手の中の戦争




ソルジャー・マインド



トレーラーのコンテナを改造したオペレートルームから外へ出ると、夜になっていた。
インカムと共に付けていたバイザー型全面モニターを外して息を吐くと、首を締め付けるネクタイを緩めた。
トレーラーの周囲は全身を武装で固めた戦闘員達が固めており、戦闘部隊のリーダーが指示を飛ばしている。
住宅街の隅にある空き地には、シュヴァルツ工業の大型トレーラーが五台も乗り入れ、コンテナを開いている。
四号車のコンテナから展開されたアンテナは、夜空に向けて銀色の円盤を回しており、電波状況を探っている。
間宮すばるは、それを見上げていた。他の奇襲部隊からの定期連絡があるはずだが、一度も入っていない。

「ん?」

すばるの胸ポケットで、携帯電話が震えた。何かと思って取り出してフリップを開くと、公衆電話、とある。

「なんやろ、これ。チーフ、電話が来はりましたー」

すばるは震え続ける携帯電話を掲げ、四号車から出てきた、作戦のチーフオペレーターの元に駆け寄った。
チーフオペレーターは携帯電話に表示された発信元を見、少し訝しげにしたが、すばるの携帯電話を指した。

「とりあえず、出てみろ。間宮」

「了解しました」

すばるは携帯電話の受信ボタンを押し、耳に当てた。

「もしもし、どちらはんですかー?」

『そちらは、オペレート部隊の者か!』

いきり立った男の声が、スピーカーを揺さぶった。すばるは顔をしかめ、携帯電話を耳から遠ざけた。

「ええ、うちはオペレート部隊の人間です、間違うとりません。そちらは、どちらはんですの?」

『紫の襲撃を行っていた、第四奇襲部隊だ! そちらは異常ないか!』

「ありまへんよ。敵影が一個も見つからんから、ちょっと暇なくらいです。そちらは異変でも起きたんですか?」

『紫の奴を追い詰めたのだが、途中で逃げられた。何か妙なことをやられたらしく、機械類が全て故障を起こした! 無線も計器もトレーラーの制御システムも隊員個人の携帯電話も、何もかも動かなくなったんだ。なんとか公衆電話を見つけて、今、やっと連絡を取れたところだ。チーフに代わってくれ。現状を報告する』

「そりゃえらい目に遭いはりましたね。ほなら、お電話替わりますー」

すばるは携帯電話を、チーフオペレーターに渡した。携帯電話を受け取ったチーフオペレーターは、話を始めた。
奇襲部隊の隊長と思しき相手から伝えられる情報に驚いているのか、目を剥いていて、声を裏返してもいた。
無理もない。今回の作戦で使用している機材は最新鋭のもので、多少のことでは故障しないものばかりなのだ。
外装も丈夫だし、予備電源のバッテリーも積んであり、電磁波に対する対策も万全で、最高の装備を揃えた。
それが全て故障したのだから、大事だ。チーフオペレーターの傍では、他のオペレーターが顔を見合わせている。
すばるは、チーフオペレーターの声とその電話口から聞こえる相手の声を聞きながら、畏怖を感じ始めていた。
そんなことが出来る者は、限られている。あの、五色のロボットだ。紫と言えば、その中でも特殊な機体だ。
三年前の爆発事件、というより、地球外勢力同士の争いの中で、004と表記されたロボットは異質だった。
002と表記された青いロボットもスピードには長けていたのだが、004の紫のロボットは別の速さがあった。
機動力が、桁外れにある機体だ。映像で見ただけだが、その瞬発力や関節の駆動範囲は、恐ろしく高かった。
無論、それだけではない。屈折率を変化させて姿をくらます光学迷彩などを備えた、隠密型のロボットだった。
その性能の全ては、シュヴァルツ工業の諜報機関やコンピューターをもってしても、解析出来ていなかった。
過去の戦闘データから見て、攪乱や騙し討ちは得意なのだろうと思っていたが、まさかここまでだったとは。
すばるは、背筋に寒気を感じた。そんなものを世間に野放しにしていては、きっと、良くないことになる。
三年前のような戦いが、再び起きないとも限らない。だからこそ、今のうちに殲滅しておかなければならない。

