酸の雨は星の落涙



第九話 落涙は累々と




 私のアリスは機能を維持している。だから、彼らの深層心理に影響を及ぼしてしまった。
 彼らの意識が惑星ヴァルハラを離脱した時点で、私は彼らの記憶を全て抹消するべきだった。だが、私はどうしても それが出来ず、思い出さずにはいられなかったのだ。記憶の再生は願望に直結していることを失念したわけではない。 所詮、私も愚かしい人間に過ぎなかった。彼らを惑星ヴァルハラに呼び寄せ、アリスと接触させ、意識を共有させ、 私自身との接触を行ったのも、全ては私が寂寥に苛まれていたからだ。惑星ヴァルハラを訪れてアリスに取り込まれて以来、 私は長らく一人だった。だから、私のアリスは私の願望を叶えてしまった。
 もう何も願うものかと決めたはずなのに、願いは次から次へと生まれてくる。妨害電波を発信して通信を遮断し、 視覚的にも情報的にも惑星ヴァルハラの存在を消失させ、孤立させたところで、私は三十年余りの生涯で既に外界を 知っているために外界への未練を断ち切れない。自己犠牲の美しさを見出せない。潔く自決するべきだと判断していても、 惑星ヴァルハラの機能を低下させるために珪素鉱脈回路と連動している肉体に外科手術を施して神経を切断しても、 尚、生きていたいと願わずにはいられない。ゲオルグ・ラ・ケル・タの深層心理を揺さぶるために交わした他愛もない約束に 縋り付き、彼もまた同じことを願っていてはくれないだろうかと思ってしまう。
 私はつくづく愚かだ。利用した相手からの同情を求めるなど、愚かの極みだ。
 恨まれてもいい。蔑まれてもいい。その主眼に捉えられた瞬間に殺されてもいい。

 彼に、会いたい。


 アリシア・スプリングフィールドの日記より




 着陸は、穏やかとは言い難かった。
 ゲオルグの腕力で辛うじて船首は持ち上げて姿勢を整えたが、大気圏に突入した際の角度があまり良くなかったらしく、 着陸脚を出して逆噴射したが間に合わずに船腹を引き摺ってしまった。セラミック外装を守るために展開したフォースフィールドの おかげで外装の破損は免れたが、船体が揺さぶられたおかげでゲオルグとエーディは衝撃をもろに受け、着陸した直後には 身動きもままならなかった。負傷しなかったのは、不幸中の幸いだろう。

「うー…」

 座席の隙間に挟まっていたエーディは、のそのそと這い出してきた。

「ゲオルグ、生きてるか?」

「問題はない」

 ベルトをしていたのにシートから投げ出されかけたゲオルグは、三本目の足を曲げて上体を起こした。

「現状を把握する」

 内臓が掻き混ぜられたかのような感覚を味わいながら、ゲオルグは外の光景をメインモニターに映し出した。エーディは 目を瞬かせながらモニターを見上げつつ、あらぬ方向に曲がったヒゲを前足で整えた。ゲオルグは一時的に焦点が乱れた主眼を 調整してから、モニターを仰ぎ見た。船首上部に設置されたメインカメラが捉えている映像は、青白く光り輝く植物が生い茂った 草原だった。着陸した際に粉々に砕け散った破片が舞い上がり、恒星光を細かく反射している。地形は平坦とは言えず、前方 数キロ先には標高の高い山があった。その山に突っ込んでいたら、今頃は二人はガイスト号と共に大破していただろう。エーディは 安堵のため息を吐き、ゲオルグに向いた。

