墜落してから、幾多の年月が過ぎた。 ゼンが意識を取り戻すと、ワン・ダ・バは姿を変えていた。酸素と水素と窒素が豊富な空気は物足りなく、脳内に 硫黄が回らない。見慣れぬ色合いの植物が蔓延り、宇宙怪獣戦艦の巨体を覆い尽くしている。有機と無機の混じる 堆積物がうずたかく積もり、ワン・ダ・バの胴体は火山に貫かれていた。生体活性が万全ではない肉体は重く、意識も まだ定まっていなかったが、ゼンは己の機能を理解していた。ワン・ダ・バを再起動させなければ。 茶色の土には硫黄は乏しく、緑色の植物は柔らかく、ゼンの記憶に中にある故郷とは異なっていた。実体験では ないので、厳密には故郷とは言えないかもしれないが。太く硬い幹は土に近い色合いで、広葉の隙間から注ぐ恒星の 光は紫外線がかなり弱まっていた。可視光線が青に限定されるほど大気圏が分厚いために、宇宙線がほとんど 弾かれているようだ。足元には湿った落ち葉が積み重なり、踏み締めるたびに泥水がぐじゅりと滲み出す。重力は 軽く、自重も本来のものと大差はない。だが、致命的に硫黄が足りない。そのせいで数分歩いただけで息が切れ、 ゼンは尻尾を垂らして座り込んだ。腰を下ろした倒木からは小さな現住生物が飛び出し、素早く逃げ出していった。 硫黄さえあれば、呼吸も楽になるのだが。ゼンは生体情報を改造しようと尻尾を上げたが、ゾゾの記憶の中にある はずの生体改造技術が欠けており、掲げた尻尾をどこに突き立ててどうすればいいのか解らず終いだった。ゾゾは 記憶を与えてくれたと言っても、必要最低限に過ぎなかったのだ。生体部品は科学者ではない。だから、技術など 持っている意味がない。程なくしてゼンはそう理解したが、息苦しさだけは耐えられない。懸命に空気を吸って肺を 膨らませても、硫黄が足りない。だが、動かなければ。ゼンは這い蹲り、水を含んだ枯れ葉が溜まった地面の腹を 擦り付けながら、かなりの時間を掛けて木々の間を抜けた。枝葉が途切れると頭上から鮮烈な日差しが降り注ぎ、 塩の匂いが鼻腔に滑り込んできた。ざあざあと波音が聞こえ、驚くほど青ざめた海が眼下に広がっていた。宇宙の 暗黒とも、居住臓器の赤黒さとも、珪素の色とも異なる、鮮やかな色彩だった。赤い単眼を見開いて凝視していると、 有機的な潮風に混じって慣れた匂いが届いた。それは、ゾゾの匂いだった。 日差しの下で体を温めたゼンは、長い時間を掛け、生体改造は出来ずとも硫黄が極端に少ない空気を吸気して 脳内硫黄を僅かばかり得られた。起き上がれるほどに回復した頃には、高い位置に浮かんでいた恒星が水平線 に没して辺りは暗くなっていた。原始的な虫の鳴き声が草むらの至るところから聞こえ、小さな虫が羽ばたいて視界 を遮る。中にはゼンの血液を吸おうとした虫もいたが、分厚い肌に口を突き立てられずに退いていった。この惑星の 衛星に反射した陽光は青白く、昼間のような暑さはない。だが、光量としては充分だ。単眼の瞳孔を拡張させたゼン は森に沿って海岸沿いを歩き、ゾゾの匂いの発信源を目指した。足の裏に触れる砂は硬いが珪素の硬さではなく、 カルシウムの凝結物に似ていた。衛星の反射光を帯びてほの白く光る砂浜に、同じ顔の男が立っていた。 「おや、ゼン。御無事でしたか」 ゾゾはゆらりと尻尾を振って振り向き、携えていたカ・ガンを操作した。 「ここはどこなんだ」 ゼンが問うと、ゾゾはカ・ガンを擦って滑らかな平面に表示される計算式を見た。 「それがですねぇ……。乖離可能空間には打って付けの宙域なのですが、何分、母星からは遠すぎまして、連絡の 付けようがないんです。