非武装田園地帯




第二十三話 手負いの獣



 八年前。六月七日。
 正弘は黒のランドセルを背負い、近所に住んでいる同級生と連れ立って通学路を歩いて下校していた。
同級生との話題の中心は、来週から始まるプールの授業にについてだった。皆、とても楽しみにしている。
梅雨に入り、連日雨が降っていた。子供用の黄色い傘を差しながら、長靴の先で水溜まりの水を蹴り飛ばした。
 プールが始まるのは、とても楽しみだった。正弘はまだ上手く泳げないから、早く泳げるようになりたかった。
村田家の長女、智代は運動が得意なので泳ぎも上手く、海に行った時は誰よりもはしゃいで泳ぎ回っていた。
スクール水着に包んだ体をしなやかに動かし、水の中を滑る姉の姿はとても楽しそうで羨ましくもあった。
だが、智代に教えてくれと言うと、智代は意地悪く笑いながら、マサになんか教えてやらない、と逃げ回った。
正弘は無性に悔しくなって、姉を見返したかった。次女の和代は、教えてあげようか、とも言ったが振り払った。
今まで、和代や母親から教えてもらってばかりで、自分の力で物事を成し遂げて智代を見返したことはなかった。
小学生になったのだから、自分一人でやれるはずだ。だから、泳ぎも自分だけの力で覚えよう、と決意を固めた。
 交差点で同級生と別れた正弘は、自宅に向かった。住宅街を通り抜けて田畑の間を過ぎ、十五分ほど進んだ。
七歳の子供の足には少々長い距離だが、歩き慣れてきたので苦ではなかった。家に着くと、両親の車があった。
シャッターを開け放したガレージの中には、父親のワンボックスカーと母親の軽自動車が並んで止めてある。
珍しいことだと思った。パート勤めの母親の帰りが早いのはいつものことだが、父親は普通のサラリーマンだ。
どうしたかな、と思いながら玄関に入り、傘を閉じた。ばさばさと雨水を飛ばしてから傘立てに入れ、長靴を脱いだ。

「ただいまぁ」

 正弘が家の中に声を上げると、居間から父親が顔を出した。

「お帰り、正弘」

「お帰りなさい、お父さん」

 正弘が居間に入ると、父親、高志が笑いかけてきた。

「正弘。後で準備をしなさい、明日遠くに出かけるから」

「え!? どこに!?」

 突然のことに、正弘は驚きながらも喜んだ。高志は、正弘と目線を合わせる。

「それは明日になってからだ。智代の誕生日祝いだから、智代には内緒だぞ?」

いいな、と言い含められ、正弘は頷いた。

「うん!」

 居間を出た正弘は二階に上がって子供部屋に入り、机にランドセルを置いた。濡れた表面を、ハンカチで拭く。
壁に貼られたカレンダーには、六月八日が蛍光ペンで塗られ、その上から赤い文字が書き込まれている。
智代 誕生日! と枠からはみ出るほど大きい文字だった。正弘は、次第に、智代が妬ましいと思った。
一緒に出掛けるとはいえ、誕生日祝いに旅行というのは豪勢だ。扱いが違う。ちょっとだけ、むっとした。
だが、やはり出掛けるのは楽しみだ。正弘はうきうきしながら遊びに出ようと思ったが、途中で気付いた。
 近所に住む同い年の幼馴染みは、今日は学習塾の日だ。だから遊びに誘ってもダメなんだ、と思い出した。
窓の外を見てみると、雨はまだ降り続いている。今日は家の中で遊ぼう、と正弘は一階に下り、居間に入った。
母親は買い物にでも出掛けたらしく、台所にもいなかった。祖父母も用事があるのか、どこにもいない。
しめた、とにやけた。母親と祖父母はテレビゲームの時間を制限してくるが、その点、父親は甘い人間だ。
高志自身もゲームが好きなので、一緒にプレイしてくるほどだ。だから、今日は思う存分ゲームが出来る。
 ここ数日は、幼馴染みから借りた宇宙を舞台にしたアクションゲームをしていたが、久々にRPGをやろう。
攻略の難しいダンジョンに入ったが、地下一階で詰まってしまった。だが、そこを攻略しなければ進めない。
破邪の聖剣を揃えなければ魔王の城に入っても魔王にとどめを刺せないので、ゲームクリアは不可能だ。
二人の姉は、今日は六時間目まで授業がある。だから、二人が帰ってくる前にダンジョンを攻略しなければ。
智代も和代も、正弘がゲームをしていると横からちょっかいを出してくる。そのせいで、ミスをすることもある。
だが、二人の姉が家にいなければ、ちょっかいを出されることはない。だから、今日はやりたい放題だ。
 なんて、楽しい日だろうか。


