいないので車道にはみ出ることもなく収まっている。

「道子さんのことですから、鏡一さんに一服盛ることはないでしょうが……」

 りんねは別荘の方向を見つめていたが、割り箸を両手で割り、きつねうどんを持ち上げた。高温の麺に何度となく 息を吹きかけて冷ましてから、慎重に口に含み、啜り上げた。伊織の粗野な食べ方を先に見たからか、品の良さが 際立っている。悪くありませんね、と感想を述べてから、りんねは味の付いた油揚げを一口囓った。
 船島集落と一ヶ谷市内を繋ぐ道路にひっそりと佇んでいる古びたドライブインの休憩スペースは、うどんの出汁の 効いた匂いとカレー味のラーメンの刺激的な匂いが入り混じっていた。俺も麺にすりゃよかったかな、と小さな後悔を 抱きつつ、武蔵野は薄ぺっらいハンバーグが挟まった質素なハンバーガーを口にした。バンズというには貧相な パンとハンバーグの間にはケチャップがほんの少しばかり塗ってあるだけでピクルスもオニオンも挟まれておらず、 ケチャップ以外の調味料は付いていなかった。ハンバーガーと同じ自動販売機で売っていたフライドポテトも買って みたが、これぞ冷凍食品、という歯応えに欠ける食べ応えだった。冷凍技術が昭和で止まっているのか、両者とも 湿っぽい。それでも、道子の料理に比べれば何倍もマシだ。

「ですが、これで遺産の研究が一歩前進するかもしれません」

 うどんを飲み下したりんねは、世間話でもするように語り出した。

「人間を人間たらしめているヒトゲノムは、核ゲノムは約三十一億塩基対存在し、二十四種の綿状DNAに分かれて 構成されています。最も大きいものが二億五千万塩基対、最も小さいものが五千五百万塩基対、存在しています。 染色体は二十二種の常染色体とXとYの性染色体に分類されます。核を持たない体細胞は常染色体を二本ずつ、 性染色体を二本ずつ、合計四十六の染色体を持っています。生殖細胞は常染色体を一本、性染色体を一本、合計 二十三本の染色体を持っています。ミトコンドリアゲノムは一万六千五百六十九塩基対の環状DNAを多数備えて いて、体細胞も生殖細胞も約八千個ずつ持っています。遺伝子を改造して生物に特異な能力を与えるには、その 膨大な量の塩基配列を解析し、分析し、研究し、どのように作用しているのか突き止めなければなりません」

 薄っぺらいカマボコを口にしつつ、りんねは続ける。

「伊織さんを始めとしたフジワラ製薬の関係者は、その膨大で複雑極まる遺伝子の解析を終えたばかりか、特定の 生物の遺伝子を置き換えて体内に組み込み、あまつさえ自在に変身しています。人間一人の遺伝子を解析する ためにはスーパーコンピューターが必要ですが、フジワラ製薬の資金と人員の流れから考えて、遺伝子解析のために スーパーコンピューターを社内に設置、或いは借用したという記録はありません。鏡一さんは、人格こそ褒められた ものではありませんが、ずば抜けた才覚と知性を持ち合わせております。ですが、その才能と演算能力は根本から 異なる能力ですので、鏡一さんと同等の才覚を持つ人間がいたとしても、まず不可能でしょうね」

 ちくわと同じ練り物ではあるがカマボコでは物足りないらしく、りんねは少し眉根を曲げた。

「では、どうやってフジワラ製薬は膨大な遺伝子情報を解析し、適切な箇所で切り貼りしては別の生物と合成し、 次々に強力な改造人間を産み出したのかというと、今更言うまでもないことですが、フジワラ製薬が所有する遺産、 アソウギの力に他なりません。どういった仕組みかは未だに見当も付いておりませんが、アソウギは液体であるにも 関わらず並外れた演算能力を備え、液体の内部に投入された人間と生物の遺伝子を解析し、合成し、改造人間を 生み出し続けています。ですが、アソウギはまだ真価を発揮しておりません」

「んだよ、それ。ケンカ売ってんのかよ、クソお嬢」

 アソウギを体液に置き換えている自分まで貶されたと思ったのか、伊織が凄むが、りんねはそれを無視した。

「アソウギ、及びアソウギを体内に注入している改造人間の皆様方が、つばめさんの管理者権限に接触した場合と 同等の効果を得られる錠剤を、私共の製薬会社から買い付けて摂取していても、劇的な変化は起きていないでは ありませんか。確かに人間とそうでない生物の間を行き来出来る肉体に変化したのは目覚ましいことであり、人類の 進化と発展の足掛かりになったかもしれませんが、所詮はつま先を掛けた程度です」