「すばる」

名を呼ばれ、すばるは意識を戻した。振り返ると、戦闘員達が道を空けていて、その先に男が立っていた。
仕立ての良いスーツに身を固めた、大柄ながら品の良い雰囲気を漂わせた壮年の男。すばるの父親だった。

「お父はん…」

すばるが向き直ると、男はすばるに歩み寄り、五号車を指した。

「輸送部隊が遅れていたので心配していたが、無事に到着していたようだな。あれの調整をしておけ。この分だと、使うことになりそうだからな」

「あの子の自己制御プログラムの調整は、終わっとります。機体の整備も出来とるし、出せます」

すばるが表情を固めると、男は僅かに頷いた。

「武装のプロテクトを全解除しておけ。いつでも、戦えるようにな」

「ほな、やっときます」

すばるは男に敬礼すると、五号車に向かおうとした。すると、男の大きな手がすばるの肩を掴んだ。

「なんです?」

「期待しているぞ、すばる」

「…了解しました」

すばるはもう一度敬礼すると、男の手が肩から離れてから歩き出した。男は、すばるに背を向けて立ち去った。
緩めていたネクタイを元に戻し、オペレーターの制服の襟を整える。そうだ、この作戦は勝利するためのものだ。
三年前に日本で戦いを繰り広げた、赤、青、黄、紫、黒の五体のロボットは、いずれも人間には危害を加えない。
どこからともなく現れる同系色のロボットとだけ戦闘を行うが、その際、彼らは身を挺してまで人間を守る。
それは、五体とも共通のことだった。元々、あのロボット達は、ロボットだけを倒すように造られたのだろう。
確証は得ていないが、あれほどの規模の戦闘を行っても死傷者が誰一人いないとなると、その可能性は高い。
この作戦は、そこに付け込んだ作戦だ。危険な破壊兵器を確実に倒すためには、手段は選んではいられない。
すばるは深く息を吸い込んで、唇を引き締めた。




その頃。マリーの家の地下では、彼らが揃っていた。
底冷えのする巨大な金属の箱の中に、メンテナンスドックに入って装甲を開かれたままの、巨大なものが在った。
NIGHT RAVENと肩に文字が書かれており、漆黒の装甲を開け放って、駆動機関やエンジン部分を晒している。
メンテナンス用クレーンの傍にある大型モニターの前には、紫のマシンソルジャー、イレイザーが立っていた。
その横には、子供ほどの体格しかない黒いマシンソルジャー、ブラックヘビークラッシャーが浮かんでいる。
ナイトレイヴンの部品が入った銀色の箱に腰掛けている、学ラン姿の少年は、額に手を当てて項垂れていた。
その肩を、由佳が支えていた。少年、美空涼平は悔しげに唸っていたが、だぁん、と力任せに箱を殴る。

「なんでこうなっちまうんだよ!」

「ケガ、ない?」

由佳は身を屈め、弟を覗き込む。涼平は奥歯を噛み締めていたが、クラッシャーを見、顔を歪めた。

「…オレよりもクー子だ」

「私は平気だよ。どこも痛くないもん。ただ、ちょっと、泣きたいけど」

クラッシャーは、ショッキングピンクの光を放つスコープアイを歪めた。イレイザーは、妹の頭に手を置く。

「無理はするな、ヘビークラッシャー」

「だぁってぇ…」

兄を見上げたクラッシャーは、目元から冷却水を零した。反重力で体を浮かせているので、その涙も丸く浮かぶ。

「イレイザー兄さん、私達、何もしてないよね!? 地球に帰ってきてからは、いい子にしてたよね!?」

「拙者達は何もしてはおらん。今度ばかりは、あちらの仕業なのでござる」

イレイザーが妹を宥めると、クラッシャーはイレイザーに縋り付く。

「ねえ、教えて、イレイザー兄さん! あの人達、何なの!? なんで、私と涼を撃ってきたの!?」

「まずは、状況を整理しようじゃねぇか」

大型モニターから離れた位置に立っていた赤い装甲の一際大きなロボット、レッドフレイムリボルバーが言った。
彼の隣に座り込んでいた髪の長い女性、高宮鈴音は壁に手を付いて立ち上がった。艶やかな髪が、乱れていた。