 衝撃で、目が覚めた。
 一時間半以上もゲームをプレイし続けた正弘は疲れてしまったので、ソファーに横たわってうとうとしていた。
ぼんやりした視界に入った掛け時計は、午後六時半を指していた。そろそろ起きないと、と体を起こそうとした。
だが、息が止まった。雨音だけが耳に入ってきた。まだ夢の中にいるのではないか、と正弘は目を見開いた。
泥と血に汚れたものが、そこに立っていた。母親のお気に入りのリビングテーブルが、無惨に叩き割られている。

「うへははははは」

 粘着質で気色悪い、不気味な笑い声が聞こえた。

「ふはへははははははは」

 ずぢゅり、と汚れた大きな足が何かを踏み締めた。正弘が視線を下げると、そこには父親の背があった。
オフホワイトのポロシャツを着た広い背中。いつも背負ってくれる温かい背中。その下から、何かが流れている。
つんとした刺激臭が鼻を突く。とても凄い量。コップの牛乳をひっくり返した時よりも、遥かに多い量の液体だ。
 蛍光灯が一つ割られているので、リビングの中は薄暗かった。外ではざあざあと雨が降り続け、止みそうにない。
雨が止まないと、智代はまた文句を言うだろう。せっかくあたしの誕生日なのに、と膨れっ面になってしまうだろう。
智姉は我が侭だから、と正弘はちらりと考えていた。だが、正弘のそんな儚い現実逃避はすぐに破れてしまった。
これは、血だ。血だ。血だ。凄い量の、お父さんの血だ。正弘は吐き気が込み上げ、喉の奥で胃液の味を感じた。

「死ね死ね死ね死ね死ね」

 大柄なその影は、正弘に歩み寄ってくる。正弘が事態を飲み込めずにいると、その者は腕を振り上げた。

「死んじゃえいっ!」

 一撃で、正弘の背後の壁が砕けて破片が散った。壁紙が破られて内壁にヒビが入り、ぱらぱらと粉が落ちる。
そんなことをしたら、お母さんに怒られる。壁に落書きしてはいけないのだから、壊してもいけないのだから。
ソファーが傾き、正弘は軽々と吹き飛ばされた。宙を漂いながらそんなことを考えたが、直後、衝撃に襲われた。
後頭部と背中が壁に叩き付けられ、掠れた息が出た。頭どころか全身が揺さぶられ、喉が詰まり、力が入らない。
壁からずるりと落ちた正弘は、動けなくなった。その者は正弘が死んだと判断したのか、ぐるりと顔を動かした。

「死ね、死ね、死ねばいいんだぁああっ!」

 べぎり、とその者の履いているブーツが正弘のゲーム機を踏み潰した。あ、と思ったが手も伸ばせなかった。
せっかく、ダンジョンを攻略したのに。ようやく、魔王に戦いを挑めるのに。そんなことをしては、全てが水の泡だ。
台所から、母親の鋭い悲鳴が聞こえた。だが、硬い物を打ち砕く音が聞こえた途端、その声が途切れてしまった。
べしゃべしゃっ、と粘ついた水音が溢れ出し、台所の床からじわじわと赤黒い水が流れて生臭い匂いが増した。
 お父さんもひどいケガをしている。お母さんもケガをした。大変だ、病院に行かないと。だが、動けない。
あの巨大なものは台所の引き戸に倒れ込み、ガラスを割った。破片が血に沈み、大きな足が廊下を踏みにじる。
べたべたと足跡を付け、今度は奥の部屋に向かった。廊下に出てきた祖父は身動いだが、逃げられなかった。

