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わたしのかぞく



 無限に揺らめく、有限の波間にて。


 とんとんとん、と台所からまな板を叩く音がする。
 いつのまにか蹴り上げていたタオルケットを引き寄せてしがみつき、眠たさに任せて体を丸めると、ずり上がった パジャマからはみ出た背中が朝日に触れた。網戸から吹き込んでくる風は柔らかいが、日差しからは厳しい暑さ の気配が感じられた。窓の外ではじりじりとセミが鳴いていて、べとつく汗が煩わしい。

「いい加減起きんとならんよー」

「うー……」

 姉の声に抗い、波号は布団に顔を埋めた。

「いつまでもうだうだしてっと、着替えるん手伝ってあげんよ?」

「別にいいよぉ」

「寝癖直すんも、手伝ってあげんよ?」

「……それは困るぅ」

 観念した波号が布団から起き上がると、既に制服に着替えている姉が押し入れのふすまを開けた。姉は自分の 布団を畳んで押し入れに入れてから、波号が抱き締めていたタオルケットを剥がして折り畳んだ。波号は渋々布団 から出ると、ぐちゃぐちゃに寝乱れた髪をいじりながら目覚まし時計を見やった。午前六時半。

「お姉ちゃん、朝練?」

 着替えを取り出しながら波号が尋ねると、姉、チヨははにかんだ。

「朝練っちゃ朝練かもしれんね、へへへ」

 下行っとるでな、とチヨは波号の分の布団も片付けてから、部屋を出ていった。セミロングともロングとも言い難い 中途半端な長さの髪を括っているのはリボンではなく、ゴムを入れて編んだ帯紐だ。幼い頃の不幸な事故で失った 左目を覆う眼帯の紐も、それと同じ帯紐を使っている。公立中学校の制服であるセーラー服は南国独特のもので、 襟が丸くカーブしていて布を被せた丸ボタンが三つ並んでいる。おかーさーん、とチヨが台所で家事に勤しむ母親に 声を掛けている。大方、体操着が乾いているかどうかだろう。
 波号よりも四つ年上の長女、チヨは面倒見が良くて働き者なので、家族の中では母親の次に忙しく働いている。 だから、つい頼りがちになってしまうし、チヨも手を貸そうとしてくるのだが、それではいけないので波号も自分のこと は自分でやるように気を付けている。しっかりしすぎていて年頃の娘らしさがないようにも見えるが、実際はそうでも なく、近所の神社の御神体兼神主である龍神にぞっこんで毎朝のように通い詰めている。だから、今朝もまた神社に 行くに違いない。龍神もまんざらではないようなので、一途な思いが叶うのは時間の問題かもしれない。
 パジャマからチェック柄のシャツワンピースに着替えた波号が、汗を吸った肌着とパジャマを抱えて一階に下りる と庭先では一番上の兄が暇を持て余していた。身長四メートルという巨体と左腕全体のリボルバーが邪魔をして、 家の中にすら入れないからだ。波号は、胡座を掻いているイグニスの背に挨拶する。

「イグ兄ちゃん、おはよー」

「おう」

 イグニスは顔を半分だけ波号に向け、ぞんざいに挨拶した。長兄であるイグニスは生粋の軍人であり機械生命体 である。攻撃的でさえある真紅のボディにファイヤーペイント、左腕全体のリボルバーから解るように、火力とパワー を何よりも愛する男だ。戦いこそが人生である彼が、なぜ南国の民家で大人しくしているのかと言えば、平和に次ぐ 平和で働き口がなくなったからだ。それもこれも、最強の名を欲しいままにしているスーパーヒーローのせいだ。
 波号は脱衣所に行って洗いカゴの中に汚れた衣類を入れてから、ペットの餌を手にして庭に向かった。掃き出し窓の 下に常備してある突っ掛けを履いたが、母親のものなので波号にはサイズが大きすぎ、一歩歩くたびにゴム底が 足から離れた。飼育小屋に入ると、その中では巨大なヘラクレスオオカブトが俯せになっていた。