近くの宇宙には恒星間航行技術を使用した痕跡もないですし、どうやら、我らナガームンの 手が及んでいない星系だったようです。少々硫黄の量は少ないですが、私の生存活動には問題はない環境ですし、 救難信号を発信し続ければ、いずれ他の宇宙怪獣戦艦が感知するでしょうが、いつになることやら」 「墜落してから、どれほどの時間が経過したんだ」 「ワンの頭部も欠損していますし、脳も休眠状態にありますので、正確な時間までは割り出せませんが」 ゾゾはカ・ガンをなぞって新たな計算式を表示させ、考え、答えた。 「単純計算で、十ミグイは経過していますね。この星の公転周期も自転周期も恐ろしく早いので、ワンの体内時計が すっかり狂っているので計算は完璧とは言い難いですが、ワンの体の上に蓄積した有機物と植物の成長の度合い から見て、スットゥミグイ程度の時間ではありませんね。となると……任務は失敗なのでしょうか」 「そうなのか」 「そりゃそうですよ、総督閣下が命じた研究の期限は十スットゥミグイなんですからね。ですが、このまま任務を放棄 するのは気分も良くありませんし、総督閣下がどう思われるやら。期限は当の昔に過ぎてしまいましたが、やるべき ことはやらなければなりませんね。しかし、ワンの欠損部分が多いですね。自己再生能力を使うにしても、ワン自体の エネルギーが欠けていますし、頭部は換えが利きませんし、縫合手術をするにしても時間が掛かります。となると、 ワンの肉片を探してきて頂いた方が手っ取り早いかもしれませんね。ですので、ゼン」 ゾゾはおもむろに尻尾をゼンに突き立てると、その腹部を切り裂き、ヴィ・ジュルをごろごろと摘出した。 「近隣の陸地や海底に沈んでいるであろう、ワンの肉片を回収してきて頂けませんか」 「ヴィ・ジュルで何をする気だ」 ゼンは痛みを感じていたが顔には出さず、淡々と切り裂かれた腹部を押さえて傷口を塞いだ。 「ワンの生体電流を増幅させて、どうにか連絡するんですよ。よろしくお願いしますね」 ゾゾはゼンの体液が絡み付いた十個のヴィ・ジュルを両手と尻尾で抱えると、足早に立ち去った。ゼンは両手に 付いた血液混じりの体液を弄んでいたが、迷わずに海中へと進んだ。波を掻き分けながら浅瀬に入ると、両足から 尻尾、背中から肩、ついには頭部まで海に浸ったが、呼吸は妨げられなかった。水中でも活動が可能な生体機能は 元々備え付けられていたし、大抵の状況に適応出来るようになっている。砂浜と同じ材質のものが堆積している 浅瀬を歩きながら、ゼンは分厚い闇に浸る海中を凝視した。多数の現住生物が泳ぎ回っていたが、浅瀬の一角で 森のように栄えている生物の一団が目に付いた。一見すれば植物に似ているが、れっきとした生物だった。石灰質の 刺胞生物で、光合成して生み出した酸素を海中に広げていた。淡い朱色の植物に似た生物を横目に見、ゼンは ワン・ダ・バの生体反応がある方向を目指した。深い海溝を泳いで渡り、海流に逆らい、何も考えず、何も感じず、 ただひたすらに前に進み続けた。疑問もなければ躊躇もなく、目的を果たすことしか頭になかった。 生体部品だからだ。 ワン・ダ・バの元を出発してから、地球時間にして数週間後。 ゼンは、小さな島に上陸した。ワン・ダ・バの肉片と思しき生体反応は、脳神経が痺れそうなほど鮮烈で、ゼンが 求めるものは間違いなくすぐ傍にある。刺胞生物の骨格が砕けて堆積した砂浜には海水の筋が付き、太い尻尾を 引き摺りながら歩く。