「そうね、それが最初にするべきことだわ」

大型モニターの前に座っていたさゆりは、頷いた。立ち上がると、泣き続けるクラッシャーをそっと抱き締める。
クラッシャーはさゆりにしがみ付くと、更に泣いた。その悲しげな姿にさゆりも泣きそうになったが、堪えた。
しばらくしてクラッシャーは、だいじょーぶ、と弱々しく漏らしてさゆりを離すと、作った笑顔を浮かべた。
銀色の壁に寄り掛かっていたメガネを掛けた女性、永瀬律子は、傍らにいる小柄なロボットを見下ろした。
体格に比例しない大きな手足を持った黄色い装甲のロボット、イエローフォトンディフェンサーは叫び散らす。

「あいつら全員蹴散らして、口も聞けねぇようにしてやりゃあいいだろうが!」

「落ち着くでござるよ、黄の兄者。事を荒立ててしまっては、良い方向に向かうはずがないのでござる」

イレイザーが首を横に振ると、ディフェンサーは大きな手を握り締め、壁に叩き付ける。

「るせぇ! こんな勝手なことされて、黙ってられるかってんだよ! オレは出るぞ、奴らを叩き潰してやらぁ!」

「その前に、オレがてめぇをぶち壊してやらぁ」

ディフェンサーの絶叫に、リボルバーが凄みを含んだ声で言い放った。ディフェンサーは、長兄を睨む。

「リボルバーの兄貴! あんな連中、生かしておいてもどうにもならねぇだろうが!」

「オレ達は人を殺せねぇ。それを、忘れたわけじゃねぇだろう」

リボルバーの言葉に、ディフェンサーは壁にめり込ませていた拳を抜き、肩を震わせる。

「…解ってる、解ってるに決まってらぁ、それぐらい。だから、悔しくて、腹が立って、仕方ねぇんだよ」

「うん。私も、あの人達のやり方は許せない。だって、いきなり襲い掛かってきたんだもん」

律子は、ディフェンサーの背中に覆い被さると、彼に腕を回した。涙を滲ませ、しゃくり上げる。

「もう誰も、あんな辛い目に遭わなくて済むと思ってたのに…」

メンテナンスドックの奧にあった自動ドアが開くと、そこから盆を持ったインパルサーと青年がやってきた。
皆の視線が、そちらに向く。盆の上に並べられた六つのマグカップからは、白い湯気が立ち上っている。
機械油と金属の匂いしかしなかったドック内に、コーヒーの香りが広がっていく。青年、神田葵は苦笑した。