「へーちゃんもおはよー」

 波号が挨拶すると、身長五メートルもの人型ヘラクレスオオカブト、ヘラクレスは鈍い返事をした。

「ま゛」

「良い子にしてた?」

「ぬ゛」

「よしよし」

 波号はヘラクレスの屈強なツノを撫でると、ヘラクレスは触角を小刻みに動かした。金網越しにその様子を覗いた イグニスは、体格に見合った巨大な昆虫ゼリーを貪るヘラクレスに辟易した。

「俺よりでかい虫なんざ飼うなよ……」

「でも、お父さんもお母さんもいいって言ったもん。小屋だって作ってくれたもん」

「だからってなぁ」

 イグニスはまだ文句を言いたげだったが、波号がヘラクレスとじゃれ合い始めると顔を背けた。諦めたらしい。

「へーちゃん、今日も良い子にしているんだよ?」

 ヘラクレスの丸太のような上右足に寄り添い、波号が複眼を見上げると、ヘラクレスは片言で答えた。

「う゛、ん」

「学校から帰ってきたら、また一緒に遊ぼうね!」

 ヘラクレスが食べ終えた昆虫ゼリーの器を抱え、波号は飼育小屋を後にした。ヘラクレスは波号の小さな背中に 鋭い爪の生えた上両足を振っていた。その光景にイグニスは一層不可解な気分になってしまい、首をおかしな方向 に傾げた。ヘラクレスは、先月の夜道で波号が拾ってきた対人型昆虫用戦術外骨格である。本来の用途である、 人型昆虫の殲滅作戦が大いに失敗したため、対人型昆虫作戦を展開していた政府の各部署が次々に解体され、 飼育しきれなくなって放逐された戦術外骨格が野生化したのである。当初、人型昆虫は人間を捕食する危険性が あったが、研究を重ねた結果、特定のフェロモンを散布すれば人型昆虫は無力化すると判明したので、今では人型 昆虫と人類は共存の道を歩んでいる。
 手を洗い、顔も洗い、髪も整えてから居間に向かうと、次男の正弘が座卓に突っ伏していた。彼の周囲には大量 の紙が散らばっていて、消しカスの山も座卓の足元に積もり、各種画材も散らばっていた。

「マサ兄ちゃん、徹夜?」

 波号は居間に入り、散らばっている原稿用紙を踏まないように気を付けながら兄に近付いた。

「そんなつもりは毛頭なかったんだ……。十五枚ペン入れ出来たら御の字かなーって思って始めたら、なんか変な スイッチ入っちゃって、妙に勢いが付いちゃって……気付いたら全部終わっていて……」

 正弘はマスクフェイスを押さえ、あー、と低く呻いた。彼の左脇腹からはバッテリー充電用ケーブルが伸びていて ソケットに刺さっているので、充電しながらの作業だったらしい。達成感と同時に猛烈な疲労に襲われたらしく、正弘は ゾンビのように唸り続けている。波号はインクが乾いている原稿用紙を確かめながら、通し番号に添って一枚一枚 拾い集めていった。その内容は事前に聞いていた通り、オリジナルプリキュアだった。
 次兄の村田正弘はフルサイボーグである。生身なのは脳だけで他は全て機械だが、中身はオタク気味な十五歳の 男子中学生だ。特に少女漫画を描くのが好きで好きでたまらず、その趣味が高じて、近頃では同人誌を出すにまで 至ってしまった。当初、正弘は大いに恥じらっていたが、家族の誰も咎めないどころか応援しているので、最近では すっかり開き直って居間で原稿を描くようになった。その内容は専ら、魔法少女系なのだが。

「キュアムラサメって何?」

 忍者風のコスチュームを着た美少女キャラを指し、波号が問うと、正弘は弱々しく答えた。

「村山しぐれっていう名前の中学三年のツンクールなお姉さんキャラなんだけど、最初は主人公側のライバルキャラ として登場してくるんだ。でも、天然でデタラメな主人公の貴石みくる……キュアミラクルに変身するんだけど、その みくると必要以上にイッチャイッチャベッタベッタした末に仲良くなっていくんだ。そして二人の世界へ……!」