島自体はとても狭く、居住臓器の半分もない。白い砂浜に囲まれていた岩山が目に付いたが、 それ以外には何もなく、現住生物の気配もない。ワン・ダ・バの生体反応が最も強いのは岩山の内部だった。ゼンは 辺りをぐるりと見渡し、岩山の入り口らしき穴を見つけた。穴に通じる傾斜の付いた斜面にいくつかの岩が転がって いて、それ自体からもワン・ダ・バの生体反応は感じ取れたがかなり劣化していた。風雨に曝されていたためと、 落下した際の過熱が原因だろうが、これは持って帰ったところで意味はない。程なくして岩山の入り口に至ったゼン は、裂け目のような狭い入り口に大柄な体をねじ込んだ。苦労したのは最初だけで、中に入ってしまえば思いの外 楽に進むことが出来た。一本道で分かれ道もなく、進むに連れて水と思しき匂いが鼻を掠めた。今し方まで浸って いた海水とは違い、有機物の少ない淡水の匂いだった。 背後から僅かに差し込んでくる陽光を光源にして、最深部に至ったゼンが目にしたのは地底湖だった。一見すると 狭い水溜まりにも思えるが、狭いのは露出している水面だけで、水に顔を浸して覗いてみるとかなり深いようだ。 ゼンの身長を容易に越える水深で湖底も広く、出口を確かめて潜らなければ適応能力の高いイリ・チ人と言えども 溺れてしまかねない。ゼンは瞳孔を拡張して光量を調節してから、水面に身を投じた。 肺の中に新しく満たしたばかりの空気を吐き出しながら泳ぎ、ワン・ダ・バの生体反応が濃厚な岩に囲まれている 地底湖を進む。岩の合わせ目を観察したゼンは、この島自体がワン・ダ・バの肉片で出来ていることを察した。どの 岩に触れてみても生体反応がある上、地底湖を成している水にもワン・ダ・バの生体反応がたっぷりと溶けている。 岩山に見えたのは、この惑星に墜落したワン・ダ・バが本能的に発動した生体保護機能が、一時的に全ての生体 組織を石化させたからだと判明した。この分だと、ゾゾが止まっているワン・ダ・バの本体も同様だろう。火山が胴体を 貫通しても生命活動は継続しているが、生体保護機能が発動しているとなると万全とは言い難い。彼と長年合体 していたため、ゼンにはワン・ダ・バの状態は手に取るように解るようになっていた。岩の欠片を口に含んで入念に 生体情報を確認してみると、大気圏摩擦で負傷した際にワン・ダ・バは頭部に収めていた重要な生体情報をいくつか 欠損していることが判明した。これでは、ワン・ダ・バの肉片を回収しても元には戻せない。かといって、手ぶらで 帰るのは命令に反する。今後の行動についてゼンは思考しながら、小さな肉片を嚥下し、更に深く潜った。 光の差さない湖底が視界に入ると、人工物が現れた。直線的な屋根、均等な厚さの壁、赤い塗料を塗られた柱、 ゼンの体格の半分以下しかない小さな入り口。鍾乳石のように尖った岩の間を擦り抜けたゼンは、出来る限り目を 見開いて人工物の中を凝視した。大きさに見合った規模の空間には、現住生物の死体が横たわっていた。枯れた 草の茎を編んで作った薄い敷物の上に、白い布を頭部に巻き付け、黒い布地の袖の長い服を身に付け、五本の指 が生えている手を胸の上で合わせ、小さな玉を繋ぎ合わせた装飾品を携えて二つの目を閉じていた。低温の水中で 保存されていたからか、腐敗している様子はない。皮膚は青ざめて血管が透けており、瞼は眼球に貼り付くほどの 薄さだった。装飾品を持つ手も骨の形状が解るほどに痩せていて、白い布の下に隠されている首筋も同様だが、 ゼンは訝った。湖水にかすかな揺らぎがある。