「期待しないでくれよ、インスタントだ。オレが持ち込んだのがあったから、淹れてもらったんだ」

「僕もそうですけど、皆さん、落ち着きましょう。本当なら、ケーキでも添えておきたいところですけどね」

インパルサーは、大型モニターの前にある空の箱の上に盆を置くと、それぞれにマグカップを渡していった。

「悠長なもんだぜ」

ディフェンサーが毒突くと、インパルサーは弟を見やり、ため息を零した。

「いつも言っているでしょう、フォトンディフェンサー。あなたも、いい加減に落ち着きを持って下さい」

「お砂糖、ないの?」

さゆりは、マグカップを持ったまま盆の中を覗き込む。神田は、申し訳なさそうにする。

「悪い。ここはオレしか来ない場所だから、甘いのは置いていないんだ」

「今は、妥協しましょうよ」

コーヒーを飲んだ鈴音は、ちょっと眉をしかめたが飲み下した。

「シュヴァルツ、ねぇ。馬鹿みたいにでかい企業だとは思っていたけど…」

鈴音はマグカップを両手で持ち、壁に背を預ける。

「資本金は日本円で五百億、年間収益は十二兆以上の世界的大企業よ。本社はドイツだけど、最近はもっぱらアメリカで収益を上げているわ。米軍相手に商売しているみたいね。でも、そんなに儲かっているなら、なんでわざわざボルの助とかに目ぇ付けるのかしら。ついでに言えば、警察が動かないのも変ね。シュヴァルツ工業がさっさと圧力を掛けたのか、もしくは…」

不安げに、鈴音は言葉を濁した。あまり考えたくない事態が、予想出来たからだ。

「それは、三年前の戦いが原因でござる。この星に戻ってきてから、拙者は兄者方には秘密裏に行動し、三年前の戦いが日本政府にどのように処理されたのかを、徹底的に調べたのでござる。警視庁、防衛庁、内閣などの各種政府機関のデータベースに侵入し、拙者達に関わる情報の全てをダウンロードして確認したのでござる。日本政府は銀河警察からの指導を受け、拙者達へのお咎めはしなかったのでござるが、その代わりにある協定を日本のみならず各国の政府に言い渡していたのでござる。この国の体制を象徴するような、ものでござった」

イレイザーは顔を伏せると、語気を弱めた。

「拙者達は、異星からの侵略者として、扱われているのでござる。それ自体は事実でござるし、文句は言えないのでござるが、問題はその次でござる。日本政府は、拙者達を放免する代わりに、拙者達や拙者達に関わる民間人がどのような目に遭っても、警察や自衛隊は一切関知せぬ方針を取らせているのでござる。悪い意味での、治外法権なのでござる。故に、シュヴァルツ工業が拙者達を襲撃しても、誰も何も言わぬのでござる」

「やっぱり。おかしいと思ったのよ、あれだけ武装した連中がいるのに、警察がちっとも動かないなんて」

異常だわ、と鈴音は吐き捨てた。律子はディフェンサーから離れると、両手をきつく握り合わせた。

「そんなこと、全然知らなかった…」

「私達は、ただの民間人だもん。知らなくて当然だよ」

由佳が悔しげにすると、涼平は苛立ちを持て余したのか、再び銀色の箱を殴り付けた。

「クー子達のことを何も知らねぇくせに、勝手なことしやがって!」

「ひどいよ…」

さゆりが泣きそうになると、神田は苦々しげにする。

「事情を知らない人間にとっちゃ、皆は危険すぎるからだよ。今は武装を解除しているけど、その状態でも地球上のどんな兵器にも勝る装備を持っているし、未知のテクノロジーが詰まっている。増して、意志を持っているんだ。下手に接触しておかしなことになってしまうくらいなら、近付かずに事を起こさない方がいい、って判断をしたんだろう」

