朝靄に包まれた街に、白い影が立っていた。 柔らかな日差しの輪郭を帯びた体格は屈強でありながら静謐で、足元まで伸びたマントは一点の穢れも ない純白だった。陰りなく磨き上げられた銀色の甲冑の背に載る鞘に収まっているのは、その身長の半分は あろうかという巨大な剣だ。ここが中世時代の戦場であれば違和感は感じないだろうが、背景は朝方の 市街地で、住宅街と商店街の狭間に位置していた。騎士の他に人影はなく、しっとりとした静けさが漂っていた。 背の鞘から剣を抜いた騎士が車道に歩み出すと、朝刊を満載した原付バイクが慌ててブレーキを掛けた。 バイクに跨っていた新聞配達員は人間に似たシルエットだったが、朝靄が薄らぐと人間型の怪人だと解った。 その両腕は原付バイクのハンドルに融合していて、新聞を捌いているのは背部から伸びた金属の触手だった。 原付バイクのマフラーから規則正しい排気音が零れる中、銀色の騎士が剣を構えた。 「……怪人め」 「誰だ貴様は!」 いきなり現れた不審者に叫び返したのは、機械融合能力を持ったナノマシン怪人、ユナイタスだった。 「我が名は神聖騎士セイントセイバー! 聖なる剣を受け、神の名の下に浄められよ!」 銀色の騎士は十字架を模った長剣を振り翳し、朝靄を切り裂いた。 「なんだよいきなり、人の仕事の邪魔すんじゃねぇよ!」 ユナイタスは鈍色の体をぐにゃりと伸ばして原付バイクに融合させると、バイクを取り込んで下半身に変え、 両腕を変化させてマシンガンを形作ると、銀色の騎士目掛けて無数の弾丸を撒き散らしながら喚いた。 「何がなんだかさっぱりだが、とりあえず死ねぇっ!」 「世界の歪みから生まれ落ちし穢らわしき命よ! 今、ここに!」 マントを翻しながら駆け出したセイントセイバーは、アスファルトを砕く弾丸の雨を避け、身軽に跳躍した。 「神の裁きを与え給わん!」 翻るマントで朝日を遮った銀色の騎士は、ユナイタスの頭上に及び、躊躇いもなく長剣を振り下ろした。 ぎぐぇ、とユナイタスの潰れた悲鳴が漏れたが、それを気にせずに銀色の騎士は全体重を掛けて両断した。 剣先がアスファルトに届くと、ユナイタスが下半身に融合させていた原付バイクもまた破壊され、タンクが割れた。 弾痕が散らばったアスファルトには、強烈な刺激臭を伴ったガソリンがじわりと広がり、騎士のつま先を汚した。 「いやあ、お見事お見事ぉ」 人気のない路地裏から顔を出したのは、カメリーだった。 「これで何体目かしらねぇ、怪人を倒しちゃったのは」 「四十七体目だ」 神聖騎士セイントセイバーは、その名に相応しい十字架が刻まれたバトルマスクにカメリーを映した。 「君の情報は常に正しいな、カメリー」 「そりゃあ、あんたの支払いがいいからよ。金さえくれたら、俺はいくらだって何だって教えてやるさね」 カメリーは肩を揺すって笑うと、セイントセイバーは軽く跳ねて街灯の上に降り立った。 「事後処理を頼む」 「そりゃあもう。あ、でも、別料金よ」 「構わない。請求書を寄越してくれ」 それだけ言い残したセイントセイバーは手近なビルの屋上に飛び移り、銀色の矢と化して朝靄に消えた。 カメリーはセイントセイバーからの注文通り、真っ二つにされた原付バイクとユナイタスを歩道に移動させた。 道路一面に散らばってしまった朝刊と広告も掻き集め、気を失っているユナイタスの傍にばさばさと積み重ねた。 少し汚れたが充分読める朝刊を一部取って脇に抱えたカメリーは、足先でユナイタスの半身を仰向けに転がした。 「う、ぐぅがぁ……」 ユナイタスは金属製だが柔らかな右腕を伸ばし、カメリーのサンダル履きの足に絡み付けた。 