ゼンの鼓動とは違うもので、現住生物の死体の周囲だけは水温が 微妙に高かった。だが、生きているとは到底思いがたい。ゼンは好奇心に駆られて尻尾を入り口から滑り込ませ、 現住生物の死体の皮膚に触れさせると、弛んだ肌が僅かに引きつった。石の小屋の壁には現住生物の言語らしき 文字が刻まれていたが、ゼンには読み取れなかった。 薄っぺらい瞼が音もなく動き、眼球が現れた。現住生物の死体は布を揺らしながら首を上げると、ゼンを見咎め、 痩せた頬を少しだけ動かした。声もなければ生体電流も感じ取れなかったが、それが諦観したのは理解した。現住 生物の死体は再び首を下げて横たわると、また手を合わせて胸の上に置いた。 起き上がったからにはこれは生きているのだろうか。だが、死んでいるとしか思えない外見だ。判断を付けかねた ゼンは、尻尾を再び差し込んで死体の腕に絡めると強引に引き摺り出した。寝床から引き剥がされた死体は湖底に 投げ出されると、戸惑いを顔に貼り付けてゼンを見上げてきた。ゼンは現住生物の死体だと思われる者の衣服を 掴むと、有無を言わせずに地底湖から出して外に向かった。薄暗く狭い場所だから、判断が付けかねたのかも しれない。ならば、日差しの下で改めて判断すればいい。死体なのか生体なのか定かではない者はゼンの腕を 振り解こうとするも、腕力が違いすぎた。細長い穴を通り抜けて外界に出、鮮烈な陽光を受けると、現住生物の 死体なのか生体なのか定まらない者は黒い袖で顔を覆って身を縮めた。 「お前は生きているのか、死んでいるのか?」 ゼンは問い掛けるが、死体か生体か解りかねる者は答えなかった。言葉が通じていないのか、と判断したゼンは 尻尾を上げてその者の頸椎に突き立て、神経を通じて脳内の情報を採取し、改めて問い掛けた。 「お前は生きているのか、死んでいるのか?」 「うらは生きてはおらん。ただ、死ねぬだけ」 袖に隠した口元から水を吐き出してから、それは言った。声色は弱々しいが高く、若い女だと解った。 「ならば、なぜ水の中にいた」 ゼンが問うと、死体のような若い女はゼンを正視せずに答えた。 「水にあらず」 「だが、あれは水だ。液体だ。生存活動に適した場所ではない」 「何事も求めんがため」 「答えになっていない」 「今生に答えなどあらず」 死体のような若い女はゼンに背を向け、洞窟に戻ろうしたので、ゼンはその袖を掴んだ。 「待て。お前が死ねぬというのなら、なぜ水に浸り続ける」 「悟らんがために」 「何をだ」 「何も悟れぬということを」 「意味が解らない」 ゼンが困惑すると、死体のような若い女は目を伏せた。 「ほれを解らねば、悟りには通じぬ」 「言っていることには全く意味が解らないが、なぜ死ねぬのか」 「ほれは、御仏が下した罰ね」 「何の罰だ」 「人の身でありながら人に近しいモノの肉を喰らうた罰だ。故に、この身は朽ちぬ定めにある」 彼女の答えにゼンは更なる混乱に陥ったが、採取した生体情報からワン・ダ・バの生体情報を検出した。恐らく、 何らかの方法で彼女はワン・ダ・バの肉片を体内に取り込んでしまった。普通は免疫で弾かれるところだが、不幸 なことに生体情報の相性が恐ろしく高かったために吸収された結果、不老不死が与えられてしまったようだった。 「それは罰ではない。超自然的な生体改造による結果だ」 ゼンが言うと、死体のような若い女は不可解そうに眉根を曲げた。 「罰ではないのか?」 「違う。事故と言うべき出来事だ」 「事故……?」 死体のような若い女は恐る恐るゼンに向き直り、凝視してきた。 