「移動手段を考えよう。でもって、都市型宇宙船の位置を把握しねぇとな」

「格納庫に搭載した可変型戦闘機に搭乗し、移動する」

「んじゃ、ゲオルグはそいつが無事かどうかを確かめてくれ。俺は都市型宇宙船の位置を捕捉する」

 エーディは羽ばたいて管制席に戻り、レーダーを作動させるが、表示されたのはノイズだけだった。

「ん…?」

 エーディはレーダーの出力を上げるが、結果は同じだった。

「妨害電波が出てるのか? だけど、誰がそんなもんを」

「アリシア・スプリングフィールドだ」

 ゲオルグが即答すると、エーディは耳を曲げた。

「根拠もなしに断定するのはどうかと思うがね」

「ならば、我々は誰の助力によって仮想現実と思しき世界から脱せたのだ」

「そりゃあそうだが、だからって、あいつを全面的に信用するのは不用意ってもんじゃ」

 エーディがぐちぐちと零し始めたので、ゲオルグはそれを無視してブリッジを出た。おい待てよ、とエーディが追い縋って きたが構わずに格納庫に向かい、途中のロッカーで宇宙服を兼ねたセラミックアーマーを身に付けた。現役で前線に出ていた 時よりもいくらか手間取った上に、技術の進歩と共に軽量化されたはずのアーマーが重たく感じたが、生身で外に出てしまうほど 不用心ではない。ゲオルグは隣のロッカーからエーディのスペーススーツを出してやると、エーディは二本足で立って縦長の 袋に似たスーツを着込み始めた。レギア人に比べれば体格が遙かに小さいため、ゲオルグからしてみれば安っぽい合成樹脂製の 道具入れにしか見えず、武装もなければ外装も薄っぺらい民間用なので尚更だった。エーディは前足と後ろ足を袖に通して 動きを確かめ、折り畳んだ翼を収納した背面にブースターを背負った。何はなくとも、飛行能力だけは失わない仕様になっているらしい。
 エアロックを解除して格納庫に入ったゲオルグは、可変型戦闘機の損傷の有無を確かめてからキャノピーに開いた。エーディに 指示を出して格納庫のハッチを開けさせながら、水素エンジンに熱を入れると、次第に回転したタービンが唸りを上げた。両翼の 開閉も確認してから、各駆動部分も一通り動作させ、ゲオルグは操縦席に身を沈めてベルトを締めてからエーディを呼んだ。

「乗れ」

「安全運転で頼むぜ」

 ブースターを作動させて浮かんだエーディは、後部座席に滑り込んだ。ゲオルグはキャノピーを締めてから、操縦席の コンピューターと機械の脳を直結させるためのケーブルを繋ぎ合わせようとしたが、躊躇った。アリスによって見せられていた 世界では、ゲオルグは己の目ではなく計器と機械の目を通した世界だけを認識していた。将軍艦隊の旗艦の艦長席に座っている 時も、報告をモニターで視認する手間を省くためにケーブルを直結させていた。意識を失った際に引っこ抜けたから、ゲオルグは 元の現実に戻れたのかもしれない。ケーブルを繋げば、付け入られる隙を見せるだけだ。また、仮想現実に引き摺り込まれたら、 アリシア・スプリングフィールドの苦労が水泡に帰してしまう。ゲオルグはコンピューターから伸びるケーブルを荒い手付きで抜くと、 後部座席に放り投げてから前左足でペダルを軽く踏んだ。後部座席からエーディの戸惑った声が聞こえたが、手短に理由を答え、 格納庫から発進した。
 目指すは、都市型宇宙船だ。