「お前……怪人だろう! それなのに、なぜ、ヒーローに手を貸すんだぁああっ!」 半分だけの顔を持ち上げて叫んだユナイタスに、カメリーは新聞の代金である小銭を投げ落とした。 「そりゃあ決まってんでしょ、俺は情報屋なのよ。金さえもらえば、誰にだって何だって伝えてやるのが仕事よ」 カメリーはユナイタスを振り解いてから、ひらひらと手を振って歩き出した。 「まあ、爆砕してないから死んじゃいないだろうけど、ちゃあんと歩いて帰るんだよん」 背中を丸めた姿勢で歩くカメリーの後ろ姿は程なくして見えなくなり、ユナイタスは半分の顔で歯噛みした。 普通に切断されただけでは、ユナイタスの肉体は傷すら付かない。ナノマシンを密集させて造り上げているからだ。 だが、セイントセイバーは、斬撃と共に衝撃波を放ったらしく、切断面からぼろぼろと破損したナノマシンが零れた。 怪人仲間に連絡しなければ、と思ったが、体に融合させて内蔵していた携帯電話はどろりと溶けて崩れ落ちた。 最後まで諦めるもんか、とユナイタスが這いずっていると、反対側の歩道を通ってきた自転車が急ブレーキを掛けた。 「……ユナイタス?」 その声にユナイタスが単眼を上げると、車道を横切って大神がやってきた。 「総統ぉおおおー!」 ユナイタスが安堵のあまりに溶けかけると、大神は歩道に自転車を止めてからユナイタスの傍に屈んだ。 「どうした、何があったんだ」 「俺にも解りません。ですが、俺を斬ったのは、セイントセイバーで……」 「大人しくしてろ、すぐに助けを呼んでやる」 「ですが、総統はバイトが」 「部下の一大事に、バイトなんて気にしてられるか!」 大神は携帯電話を取り出し、レピデュルスに連絡を取った。その様を見上げ、ユナイタスは悔しさに打ち震えた。 完全な不意打ちだったとはいえ、ヒーローを相手に攻撃することも出来ずに両断されて一瞬で敗北した。そればかりか、 カメリーも引き留められなかった。そして最後に、新聞配達が出来なければ家賃が間に合わない。ただでさえ滞納しがち なのに、これ以上滞納してしまってはジャールの社宅と言えども追い出されてしまうだろう。そうなれば、路頭に迷ってしまう。 焦りに駆られたユナイタスは、大神のジーンズを履いた足に絡み付いた。 「総統!」 「なんだ、どこか痛むのか?」 携帯電話を閉じた大神に覗き込まれ、ユナイタスは泣きかけながら喚いた。 「やっ、家賃、後一ヶ月待って下さい! で、でないと俺マジでヤバいんすよっ!」 「あー、そういえば……」 大神は携帯電話をジーンズのポケットに突っ込むと、苦笑いした。だが、ユナイタスは家賃滞納の常習者だ。 性格がルーズな上に浪費が激しく、以前住んでいたアパートは家賃を半年以上滞納した挙げ句に追い出された。 社員割引がある社宅の家賃でさえも滞っている始末で、毎月分をきっちり払っていたのは最初の数ヶ月だけだ。 社宅の管理者でもある大神からすれば、これ以上滞納を許すべきではないのだが、当の本人が真っ二つでは。 「お願いしますっ、半分になっててもちゃんと戦いますからっ! ミラキュルンでも何でも抹殺しますからぁあっ!」 大神の足をがくがくと揺さぶるユナイタスは、レンズに似た単眼にオイルの涙を滲ませた。 「と、とりあえず、今は体を治せ、な?」 大神は半泣きになったユナイタスを慰めながら、散乱した新聞と壊れた原付バイクを見やった。 「……弁償費用は、経費で落とすしかないか」 「あああでででも、びょ、病院は勘弁して下さいマジでマジで! つか俺金出せませんってマジで!」 