「きゃははははははははは!」

 噴水のように噴き上がったものが、廊下に天井に張り付いて雫を落とした。まるで、雨が降るような光景だった。
ぼたぼたと落ちた赤黒い雫が、その者の顔を伝う。人間のそれとは懸け離れた、ロボットに良く似た顔だった。
 銀色。無機質。グリーンのゴーグル。左耳のアンテナ。正弘は薄い意識の中、サイボーグだ、と判断した。
テレビのニュースや新聞記事で、見たことがある。遠い国に出掛けた自衛隊の戦闘部隊が、あんな格好だった。
これはロボットなのかと両親に尋ねたら、人間だよと説明されて不可解に思った。あれが、人間のはずがない。
目もない、口もない、鼻もない、機械の固まりだ。正弘には、サイボーグとロボットの区別が付けられなかった。
だが、あれは服を着ている。テレビで観た自衛隊の戦闘型サイボーグと同じ、迷彩柄の服を身に付けている。
 じゃあ、あれは。正弘が目を剥いていると、どかどかと乱暴な足音が駆け抜けて今度は二階に駆け上がった。
嫌あ、助けて、と姉達の絶叫が響いたが、すぐに潰された。そしてまた、あのタガの外れた笑い声が流れてきた。

「ふへはへはははひゃひゃひゃひゃひゃひゃー!」

 何が起きているのか、理解出来ない。したくない。逃げなきゃ、と正弘は痛みで痺れた足を動かし、後退った。
外に出ないと。近所の人を呼ばないと。警察も呼ばないと。正弘は立ち上がろうとしたが、出来なくなった。
真正面には、目を見開いたまま絶命している父親の死体があった。半開きの口からは、でろりと舌が出ている。
腹は割かれ、ぬらぬらと光るものがいくつも落ちていた。肌色のチューブのようなものが、こぼれ落ちている。