「その根拠は?」

 ふやけたフライドポテトを嚥下した武蔵野が問うと、りんねは武蔵野を一瞥し、うどんを一束持ち上げた。

「アミノ酸です」

「ぬ」

 りんねの言いたいことが解ったのか、カップラーメンを啜っていた高守が目を上げた。

「私達を構成しているのは全てL型アミノ酸であり、D型アミノ酸は体内に取り込まれた際に酵素によってL型に変換 されなければ取り込まれることすらありません。D型アミノ酸によって構成されている部品もありますが、L型と比較 すればそれほど多くもありません。そして、私達が日頃口にする食品の調味料に含まれているアミノ酸も当然ながら L型です。フジワラ製薬の改造人間を何人か拿捕し、その生体情報を解析させたのですが、皆さん揃いも揃ってL型 アミノ酸で構成されておりました。つまり、地球上の現住生物と大差のない生き物なのです。正直、落胆しました。 アソウギ自体は純然たるD型アミノ酸で構成されているのですが……」

 残り少なくなったうどんを啜ってから、りんねは言う。

「ですが、改造人間の方々から採取した生体組織で解明出来たことも少なからずありました。皆、アソウギの力で 切り貼りした遺伝子に隙間があるのです。その隙間に、どこの誰の遺伝子が填るのかは、それこそ皆さんには説明の 必要はありませんでしょう。そのパズルのピースさえ埋めてしまえば、皆さんは本物の改造人間になれるでしょう」

「俺が紛い物だって言いてぇのかよ!」

 いきり立った伊織が椅子を蹴り飛ばすと、りんねは冷ややかな目を向ける。

「現時点では、伊織さんは未完成です。アソウギとの融合係数の高さ、拒絶反応のなさ、身体能力の高さは秀でた ものはありますが、それらは全て伊織さん御自身が持ち合わせていた能力です。軍隊アリの遺伝子が、燻っていた 伊織さんの才能を目覚めさせてくれたに過ぎません。巨大化にしても些末な副産物であり、決定打にはなりません。 事実、コジロウさんに敗戦続きではありませんか。伊織さんが更なる高みに至るためにも、つばめさんの生体情報が 不可欠ではありますが、それ以上に鏡一さんの協力が必要です。私は遺伝子工学には長けておりませんから」

 ほとんど音を立てずにめんつゆを啜ってから、りんねは悩ましげな吐息の後に付け加えた。

「それに、鏡一さんが道子さんを利用して頂ければ、ハルノネットが持っている遺産の正体もおのずと解るという ものです。ハルノネットがほんの僅かな間にサイボーグ化技術を確立することが出来た理由も、ハルノネットが保有 している遺産によるものとみて、まず間違いないでしょう。ですが、ハルノネットは通信会社というだけのこともあり、 情報統制に長けておりますので、遺産の情報を堅牢に守り通しているのです。ですから、私達が別荘を留守にして いる間に鏡一さんが道子さんにちょっかいを出して頂ければ、さしもの道子さんにも隙が生まれるでしょうし、その 隙を通じてハルノネットの保有する遺産の情報が見出せると踏んでいるのです」

「相変わらずえげつないことをしやがるな、お嬢は。仮にも道子は部下だぞ?」

 コーラを傾けながら武蔵野が感想を述べると、りんねは油揚げを噛み締めて嚥下した後、答えた。

「部下であるからこそ、存分に利用するのではありませんか。それが上司というものです」

 りんねは油揚げを食べ終えると、残っていた麺も食べ終え、律儀にめんつゆも飲み干した。伊織はりんねの態度 が余程気に食わないのか、天ぷらうどんを食べ終えてすぐにドライブインを出ていった。せめて、空容器をゴミ箱に 捨てていってほしいものである。いつのまにかカップラーメンを食べ終えていた高守も、伊織に続いて出ていった。 武蔵野は自分もこの場を立ち去るか否かを悩んだが、安っぽい丸椅子からは腰を上げなかった。岩龍がいるとは いえ、りんねを残していくわけにはいかないからだ。それもまた、武蔵野の仕事なのだ。
 ドライブインに併設している食堂の営業時間は、午前十一時から午後八時までだ。現在の時刻は午前八時過ぎ、 店主が出勤してくるまでには一時間以上は間がある。だが、ここから移動するにしても、どこに行ったものか。都会 であれば、映画館なり何なりでいくらでも暇の潰しようがあるのだが。
 生憎、この周囲には山しかないのだ。