「解ったよ。今日の分は俺が立て替えてやるから。体が半分のままじゃ、仕事をしようにも出来ないからな」 病院に行くことすら渋るとはどれだけ金がないんだよ、と大神はユナイタスに呆れたが、物悲しくなった。 社員達に金がないのはひとえに悪の秘密結社ジャールの給料が安いからであり、貯金が難しい理由もそれだ。 大神はコンビニのアルバイトの給料と取締役の給料をもらっているが、後者は天引きして経営資金に回している。 アルバイトの給料は生活費に回しているが、大神家は土地成金なのでそれ以外の収入も多く生活には困らない。 名義は父親から大神に変更されているがそれらは全て家に回し、出来る限り自給だけで生活するようにしている。 それもこれも社員達の実態を理解するためだが、節度を弁えているのでユナイタスほど困窮したことはない。 世界征服さえ出来れば、会社全体の収入も一気に上がり、社員達に行き渡る給料の額も跳ね上がることだろう。 しかし、次の決闘で投入する予定だったユナイタスは当分戦うことなど出来ず、二三日は働くことも難しい状態だ。 これまでにも求人誌や情報誌に広告を掲載して求人を行ったが、成果は芳しくなく、社員の数もあまり増えていない。 ならば、強硬手段に出るしかない。大神はすっくと立ち上がり、朝靄の晴れつつある街並みを見上げ、決心した。 人間を引き入れ、怪人に改造してしまうのだ。 翌日。大神、もとい、暗黒総統ヴェアヴォルフは緊急役員会議を開いた。 ヴェアヴォルフと四天王と名前だけは参謀のツヴァイヴォルフも参加したが、議論に加わる様子はなかった。 それどころか、最初からやる気がない。持参したPSPで黙々とゲームをしていて、顔を上げる気配すらなかった。 事態は割と深刻なのに、ツヴァイヴォルフの無遠慮な態度に苛立ったヴェアヴォルフは弟からPSPを取り上げた。 セーブもせずに電源を切ってヴェアヴォルフの机の引き出しに放り込むと、さすがにツヴァイヴォルフも観念した。 社内から耳障りな電子音が消えたので、ヴェアヴォルフは役員会議らしい空気に仕切り直すために咳払いした。 机のないツヴァイヴォルフ以外は自分の机に着いていて、そのツヴァイヴォルフは応接セットで横柄に座っていた。 「これより、緊急役員会議を始める」 ヴェアヴォルフが五人を見渡すと、書記であるアラーニャがその発言を書面に書き留めた。 「我々悪の秘密結社ジャールは、世界征服を目的として活動を行ってきた」 「成果ゼロだけどな」 半笑いのツヴァイヴォルフが茶々を入れると、レピデュルスが艶やかな複眼を向けた。 「何を仰いますか。我らの戦いはこれからなのですぞ、坊っちゃま」 「そうだ、レピデュルスの言う通りだ。我らの宿敵である純情戦士ミラキュルンは色々な意味で面倒臭い相手だが、 決して諦めずに戦いを挑み続けていれば、いつか必ず突破口を見つけ出せるはずだ。だが、我らの栄光ある前途を 阻む存在がもう一人現れてしまった」 ヴェアヴォルフが拳を固めてその名を宣言しようとすると、パンツァーが口を挟んだ。 「そいつぁ、芽依子がやたらめったら執心してるっちゅう音速戦士マッハマンのことかい?」 「あ、あー、それもそうなんだけど、もっと厄介なのがいるんだよ、最近は」 話の腰を折られたヴェアヴォルフは総統らしい態度を作りきれず、口調を崩した。 「ほら、お盆の終わり頃にド派手な戦いをしたヒーローがいただろう? 神聖騎士セイントセイバー。敵対する 悪の組織を持たないヒーローで、よく言えばフリーで悪く言えばゲリラなんだが、ここ一ヶ月だけでそのセイントセイバーに 倒された怪人の数が半端じゃないんだ。