「…ぁ」

 掠れた声を漏らし、正弘はがちがちと顎を鳴らした。足の間を、生温いものが流れ落ちる。

「うあ」

 死んでいる。お父さんは、死んでいる。

「うあああああああっ!」

 正弘が恐怖を声にして吐き出すと、二階から転げ落ちるように足音が振ってきた。どん、と床全体が揺れる。

「死ね死ね死ねしねええええええええっ!」

 居間の壁を壊しながら突っ込んできたその者は、正弘の前に立ち塞がり、血みどろに汚れた手を振り上げた。

「死んじゃええええええええっ!」

 正弘は立ち竦んでいたが、膝が折れて崩れ落ちた。そのため、最初の一撃は逃れ、汚れた拳は壁に埋まった。

「あふはふはははははは」

 父親、母親、祖父母、姉達の返り血を顔に貼り付けている自衛隊の戦闘サイボーグは、正弘を見下ろした。

「知ってるか、知ってるかおい、知らないってことはないだろう?」

 正弘は必死に喘いだが、息も出来なかった。涙は出ているのに、喉はひび割れそうなほど乾き切っている。

「殺したいんだよ殺したいんだよ、全部全部全部全部全部全部全部ぜんぶううううううっ!」

 壁から拳が引き抜かれ、ぎ、と手が開く。指の関節の間には、薄い皮膚と肉片が挟み込まれている。

「殺すんだよ、壊すんだよ、死んだんだ、死んだんだよ、だから殺していいんだよ!」

 戦闘サイボーグはたたらを踏み、父親の臓物を踏んだ。内臓が潰れ、中から汚らしい体液が飛び出した。

「宇宙だよ、宇宙」

 訳が、解らない。

「宇宙宇宙宇宙宇宙宇宙!」

 正弘の右腕が掴まれ、握られる。痛い、と叫ぶ前に握り潰され、肘から先の感覚が失せた。

「行きたいか、行きたくねぇだろ、行きたいだろ、行けよ、行っちまえよ、行け行け行け行けいけええええ!」

 左腕。痛い。右足。痛い。左足。痛い。おかしな方向に曲げられた足からは、白く尖ったものが飛び出している。

「行っちまええええええええ!」

 腹に手が掛けられ、貫かれた。その勢いで上半身が跳ね、後頭部が床に当たったが、痛くもなんともなかった。

「行きたくないんだよ、行きたいわけがないんだよ、馬鹿か、馬鹿だろ、馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ばあーっか!」

 正弘の腹部を貫いていた手が引き上げられ、手首に絡んだものが千切れる。それは恐らく、正弘の内臓だろう。
折れた肋骨、砕けた背骨、割られた骨盤。血の気が薄らいでいくと感情の起伏も弱まり、何も思わなくなった。

「死ね死ね死ね死ねみんな死ね死ね死んじまえ全部死んじまえ死んじまえ死んじまえ!」

 自分自身の内臓を、無造作に口に詰め込まれる。歯が折れる。喉が詰まる。顎が外れる。血で、片目が潰れる。

「ふへはははははははは!」

 詰め込みきれなかった内臓を弄び、戦闘サイボーグは笑う。砂場で遊ぶ子供のように、掬い上げ、落として遊ぶ。
足をばたつかせて笑い転げている。どかどかと床が踏み鳴らされ、うるさい。雨音が聞こえなくなっている。
ばらばらと激しい音がした。窓と屋根を叩く雨粒だ。しかし、それにしては大きい。まるで、ヘリコプターだ。
激しい閃光が窓を焼き、薄暗かった部屋を明るくさせる。戦闘サイボーグは跳ねるように飛び上がり、立った。
 直後、玄関が破られた。激しく床を揺らしながら、沢山の人影が駆け込んでくる。手には、何かを持っている。
自動小銃だ。戦闘サイボーグはがくがくと肩を揺らしながら玄関に向いたが、その笑い声が銃声で途切れた。
銃声が何度も発せられ、空気に硝煙の匂いが混じる。バックファイヤが消えた後、ゆっくりと影が傾いた。
膝を折り曲げて俯せに倒れた戦闘サイボーグは、音割れした音声を発していたが、無防備な背に銃撃された。
着弾と同時に体が跳ねてびくびくと動いたが、銃声が切れると動かなくなり、背中の穴からヒューズが飛んだ。
戦闘服の背には焦げた穴が大量に空いており、そこから流れ出した鮮やかな赤い液体が床に広がっていった。

「制圧完了! イトウ一士、機能停止しました!」

 手前の戦闘服姿のサイボーグが、後方に叫んだ。その隣で自動小銃を構えるサイボーグが、肩を竦める。

「ひでぇなこりゃ。この野郎、子供まで殺しやがった。見境なしかよ」

 小隊長、と左側にいたサイボーグが振り返った。戦闘服姿のサイボーグ達の奧から、別のサイボーグが現れた。
小隊長と呼ばれたサイボーグは他の隊員とは違い、銃を構えていなかった。床に倒れたサイボーグを見下ろす。

「イトウの脳波は、ないようだな。死傷者数を調査して報告しろ」

「イトウの奴、相当暴れたみたいですからね。この様子だと、この家の民間人が生存している見込みは薄いでしょうが、一応脳波測定はしますよ」

 規則ですから、と自動小銃を大きな肩に掛け、一番最初に発言したサイボーグが廊下の奥に進んでいった。
行動開始、と小隊長が命令を下すと、戦闘服姿のサイボーグは一斉に駆け出して家の中に散らばっていった。