 予想以上のひどさだった。
 こんなものを食って生きてきた連中の気が知れない。いや、こんなものを作る奴の気が知れない。羽部鏡一は、 舌にこびり付く強烈な味に辟易しながらも、最後の皿を積み重ねた。朝食を五人分、というのはさすがにきついもの はあったが、アソウギによる生体改造の結果、摂取出来る物質がかなり限られているので、食べた量に反比例して 満腹感は少なかった。水分、塩分、糖分、それとD型アミノ酸程度しか消化吸収出来ないからだ。改造人間の味覚が ことごとく死んでいるのは、肉体がL型アミノ酸で構成されているのにD型アミノ酸にしか適応出来ない、という半端な 肉体と化した弊害である。それなのに不味いと解るのだから、道子の腕前は立派だ。無論、悪い意味で。

「あー、くそー……」

 羽部はカスタードクリーム入りオムレツのしつこさを流すため、コーヒーを呷った。苦味が感じられれば、変な甘み が中和出来るのだろうが、それすらもよく解らないのが残念だ。嗅覚まで鈍くなっていれば、道子の料理の見た目 の良さに気を取られるのだろうが、嗅覚が鋭敏なヘビと同化した身の上ではそうもいかない。
 今朝のメニューは、牛脂が芯に入っていた手作りロールパン、粉チーズかと思ったら粉砂糖がたっぷりと掛かって いたフライドポテト、甘酸っぱいクランベリーソースが存分に絡んでいるチョリソー、白ワインとすし酢のドレッシングで 和えてあったキャベツとオニオンのサラダ、カスタードクリームが中に巻き込んであるオムレツ、デザートが醤油味の ヨーグルトだった。見た目と盛り付けは本当に美しいのだがどれもこれもトンチンカンで、肝心な部分が別の料理に スライドしているような気がしてくる。そもそも、道子は甘い味付けの食べ物とと塩辛い味付けの食べ物の区別 が付いていないのではないだろうか。

「なー、みっちゃん」

 醤油味のヨーグルトを流し込んでから、羽部が声を掛けると、道子は笑顔を保ちながら振り向いた。

「はぁーいん、なんでございましょうかぁーん」

「脳味噌、吹っ飛んだことあるだろ?」

 醤油味のヨーグルトも四人分食べ終えた羽部は、スプーンを空の器に投げ入れた。道子は一度瞬きした。

「そりゃあまあーん、サイボーグになったんですからぁーん、体がぐっちゃぐちゃのミンチになった拍子に脳のどこかを 損傷したのは間違いないですぅーん。でもぉーん、さすがに吹っ飛んではおりませぇーん」

「この僕の見立てが間違いだって言うの? 有り得ないね、そんなこと」

 羽部は背もたれに寄り掛かり、両足をだらしなく投げ出した。遺伝子工学は医学にも直結しているのだから、本職 とまではいかなくともある程度は医学の知識も備えている。特に、いじくり回してきた脳については。

「重度の味覚障害、はまあ、味覚もクソもないサイボーグ化しちゃったから最早どうしようもないとして、運動手続き 障害の方はどうにかならないわけ? 料理ってのは反復学習に含まれるし、味付けってのも手慣れでどうにかなる もんじゃん。メイドを任されるってことはさ、それなりに料理をしていた経験があるってことだろ? キッチンで色々と 支度しているところも見たけど、手際は結構良かったし、動作に無駄はなかった。でも、やることが全部食い違って いるんだよ。おかげで、この僕が食べるに値しない料理を食べる羽目になっちゃったじゃないかよ」

「そういうことはぁーん、御医者様に聞いて下さぁーいん。私はぁーん、そんなことはちっとも」

 道子が作り物じみた笑顔を保って返したので、羽部は唇を曲げる。

「嘘を吐け、このクソメイドハッカー。自分のカルテぐらい、ちゃちゃっと読めるだろうが。お前さ、そういう状態なのに 治療を受けさせられるどころか、クール気取りの高飛車御嬢様に顎で使われて悔しくないわけ? この僕の忠告 なんだから、心して聞けよ。でないと、許さないからね?」