だが、特定の組織の怪人を狙っているわけじゃなくて、手当たり次第に倒している ようなんだ。こう言うのは何だが、怪人専門の通り魔だな。これまでは、うちの社員達はセイントセイバーに会わずに 済んでいたんだが、昨日の朝方、ユナイタスが襲われてしまった。ナノマシン怪人だから少々のことでは死なないが、 当分は戦闘不能だ。おかげで、ミラキュルンに差し向けるための怪人の頭数が減ってしまった」 ヴェアヴォルフはまた仕切り直すため、厚い胸を張って腕を組んだ。 「そこで、ユナイタスの穴を埋めるため、社員増員のため、そして戦力増強のために、新たな作戦を展開することにした。 その名も人間改造計画だ!」 「あ、何それ、つかマジ悪っぽいし」 初めて興味を持ったのか、ツヴァイヴォルフはわくわくした様子で身を乗り出した。 「つことは何、人間捕まえてきて怪人にするわけ? てか、マジ拉致っちゃう?」 「馬鹿かお前は」 ヴェアヴォルフは真顔になり、弟を諭した。 「そんなこと、するわけないじゃないか。犯罪だぞ。求人広告を出すだけに決まっているじゃないか」 「うわ地味すぎ。てか、犯罪犯さねーなんて悪の組織じゃなくね?」 途端に興味を失ったツヴァイヴォルフに、アラーニャは四つの目を閉じてウィンクしてみせた。 「そういうのってぇ、地味なくらいが丁度いいのよぉ」 「しかし、今時の若ぇ連中は大人しく改造手術を受けてくれやすかねぇ」 ファルコが首を捻ると、ヴェアヴォルフは椅子に腰を下ろした。 「そうなんだよなぁ。改造手術と一口に言っても種類があるわけだし、審査もあるし、雇用者の一存で決められる ことじゃないしな。最近は法律が変わったせいで、最後の最後で嫌だと言われたら手術を止めざるを得ないこともあるし、 改造される怪人体だって本人が合意したものに限られているから、俺達が好き勝手に決めた怪人体に改造するって ことは出来ないしなぁ」 「ですが、あまり見た目の良い怪人体を選ばれてしまいますと、手術費が馬鹿になりませんぞ」 レピデュルスが懸念を示すと、ヴェアヴォルフは椅子の後ろで尻尾の先をぱたぱたと振った。 「そうなんだよ。でも、いざ改造されるんだったら、誰だって格好良い方がいいんだよなぁ……」 「あのぉ」 すると、唐突に六人の誰でもない声が割り込み、更衣室のドアが開いた。 「ホントマジすんませんっした」 誰もいないはずの更衣室から出てきたのは、髪がぼさぼさで服も乱れた若い男で酒の匂いが漂っていた。 その顔を見たヴェアヴォルフは目を疑ったが、何度見てもアルバイト先の同僚である中村了介に違いなかった。 余程深酒をしていたのか、顔色は悪く目付きも怪しく、ジーンズからはベルトが垂れてシャツの裾がずれている。 だが、中村はヴェアヴォルフの会社は知らないはずだ。体毛の下からは、嫌な汗がじわりと滲み出してしまった。 「おや、目を覚ましたのかね」 戸惑う皆を横目に、レピデュルスが立ち上がった。 「いやホントすんませんっした、てか、ここ、どこっすか?」 中村は状況を理解していないのか、力のない足取りで更衣室から出てきた。 「え、あー……?」 ツヴァイヴォルフは目を丸めていたが、間を置いてから理解した。 「あ、そっか! 俺も兄貴も家から着替えてきたから、更衣室使わなかったんだ! だから気付かなかったんだ!」 「レピデュルス、その若いのは何なんだ?」 パンツァーが中村を指すと、レピデュルスは雑居ビルの入り口を指した。 「昨日、私は退社して帰宅し、夕食を終えて風呂を上がった後に、私の最大の武器であるレイピアを忘れてしまった ことに気付いてね。