「他のプリキュアはいないの?」

「いる、んだけど、どうにも描けば描くほどキュアムラサメが大暴走しちゃってさぁ……」

 乾いた笑いを漏らした正弘に、波号は原稿用紙の束を差し出した。正弘は原稿の出来を確かめようとグリーンの ゴーグルを向けた途端、硬直した。波号が訝りつつ正弘の手元を覗き込むと、漫画の原稿は一枚残らずペン入れ どころがベタもトーン貼りも効果線も何もかもが終わっていた。正弘は原稿から顔を上げ、喜んだ。

「俺より上手い……」

「マサ兄ちゃん、もしかしてさぁ」

「うん、もしかしなくても」

 波号が居間の天井の隅を示すと、正弘もそちらを見上げた。母親が大の綺麗好きなので掃除が行き届いて いるので埃もなければクモの巣も張っていなかったが、僅かに朝日の筋が歪んでいた。微妙すぎるので常人の 目では見分けられないだろうが、正弘は曲がりなりにも軍用サイボーグで波号は生体兵器である。ということは、 この家に住んでいる家族の一人の仕業だろう。正弘は少し笑い、原稿用紙の束をマチ付き封筒に入れた。

「ありがとう、恩に着るよ、イレイザー。これで締め切りよりも半月以上早く送れる」

「ありがとー、いっちゃん」

 波号もにこやかに手を振って礼を述べると光の筋が不自然に歪み、庭に面した掃き出し窓が急に開いて どたばたと足音が逃げ出していった。これもまたいつものことなので、波号と正弘は笑うだけだった。
 彼の名はパープルシャドウイレイザーといい、この家に住まう者の一人だ。ヒューマニックマシンソルジャーという 仰々しい名前の超高性能な戦闘ロボットなのだが、人格プログラムが発達しすぎたせいか人見知りが激しく、常に 光学迷彩で身を隠して行動している。だから、彼の姿を目視出来たことは少なく、会話もほとんどないが、そのせいで 逆に存在感が増しているのだから皮肉なものだ。イレイザーもまた、世界が平和になったことため、一日でも早く 人間社会に慣れるべきでついでに人見知りもなんとかするべきだと兄妹達から押し切られて、この家に住むことに なった。だが、本人にその気がないので、成果はあまり出ていないのが実情である。

「朝御飯、食べられる?」

「食べる。ていうか、喰わなきゃ死ぬ」

「サイボーグだから、余計に糖分は必要だもんね」

 そう言い残して、波号は居間を後にした。廊下を挟んで隣接している台所では、エプロン姿のチヨが母親と一緒に 弁当を詰めていた。母親、ゾゾ・ゼゼは長く太い尻尾を軽く揺らし、ガス釜で炊き上がったばかりの白飯を弁当箱に 入れていた。波号に気付いたチヨはおかずを選り分けていた手を止め、顔を上げる。

「はーちゃん、朝御飯はもうちっと待ってな」

「今日のお弁当はなーに?」

 波号が身を乗り出すと、チヨは菜箸を持ったまま弁当箱を受け取った。

「いつもと大して変わらんて」

「変わらぬのが一番ですよ、波号さん」

 御飯を敷き詰めた四角い弁当箱を差し出しながら、ゾゾは単眼を細める。チヨは弁当箱をテーブルに置くと、御飯 の上に直におかずを置いていった。ウィンナーに魚のフライに分厚い卵焼きにニンジンとツナの炒め物、紫の葉裏が 特徴的なハンダマのお浸しはアルミカップに小分けされて隅っこに収まっていた。家族の胃袋に合わせて弁当箱 の大きさは違えども、皆、食べ応えを保証する重みがある。それでも残さず食べられるのは、ゾゾの腕の良さだ。
 一家を支え、日々世話を焼いてくれる母親はゾゾ・ゼゼという名の単眼トカゲの異星人である。紫色のウロコの肌 と赤い単眼が化け物じみているが、礼儀正しく心優しいので支障はない。性別は厳密に言えば男なのだが、年齢的 にも立場的にも性格的にも母親以外の何物でもないので、皆、自然と母親扱いするようになった。