「そんなことだから、いつまでたっても景気が良くならないのよ!」

そう言い、鈴音は乱暴にコーヒーを飲み干した。リボルバーは、弟の背後の大型モニターを見上げた。

「おい。そいつぁ、なんだ」

「敵のトレーラーをスキャニングしてきたんです。といっても、センサー出力が弱いので不完全ですけどね」

インパルサーは、少し情けなさそうにする。リボルバーは、手のひらに拳を当てる。

「いや、充分だ。それだけ解りゃ、敵が何を考えてんのか予想が付かぁな」

「ったくよー。銀河警察の連中、役に立たねぇなー。全部回収してなかったのかよ」

ディフェンサーは大型モニターを見上げ、ぼやいた。クラッシャーはふわりと浮上し、大型モニターの前に出る。

「回収する前に奪われたのかもしれないよ。私達も、撃墜したらすぐ他の場所に行かなきゃいけなかったし」

「だが、所詮は拙者達の部下達の寄せ集め、スクラップで出来たロボットに過ぎぬ。敵ではない」

イレイザーは、大型モニターを仰ぎ見た。そこには、コンテナの輪郭線とその内部のものの輪郭線が映っている。
長方形の立方体を横にした線の中には、角張った人型があった。横たわっており、その周囲には人間がいる。
コンテナよりもやや小さいそれは、強固な装甲を備えた両腕両足、太い胴体、大きな頭部を持ったロボットだ。
だが、両腕と両足の装甲の形が違っており、胴体とのバランスが揃っておらず、全体的に統一性がなかった。
イレイザーはスキャニング映像をじっと見ていたが、不格好なロボットの胴体部分に空洞があるのを見つけた。
縦に一メートル七十センチ程度の狭い空間で、部品と部品の隙間を開けて、無理に造ったもののようだった。
だが、中には何もなかった。制御系統のケーブルからは外れているし、エンジンよりも前面に造られていた。
何かの武器を仕込んでいるのであれば、スキャニングした際に映るはずだ。これは一体、何なのだろう。

「はて…これは」

イレイザーが不思議そうに呟くと、神田は大型モニターに近付き、その空洞部分を指した。

「イレイザー、そこのところ、拡大してみてくれないか」

「御意」

イレイザーは、大型モニターの前のコンソールを叩いて画像を拡大させた。モニター一杯に、空洞部分が広がる。
スキャニングした際のモデリングが不完全で線だけの絵なので、はっきりとした形は見えないが、妙な空間だ。
立体的ではない絵を凝視していた神田は、その大きさと位置に引っ掛かりを感じていた。見たことが、ある。
だが、どこで。それを思い出しながら、微妙に後方に傾斜が付いている空間を見据えていたが、目を見開いた。

「操縦席か、これ!」

思わず、神田は声を張り上げてしまった。大きさや位置から考えても、この空間はそうである可能性が高かった。
空間の後部には、座席と言うには浅い椅子に似たものがあり、その後方には背中を預けるものが付いていた。
更に、背もたれの両脇からはベルトと思しきものが伸びていて、ぶら下がっている。間違いなく、人が入れる。

「ですが、操縦席にしてはおかしいような気がします。地球製だからかもしれませんけど、作りが甘いような…」

と、インパルサーが首をかしげた。リボルバーは表情を固め、指揮官の顔になった。

「んなもん、調べりゃ解らぁな。シャドウイレイザー、シュヴァルツの情報は引っこ抜いたのか?」

「現在、拙者が掴んでいるのは概要だけでござる。もう少し時間を頂ければ、充分な情報を集められるでござる」

イレイザーが返すと、そうか、とリボルバーは再び大型モニターを見上げた。

「どんなものでも構わねぇから、出来るだけ掻き集めといてくれ。敵の情報がなきゃ作戦も立てられねぇからよ」

「出来れば、戦わずにいたいところですが」

インパルサーは兄や弟達に倣い、大型モニターを見た。画面の隅に表示されたレーダーは、現在は無反応だ。
シュヴァルツ工業の考えが、解らない。戦いを仕掛けてきた理由も、この空間の意味も、上手く読み取れなかった。
だが、ろくでもないことは確かだ。インパルサーはまた沸き上がりそうになった怒りを押し込め、由佳を見やった。
彼女もまた、インパルサーを見ていた。とても不安げで悲しげな眼差しに、インパルサーは居たたまれなくなる。
前回のように敵がロボットであったなら、今すぐにでもここを飛び出して、危険をもたらす要素を全て消すだろう。
だが、人間が関わっている。それだけで、コアブロックの人格基本プログラムに施されたプロテクトが作用する。
これさえなければ、とも思わないでもないが、このプロテクトがなかったら、躊躇いなく彼らを殺していただろう。
それだけはいけない。エモーショナルリミッターのリミットブレイクで我を失おうとも、人だけは、殺してはならない。
感情回路が、焦げそうなほど熱していた。





 


06 9/18