「小隊長。地元警察の鑑識と連絡が取れました。交渉は成立です」

 小隊長の背後から、また別のサイボーグが現れた。小隊長は振り返る。

「事後処理を開始しろ。近隣住民の通報が駐在所に届いたはずだ、警官が来る前に撤収する、十五分以内だ」

「了解。回収するのは、イトウ一士だけですね」

「解っているならさっさと動け、時間がない!」

 小隊長が声を張り上げると、そのサイボーグは玄関から出ていった。正弘は、淡々とこの出来事を眺めていた。
映画みたいだ、とちらりと思った。すると、小隊長の視線がこちらに向いた。グリーンのゴーグルと目が合う。

「ん」

 小隊長は父親を跨いで、正弘の前にやってきた。胸元から聴診器のようなものを出し、正弘の頭に当てた。

「私の声が聞こえるか?」

 正弘は頷くことも声を出すことも出来なかったが、僅かに瞼を動かした。小隊長は、突然叫びを上げた。

「搬送用意急げ! 生存を確認した! 近隣の病院にも連絡して緊急手術を要請しろ!」

「えっ、なんですって!?」

 玄関から駆け込んできたサイボーグに、小隊長は更に叫ぶ。

「お前の聴覚は壊れているのか、命令だ、聞こえなかったのか!」

「ですけど、小隊長」

 二階から下りてきたサイボーグの一人が、小隊長と正弘を見下ろしてきた。

「そのまま放置しておけば、そいつ、死ぬんじゃないですか? その方がいっそ、証拠が残らないんじゃ」

「この場でお前のブレインケースを引き摺り出してやろうか」

 小隊長は素早い動作で腰のホルスターから拳銃を引き抜き、階段の途中に立っているサイボーグに向けた。

「それとも、バッテリーボックスを撃ち抜かれたいか? 五秒以内に好きな方を選べ、タカシマ」

 小隊長の持っている拳銃は、ガバメントだ。ガンアクションゲームにも出てきた拳銃なので、正弘は覚えていた。
タカシマと呼ばれたサイボーグは両手を挙げ、弱々しく、冗談ですよ、と返した。小隊長は、銃を下げない。

「空気の読めない男は嫌いだ。特に、下らない冗談を言う類の男はな」

 小隊長はガバメントをホルスターに戻してから、正弘に向いた。

「安心しろ。もう、大丈夫だからな。じきに助けが来る、それまで頑張るんだ」

 この人は女の人だ。声こそ低く、態度こそ強かったが、口調が柔らかい。だが、正弘にその姿は見えなくなった。
彼女の言葉に、正弘は脱力しそうなほど安堵した。もう、怖いものはいない。この人が、倒してくれたから。
ウダガワ小隊長、と誰かが彼女を呼んでいる。クラスにもウダガワさんがいたな、と薄らぐ意識の中で考えた。

「一応、名乗っておこう。私はレイチェル・ウダガワだ」

 変わった名前の、変わった女の人だ。正弘の知る範囲では、こんな喋り方をする人は誰一人としていなかった。
女性サイボーグがいることを知ったのも、初めてだった。外見では、皆が皆、男のようにしか見えなかったからだ。
レイチェル。そういえば、先程までプレイしていたRPGに、そんな名前の女戦士がいた。とても強いキャラクターだ。
 正弘は、次第に眠たくなっていた。もう、何も感じない。光も見えず、音も聞こえず、暗闇の中に放り出された。
六月なのに、寒かった。手も足も冷え切っていて、凍えてしまいそうだ。プールの中も、こんなに寒いのだろうか。
明日は智代の誕生日だ。家族で出掛ける日だ。どこに行くのだろう。また瀬戸大橋を渡って、本州に行きたい。
早く起きないと、夕ご飯に間に合わない。お母さんに怒られる。ゲームを片付けないと、智代に取られてしまう。
今日の授業のことを、和代に話したい。祖父母にも話したい。明日、出掛ける準備をしなければいけないのに。
 眠たい。でも、眠りたくない。





 


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