「ラミアンさんを呼んできて頂けませんか、波号さん。あの方は放っておくといつまでもあのままですので」

「お父さんは?」

「今し方南極を出発したとのメールが届きましたので、あと五分もすれば帰ってきますよ」

「お父さんは今度はどこの誰と戦ってたんだっけ」

「毎度のことですので、私もよくは覚えてはおりませんが、確か……オジマンなんとかという方が御相手ではなかった でしょうか。南極でろくでもないことを目論んでいる奴がいると変な仮面の男が変な文章でリークしてきたが、戦いに 行かなければヒーローの名が廃るったら廃るっ、と言い残して夜中に飛び出していったのですが」

「ふーん。じゃ、お爺ちゃん呼びに行ってくるー」

 波号は返事をしてから、台所を出て奥の間に向かった。だが、そこに祖父はおらず、床の間と向かい合っている 裏庭にいた。いつものように盆栽に向かい合っていて、鋭利な爪先で枝葉を手入れしていた。銀色のマントが日光 を跳ねて目を刺してきたので、波号は思わず目を逸らす。

「ああエキゾチック、ああファンタスティック、ああ珠玉のオリエンタリズムよ!」

 狂気の笑みを貼り付けた仮面を盆栽に寄せながら、祖父、ラミアン・ブラドールはけたけたと笑っていた。それが 突き抜けてしまって殺戮人形のアルゼンタムと化したことも少なくなかったのだが、波号にはその理由が未だによく 解らない。思い通りに盆栽を育てるにはとても長い時間と苦労が必要だとは知っているが、いちいちハイテンション になるほどのことではないような気がする。
 ラミアン・ブラドールの正体は、中世ヨーロッパで栄えた恐るべき魔導技術の結晶である人造魔導兵器なのだが、 争い事が収束して平和になった際に触れた日本文化に大いにかぶれた末、日本に移住してきたのである。生前は 吸血鬼だったこともあり、その本性は血に飢えた殺人鬼なのだが、近頃は極めて健全な日本的な趣味に没頭して いる。それは盆栽や書道であり、中でも特に執心しているのは相撲である。

「我が渾身のガジュマルよ、気高き吸血鬼の魔力を受け、猛々しく雄々しく勇ましく麗しく育つがよい!」

 ラミアンは両手を広げて宣言したが、勢いが良すぎて仰け反った。すると、上下逆さまの視界に波号が入って きたので、ラミアンは姿勢を戻してから波号と向き合った。

「おや、これは我が家の妖精ではないか」

「それ、恥ずかしいから止めてって言ったじゃん」

 波号が拗ねると、ラミアンは胸に手を当ててマントを抓み、丁寧に一礼した。

「どうか我が無礼を許されたし、御令嬢。して、この穢らわしき仮面の骸骨にいかなる言伝がおありかな?」

「お母さんがね、朝御飯がもうすぐ出来るから、って」

 ラミアンが返事をしようと仮面を上げたその時、家の上空に猛烈な風が吹き荒れた。が、イグニスが咄嗟に張った エネルギーシールドのおかげで局地的な嵐の直撃は免れ、ラミアンの丹誠込めすぎて怨念が宿っていそうな盆栽も 一つ残らず無事だった。エネルギーシールドが解除されると、裏庭に巨漢の男が突っ込んできた。