「私はぁーん、御嬢様の部下ですからぁーん」

「だとしてもさぁ、使われる主人を選ぶ権利ぐらいあるんじゃないの? この僕みたいにね」

 道子の薄ら寒い笑顔を睨み付けながら、羽部は口角を吊り上げる。設楽道子の情報は事前に調べ上げてある、 詳細なプロフィールも経歴も頭に叩き込んである。無論、それを利用してやらないわけがない。道子の過去や本名 には差して興味がなかったので深追いしなかったが、ハルノネットの緻密なネットワークが完成したのは、死の危機 に瀕した道子がサイボーグ化した直後だということは調べ上げている。それまでのハルノネットは通信会社としては 頭打ちで、安定した企業では会ったが裏を返せば停滞していた。しかし、三年前、突如としてハルノネットは今まで 以上に優れた通信電波の高圧縮技術を確立させ、世界中のどこよりも早く正確な通信を可能にした。それと同時期に 道子がサイボーグ化し、ハルノネットの社員になり、自社に仇を成す者達を倒す工作員となって働き始めた。
 そして、道子は吉岡りんねに引き抜かれ、佐々木つばめ攻略作戦に加わっている。ここまで知ってしまえば、道子に 何もないわけがないと、誰であろうとも感付く。いや、何かがなければ困るくらいだ。羽部がわざわざこの別荘に来た 目的は、りんねに取り入るためでもなければ、伊織の御機嫌取りでもなければ、内情視察でもない。

「ねえ、みっちゃん?」

 羽部は冷めたコーヒーにスプーン三杯も砂糖を入れ、掻き回した。底から、じゃりじゃりと砂っぽい音がする。

「医者が手を出しもしなかった障害、この僕の力でなんとかしてあげようか?」

「生憎ですけどぉーん、私はそういうの気にしていないんでぇーん」

 道子は椅子を引いて立ち上がると、空になった皿を積み重ねて真鍮製の盆に載せ、ワゴンまで運んだ。

「うっそだぁ」

 羽部がにやにやするが、道子はワゴンを押してキッチンに向かっていった。

「羽部さんに嘘を吐く理由もなければ動機もありませぇーん」

「じゃ、これならどうかなぁ。みっちゃんの本名を教えてあげる、ってぇのは?」

 キッチンとリビングの中程でワゴンに制動が掛かり、その反作用で皿のタワーが傾いた。道子が硬直したからだ。 だが、皿が崩れ落ちる前に手を差し伸べてすかさず受け止め、皿のタワーを直してからキッチンに入った。作りつけ の大型食器洗い機に皿を入れた後、道子は手を洗ったが、いずれの動作もぎこちなかった。気もそぞろでは、いかに 高性能なサイボーグボディといえども操縦が疎かになるからだ。
 だが、羽部は道子の本名など知らない。設楽道子、という名前がどこから来たのかも、現在の彼女の外見が誰を 模倣して作ったものなのか、ということまでは調べ切れていないのだ。落ち着いて考えてみれば、サイボーグ業界と は縁の薄い研究所勤めの羽部が、通信会社の秘密工作員の過去を知っているわけがないのだが、道子はそんな ことすらも失念するほど驚いたようだった。いい反応だ、これなら手玉に取りやすい。

「教えてほしかったら、まずはこの僕に給料を渡してくれない? クソお坊っちゃんの半額なんて足りないし」

「そんなデタラメな要求にぃーん、答えられるわけがないじゃないですかぁーん」

 道子は口調こそ余裕を保っていたが、人工眼球の視線はかすかに揺れていた。実に高性能なボディだ。

「デタラメでもないんだけどねぇ、いかなる物事にも対価は必要じゃないの。まあ、御嬢様が帰ってくるまでは時間は まだまだあるんだし、その間にじっくり考えておくといいよ。この僕が与えた猶予だ、せいぜい大事にするといいよ。 なんだったら、料理の仕込みも手伝ってあげようか? 肉を切る要領なんて、どの肉でも変わらないしね」

 羽部の軽口に、道子はむっとした。 

「そんなお気遣いは不要ですぅーん。私一人でなんとか出来ますぅーん」

 ぷんすかぷーん、と怖気立つような気色悪い擬音を発し、道子はキッチンの片付けを始めた。朝食の後片付けが 終われば次は掃除に洗濯に、と忙しく動き回るのだろう。その間も道子は決して無防備ではないし、各人の自室を 探るにしても、別荘の至るところに設置された監視カメラに見張られているので無理だろう。かといって、船島集落に 突っ込むような体力も気力もない。となれば、全力で道子の料理と戦うしかなさそうだ。
 本題に入るのは、その後だ。





 


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