本社の鍵は持っていたので、レイピアを取りに戻ってみると、階段の入り口で彼が寝入っていたのだよ。 何度か起こしたのだが一向に目覚めず、かといって警察に連絡するのも面倒で、しかし、赤の他人を私の自宅に上がらせる のは気が進まないので、社内に放り込んでから帰宅したというわけなのだよ」 「面倒見がいいのか悪いのか解らないな」 ヴェアヴォルフは部下の対応に微妙な気分になったが、今はそれよりも中村の方が重要だった。 「中村。なんでもいいから、早くここから出て行け」 「大神じゃん。てか、何やってんの、その格好マジウケんだけど」 けたけたと笑い始めた中村に、ヴェアヴォルフは口元を引きつらせたが堪えた。 「貴様は何か勘違いをしているようだ。我が名は暗黒総統ヴェアヴォルフ、悪の秘密結社ジャールを統べる邪悪の 権化たる男であり、いずれ世界を手中に収める者だ!」 「大神じゃん。大神剣司。つかなんだよそれ、今時そんなの流行んねーって」 「……まあ、俺が誰かはこの際どうでもいいから、とにかく早く出て行ってくれ。でないと、お前は改造人間になるぞ」 中村を言いくるめることを諦めたヴェアヴォルフがドアを指すと、中村は笑いを収めた。 「カイゾウ?」 「そうだ。改造人間だ。物の勢いで改造されちまうのは、いくらお前でも嫌だろう」 「いいじゃん、てかしてくれよ! 俺さ、もう嫌なんだよ!」 中村はヴェアヴォルフに詰め寄り、肩を掴んできた。近付かれると、尚更酒臭かった。 「大学出て就職したけど一ヶ月もしないで辞めちまったし、そのくせやりたいことなんてちっとも出来てねーし、今は バイトで食い繋げてるけど長く持つわけねーし! だからさ、俺、何でも良いから資格が欲しいんだよ!」 「……そう、なるのか?」 怪人になることは社会に通じる資格なのか、とヴェアヴォルフは悩みかけたが、中村に揺さぶられた。 「なあ、頼むよ大神! 俺、半端な自分がマジで嫌なんだよ! なんでもいいから、俺を変えてくれよ!」 「どうする、お前達?」 ヴェアヴォルフが四天王に意見を求めると、ツヴァイヴォルフがいい加減に答えた。 「すればいいじゃん、改造。つか、本人がされたがってんだし」 「なあ、俺を怪人にしてくれよ、大神!」 中村に懇願され、ヴェアヴォルフは数秒間迷ってから中村を引き剥がした。 「解った。だが、その前に、一つ正しておきたいことがある」 中村を押しやったヴェアヴォルフは、両腕を広げて高らかに叫んだ。 「二度目になるが、我が名は暗黒総統ヴェアヴォルフ! 悪の秘密結社ジャールの総統にして、世界を支配するに 相応しき存在! 愚かな人間共よ、死を逃れたくば我らに跪くがいい!」 ふはははははははは、と締めの高笑いを放ったヴェアヴォルフに、中村は再度吹き出した。 「やっぱ大神じゃん」 中村の笑いが伝染してしまったのか、ツヴァイヴォルフが尻尾を派手に振り回してげらげらと笑い転げた。 ヴェアヴォルフはポーズを決めたまま、二人の軽薄な笑い声を浴びていたが、次第に羞恥心に襲われてしまった。 こんなことに負けるのは暗黒総統に相応しくない、と思い、二人を振り切るように大股に歩いて自分の机に戻った。 それでも二人は笑い続けていたので、ヴェアヴォルフは闇色の炎を操る必殺技であるベーゼフォイアを最低出力で 放って強引に黙らせた。気を取り直して会議を再開し、その場の流れでなんとなく決定してしまった中村了介の 改造手術以外の議題も四天王と入念に話し合った。 当初の予定通り、昼休み前に会議は終了した。 09 9/4 |