「うわははははははははははははっ!」

 雪と霜と自身の鼻水がべっとりと貼り付いたバトルマスクを反らし、パワーイーグルは分厚い胸を張る。

「南極に行って一暴れしたついでにっ、青くて光る素っ裸の変な男と火星の旅に付き合ってしまったっ!」

 この筋肉の塊も同然の男こそが世界に平和をもたらしたスーパーヒーローであり、父親のパワーイーグルである。 年がら年中世界どころか宇宙も飛び回っているので、自宅で過ごせる時間は数える程度なのだが、本人の性格が いかんせん強烈すぎるので存在感がありすぎて持て余すほどだ。ちなみに父親の素顔を見たことはない。マスクを 被っていてこそヒーローだからだっ、ということらしい。そして、なぜスーパーヒーローであるパワーイーグルが種族も 出身も年齢もばらばらな者達を掻き集めて家族を作り南国の離島に居を構えているのかといえば、成り行きだっ、 ということだそうである。それ以上の説明は求めるだけ無駄なので、誰も問い詰めていない。

「それはまた大変であったな。私も大変なのだが」

 パワーイーグルの落下による衝撃波で崩れかけた盆栽棚を守り抜きながら、ラミアンは呟いた。

「んでだっ、あの変な仮面の男と合流したはいいが、出会い頭に指を折られたぞっ! 地味に痛かったっ!」

 大股に歩きながら雪やら何やらを落としたパワーイーグルは、ふぬんっ、と気合いと共にバトルスーツを解除して マントとブーツとフンドシ一丁になった。そのまま縁側から家に上がろうとしたので、波号はマントを引っ張った。

「お父さん、まずはお風呂に入ってよ! でないとまたお母さんに怒られるでしょ!」

「だぁがしかぁっしっ、この俺はスーパーヒーローなのであるからしてっ!」

「そんなこと言うなら、土曜日に一緒に出掛けるの、やーめた」

「……末娘の伝家の宝刀を抜くでない」

 途端にパワーイーグルは勢いを失ったので、波号はにんまりした。

「じゃ、三段重ねのアイスクリーム食べたい!」

「善処しようっ!」

「わーい、お父さん大好きぃー」

 波号がわざとらしい笑顔を見せると、パワーイーグルはブーツを脱ぎ捨てて風呂場に向かっていった。

「ではしばしのお別れだっ、俺はひとっ風呂浴びてくるっ!」

「騒がしい親父だぜ、全く」

 表の庭から回ってきたイグニスがぼやくと、ラミアンは仮面の下で微笑んだ。

「我らの知識や経験では、到底知り得ぬ動力で動いているのであろう」

「火星ってあれだろ、太陽系の第四惑星。だが、この惑星からだとかなり遠いぜ。生身だからワープドライブなんて 出来ねぇだろうに、何をどうやったら一晩で行き来出来るんだよ」

「特撮番組などで頻繁に見受けられるであろう、街中で戦闘を始めたのにジャンプした拍子に郊外や波止場や広場や 採石場にワープしている、というシーンが。それと似た理屈ではないかね、イグニス」

「んじゃ何か、アニメとかでよくある、撮影出来るわけがないアングルで隠し撮りした映像を敵がモニターで見て文句 を付けているシーンと似たようなものか? ぶっちゃけ、ただの使い回しなんだけどさ」

「深慮するのは大事だが、あまり思い悩むと深淵に至る。その辺りにしておきたまえ、朝食を頂こうではないか」

「俺は喰えねぇんだけど」

「何言ってんの、イグ兄ちゃんだってご飯は食べられるじゃない」

「俺の腹の中には、炭素由来物質を消化吸収してエネルギー変換する処理装置は内蔵されてねぇぞ」

「そういうことにしておこうではないか。食卓を囲む人数は多くあるべきだ」

 ラミアンは二人を促し、奥の間を出た。イグニスは納得いかないようだったが、居間に面した表の庭に戻るべく、 家の裏手を回っていった。波号は小走りにラミアンを追い抜き、台所に入ると、チヨとゾゾが人数分の食器と料理 をテーブルに並べていた。波号も箸を出すのを手伝っていると、風呂場からパワーイーグルの無駄にエネルギッシュ すぎる高笑いが響いた。それが徹夜の頭には響くらしく、正弘は頭を抱えてまた唸っていた。
 今日もまた、平和な一日の始まりだ。








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Photo by (c)Tomo.Yun




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