 発進したはいいが、目的地を発見出来なかった。
 ゲオルグが計器と機械の脳を直結するケーブルを抜いたことと、アリシア・スプリングフィールドによるものと思しき ジャミングが災いし、まるでレーダーが働かなかった。痺れを切らしたエーディは何度もゲオルグにケーブルで計器と直結した 目で見てみろと言ったが、ゲオルグはその意見を聞き入れず、ひたすら目視に頼って探し続けた。最後にはエーディも根負け してしまい、ゲオルグと同じく目視で目的地を探す羽目になった。片方はサイボーグとはいえ限界があり、エーディに至っては あまり視力が良くないので見通しが利かなかった。挙げ句に、惑星ヴァルハラの地表はアルカリ結晶体の葉が生えた植物に 覆われているので、恒星光の反射で視界が遮られることも多かった。
 惑星ヴァルハラの地形は平坦ではなかった。ガイスト号が不時着した地点は比較的平らな草原だったが、細長い大陸が 途切れればひたすら海が広がり、淀みない水面を波打たせていた。航行しながら外気の成分チェックを行ってみると、案の定 生身ではとても呼吸出来ない環境だった。アルカリ性ガスの成分が検出され、飛行していくと結晶状の植物の種子が外装を 掠めて細かな傷を付け、風に舞い上がった葉が何度かキャノピーに突き刺さりかけた。水素エンジンから排出される水滴が 何粒か地表に落ちた途端、高濃度のアルカリ性物質である植物が爆発を起こした。可変型戦闘機を搭載してきたのは、やはり 正解だった。そして、あの妄想に満ちた世界がいかに生温く作り上げられていたかも思い知ることが出来た。
 四時間程の飛行の末、二人は地表に人工物を発見した。縦長の宇宙船で、都市型宇宙船にしては小さすぎる物体だったが もう一つの心当たりでもあった。ブースターを備え付けた三本の足を曲げて着陸態勢に入った可変型戦闘機は、全長百メートル にも満たない宇宙船の上に降りた。ゲオルグはキャノピーを開けてからプラズマライフルを担ぎ、エーディを肩に載せてから 操縦席から脱した。緩いカーブの付いた船体にはアルカリ結晶体がうっすらと堆積していて、踏み締めるごとにブーツの底で ぎしぎしと砕けた。エーディは全面透過型のヘルメットの下から周囲を見回していたが、ハッチを見つけて示してくれた。ゲオルグは 滑り落ちないように三本足で踏ん張りながら移動すると、円形のハッチの脇にある操作パネルを開けてボタンを叩いてみたが、 電子回路が痛んでいるのか作動しなかった。仕方ないので、ゲオルグは操作パネルをプラズマライフルで撃ち抜いてから、 その穴に手榴弾を仕込んでから身を引き、その手榴弾をプラズマライフルで撃った。爆砕した手榴弾が硫黄臭い煙を撒き散らし、 煙が晴れると、円形のハッチはひしゃげていたが開いてくれた。ゲオルグは強引にそのハッチをこじ開けて、船内に身を投じた。 船内は暗く、空気は重たく沈み込んでいた。プラズマライフルに備え付けてきたスコープライトを付けて進行方向を照らし、 一歩一歩慎重に進んだ。曲がり角に来ると目印に発光物質が入ったチューブを置いてから、前に進んでいった。狭い宇宙船だが 迷ったら時間が無駄になるし、二人の宇宙服の呼気タンクの中身は無限ではない。
 ゲオルグは何度か道を間違えたが、おかげで宇宙船の構造が掴めた。この宇宙船は中央に真っ直ぐ通路が通っていて、 その両脇に何本もの通路が走っている、節足動物の神経系統のような構造だった。だから、下手に通路を曲がらずに真っ直ぐ 進めばすぐにブリッジに到着出来たのだが、わざわざ道を外れて歩いたために時間が掛かってしまった。寄り道をしながらも ブリッジに辿り着いたゲオルグはコンピューターを作動させようとしたが、やはり電源すら入らなかった。その間にブリッジ内を 探っていたエーディは、他星系の言語が書かれたホログラフィーボードを見つけ出してくれていた。

「都合の良い代物ならいいんだが」

 エーディがボードの端にあるスイッチを押すと、黒い板から立体映像が浮かび上がった。

「当たりだ。この船の構造図だ。今、俺達がいるのは第一ブロックのブリッジだから、ええと…」

「読めるのか」

 ゲオルグには到底理解出来ない言語が並ぶ立体映像を覗き込むと、エーディはヘルメットの下で耳を曲げた。

「勘だよ、勘。読めてるわけじゃねぇよ。言語学者っつっても、俺はそんなに理詰めするタイプじゃないしな。それに、宇宙船の 構造なんて、余程のことがない限り、ブリッジがドタマでエンジンがケツに付いているだろ? だから、中央制御室があるのは 機関室からは遠くて航行の振動を受けにくい場所、ってことはつまり、この辺だ」