「ならば、うらはなぜ死ねぬ? なぜ、他の者達のように極楽へ行けぬ? 御仏が罰を下したからではないのか?」 「私はミホトケが何なのかは知らないが、それによる結果ではない。ワン・ダ・バが墜落した際に飛散させた肉片を 摂取したことにより、生体情報が変化してテロメア細胞が突然変異した結果、不老不死に酷似した状態に陥った。 よって、罰という表現には当てはまらない」 「ならば、お前は何なのだ? 御仏の使いでもなければ、魔性の者でもないのか?」 「どちらでもない。私はナガームンの科学者であるゾゾ・ゼゼの生体分裂体であるゼン・ゼゼであり、ワン・ダ・バの 生体組織の回収を命じられているだけだ。この島は、ワン・ダ・バの生体組織で構成されている。だから、この島の 地底湖にいたお前を取り出したまでのこと。お前を死に至らしめることもなければ、その権限もない」 「ほうか。ならば、ゾゾという名の者は私を極楽に導いてくれるんね?」 「解らない。ゾゾは科学者だが」 「ほんなら、一度、会ってみるのも良いかもしれんね。ゼン、と申したな、うらをそこまで案内してくれねっか?」 「なぜだ」 「カガクシャというのは何をする者かは知らぬが、どうせ、うらにはいくらでも時間がある。頼めるか?」 「私は海中を徒歩で進めるのでワン・ダ・バまで自力で戻れるが、お前はそうではないだろう」 「水をどれほど飲んでも死なぬが、ほれとこれとはちゃうからな。ほうさな、本土に渡って船を調達すればどうね」 「船か。それについては構わないが、道中で私の目的も果たさなければならない」 「決まりだの。うらは一人で諸国を行脚していたが、連れ合いが欲しかったところでの。共に来てくれるか」 死体のような若い女は、表情を和らげた。ゼンは彼女が喜んだ意味は解らなかったが、彼女の文化における同意 を示す仕草、頷きを返した。彼女は余程嬉しいのか袖で顔を覆って笑みを零したが、水を含んだ服の重たさが気に なったらしく、頭部に被っていた布を外して近くの岩場に掛けた。続いて黒い服もその上に着ていた布も外して肌着 一枚になると、痩せた体を曝け出した。頭部には一切体毛はなく、青ざめた剃り跡が残るだけだった。生体情報を採取 した際に、現住生物、すなわち、人類がどういった生態系の種族なのかも理解していた。体毛が生える生物は珍しくも なんともないが、局地的に生えるのは奇妙極まりなかった。他の部分にはほとんど生えないのに頭部だけに体毛が 生えて邪魔だから彼女は剃り上げているのだろう、とゼンは判断した。 彼女は竜ヶ崎ハツと名乗った。僧名は別にあり、八百比丘尼とも呼ばれているのだそうだが、やはり慣れ親しんだ 本名が良いからとそちらを教えてくれた。法衣が乾くまでの間に、ハツはゼンに蕩々と話を聞かせてくれた。ゼンの 姿形を恐れてはおらず、人間の姿形でありながら人間ではなくなった自分に近しい者であると認識していた。海辺の 漁村で生まれ育ったこと、その村で奇妙な肉を食べてからは成長も止まって死ねなくなったこと、何度結婚しても 次々に夫に先立たれるばかりか子供の一人も産めなかったこと、生まれ育った故郷で入定しようとしたがどれほど 食事を絶っても命は絶えなかったこと、絶望した末に流れ流れて琉球に行き着き、死に場所を求めてこの島に来て 地底湖に沈んでみたが遂に死ねなかったこと、など。ハツは話すだけ話して満足したのか、ゼンが海中で捕獲して きた魚を口にせずに、乾いた法衣を着直して身を丸めて寝入った。 その寝顔は、やはり死体だった。 11 1/27 |