 エーディは丸い手袋を填めた手で、格納庫の真上にある船室を指した。その船室は他の船室に比べてスペースはあまり 広くないが、その割に壁が厚かった。エーディがボタンを操作すると、配線図と思しき図が重なり、その船室に集中していた。

「そのようだな。移動する」

 ゲオルグはそのホログラフィーボードを持ってエーディを肩に載せると、歩き出した。

「会いたいような、会いたくないような…」

 ゲオルグの歩調に揺さぶられながらエーディが呟くと、ゲオルグは作動しないドアを強引にこじ開けた。

「彼女は有能だ。よって、合流すべきだ」

「そりゃ、まあ、そうかもしれねぇけどさ」

 エーディは気のないふりをしたが、スペーススーツに覆われた尻尾はぴんと立っていた。ゲオルグはそれに気付いて いたものの、特に何も言わずに前進した。かつてこの宇宙船に乗っていた搭乗員の息吹が残る休憩室や談話室と思しき部屋を 通り抜けていくと、搭乗員の種族が朧気に掴めた。通路だけでなく、船室も全体的に天井が低く、所々に転がっている作業機械は 足が大量に付いていた。床に落ちていた家族写真を印刷したらしい金属板には、頭と胴体の区別が付けづらい形状の無数の足を 持つ節足動物が映っていた。エーディはその写真を見下ろして色々と納得したようだったが、不可解げな顔になった。

「こんな連中も宇宙に出てくるとは、凄い時代になったもんだ」

「人のことは言えん」

 ゲオルグは恐らくは中央制御室であろう船室のドアをこじ開け、ライトで中を照らすと、舞い上がった埃が光った。 青白い光の筋を上下左右に動かして様子を探ると、隅で影が動いた。ゲオルグが瞬時にプラズマライフルの銃口を挙げて狙いを 定めると、光と銃口が差した先では多脚型ロボットが立っていた。

「あら、お久し振りね」

 その声は紛れもなくヒルダだった。ゲオルグは銃口を下げてから歩み寄ると、ヒルダの意識が搭載された多脚型ロボットの 全貌が見えた。搭乗員であった多脚型節足動物の種族に比べれば足の本数は少なく、胴体も頭と腹部と後部の区別は付けられる 形状ではあったが、いわゆるゲジゲジに酷似していた。触角を思わせるセンサーを動かしてから、ヒルダは二人に這い寄ってきた。

「エドは変わらないけど、ゲオルグは随分と老化が進行したわね」

「実年齢だ」

 ゲオルグが平坦に返すと、ヒルダは細長い目を伸ばしてその肩の上のエーディを捉えた。

「はあい、エド」

「気持ち悪ぃな、近付くんじゃねぇよ!」

 エーディが後ろ足を振り回すが、ヒルダは長いマニュピレーターを出してエーディを抱え上げた。

「あんたの場合、言うことと本心が逆だってことは解っているわよ。そんなに私に会いたかったなんてねぇ。それに、 可愛いだなんて褒めてくれるとは思わなかったわ」

「今のは普通に本心だ!」

 エーディは触手状のマニュピレーターから逃れようと暴れるが、ヒルダはするするとエーディに巻き付けてきた。

「あらそう? だとしたら、もう少しまともに再会を喜びなさいよ。失礼しちゃうわね」

「ヒルダ」

 エーディをいじくり回しているヒルダにゲオルグが声を掛けると、ヒルダはやはり触手状の両目を向けてきた。

「何よ、王子様」

「君がこの星に墜落してから、どのくらいの時間が経過した」

「あの仮想現実じゃ何百年もいたような気がするけど、目を覚ましてみたら、この星に墜落してから三日も経っていなかったわ。 恐らく、仮想現実の中では時間が圧縮されていたのね。ゲームでありがちなアレよ、アレ」

 離せっつってんだろうがムシ女、とエーディが暴れるが、ヒルダはそれを無視してゲオルグに言った。

「私とエーディの場合も似たようなものだ。私は気を失ってから数秒後に覚醒し、エーディは惑星クーの連合軍艦隊旗艦 での仮眠を終えた程度だった。仮想現実での体感時間と現実の時間経過の誤差を計算出来るか」

 ゲオルグもエーディの主張を無視して言うと、ヒルダはウィンクするように片目を曲げた。

「任せておいて」

 ヒルダはエーディを持ったまま、無数の節足動物の卵が合体して組み上げられたかのような形状のコンピューターと 向き直り、足の一本からケーブルを伸ばして接続した。

「このコンピューターは完全に独立しているし、磁気嵐に突っ込んだ時にデータが破損するのを防ぐために中央管理室も 防御策が施されているし、ケーブルもアンテナも壊せるものは全て壊したし、電子回路だって私の機能を維持させるために 必要なもの以外は過電流を流して破損させておいたから、アリスというかヴァルハラには感付かれていないはずよ」

「それじゃ、ハッチが開かなかったのもお前のせいかよ」

「乙女の貞操は堅いのよ」

 何が乙女だ、とエーディが顔をしかめたが、ヒルダはそれには構わずに計算を終えてケーブルを抜いた。

「一秒が一日に相当していたとして計算すると、地球人類の時間感覚である二十四時間周期の一日で八万六千四百日を 過ごしたことになるわ。でも、私が目を覚ましてから、惑星ヴァルハラの公転周期で五年が経過していたから、それを踏まえて もう一度計算すると…」

「単純計算で二百七十万日か」

 ゲオルグが答えると、ヒルダは頷いた。

「端数を削れば、まあ、そんなところね」

「二百七十万日って、この星の自転周期だと何年だ?」

 エーディがヒルダに問うと、ヒルダは即答した。

「惑星ヴァルハラの公転周期は二十五時間で約三百日だから、それを一年として割ってみても、およそ九万年ね」

「九万年…。それじゃ、あのアリシアって女は、九万年もデタラメな世界にいるのかよ?」

 エーディがぽかんと口を開けると、ゲオルグは口元の端を歪めた。

「やはり、来るのが遅すぎたか」

「そんなことはないわよ。…きっとね」

 ヒルダはエーディをゲオルグの肩の上に戻してから、無数の足を小刻みに動かして歩き出した。

「行きましょう、ゲオルグ、エド。こうしている間にも、アリシア・スプリングフィールドは童貞男の妄想に付き合わされているわ。 さっさとなんとかしないと、九万年が十万年になって、そのうち百万年になっちゃうわ」

「いや、童貞って」

 エーディが失笑すると、ヒルダは触手状の目を上げた。

「間違いじゃないでしょ?」

「総員出撃。アリシア・スプリングフィールドの救出、及び都市型宇宙船の破壊を行う」

 ゲオルグが大股に歩き出すと、任務了解よ、と言ったヒルダが敬礼らしいポーズを取ったが、彼女を生み出した種族の 文化に基づいているため、ゲオルグには不可解な格好だった。エーディは多脚型ロボットのボディを操っているヒルダを見下ろしたが、 どうしても解せないようだった。ゲオルグにもその気持ちは解らないでもなかったが、今はヒルダのボディについてとやかく言って いる場合ではないので可変型戦闘機に戻ることだけを考えた。この一秒、一分の合間にも、アリシア・スプリングフィールドは アリスに弄ばれ、惑星ヴァルハラに囚われているのだ。戦いに焦りは禁物だと思っても気持ちが逸り、ゲオルグは駆け出していた。
 一刻も早く、彼女に会いたい。





 


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