手の中の戦争




第八話 夏祭りの夜に



翌日。久々に家に帰った私は、お母さんから浴衣を着付けられていた。
私が家に帰ってきたことと、浴衣を着せることが楽しいのか、お母さんはうきうきしながら着付けてくれた。
紺の金魚柄で、帯は朱色だ。柄が落ち着いていて大人っぽい感じがして、私はちょっと気後れしてしまった。
袖をつまんで引っ張ってみたり、文庫結びにされている帯を見てみたりしたが、あまりしっくり来なかった。
戦闘服や作業服ばかりの色気のない生活だったので、急にこんなに女らしい恰好をすると、変な感じがする。

「うーん…」

私が唸っていると、お母さんは私の背後から姿見に映る私を見た。

「大丈夫よ、似合うわ。これで髪もいじれたらもっといいんだけど、訓練に行く前に切っちゃったものねぇ」

「だって、ヘルメットを被っていると邪魔なんだもん」

私は、半月程度の内にまた少し伸びた髪に触れた。元からショートカットなので、少しでも伸びるとすぐ解る。
夏休み訓練を始める前に、少しでも短い方がいいだろう、と思って切ったのだが、また伸びてきてしまった。
だけど、あんまり切りすぎると男みたいになってしまうので、私は少々の鬱陶しさは我慢することにした。

「はい、これ。結構重いわね」

お母さんはテーブルの上に載せておいた麻のポシェットを、私に渡した。中には、グロック26が入っている。
それを受け取った私は、ポシェットを肩から掛けて、もう一度姿見を見た。本当なら、巾着が良いのだけど。
だけど、それでは武器が持てないし、体にぴったりした浴衣ではホルスターを内側に仕込むことも出来ない。
なので、妥協案として、和装でもそれほど違和感がないであろうデザインのポシェットを提げることにした。
私はポシェットの蓋を開けて、その中に入れた小型の拳銃と、北斗と南斗のドッグタッグがあることを確かめた。
それは、以前に北斗と南斗からもらったものと酷似しているけど、朱鷺田隊長の言う本物に近い偽物である。
傍目に見ただけでは区別が付かないが、私が混同しては困る、ということで区別が付けられるようになっている。
本物には二人の名前は入っていないのだが、偽物には二人の名前の頭文字が、本当に小さく刻まれている。
敵も本物と偽物の区別が付くのではないだろうか、と私は不安を感じたが、そういうことは考えないでおこう。
今は、任務をきっちりこなすのが先だ。そう思っていると、お母さんは私の両肩を、ぽんぽんと優しく叩いた。

「しっかりやるのよ、礼子」

「うん、頑張ってくる」

私はお母さんに振り返り、頷いた。お母さんは不安げな目をしていたが、笑ってくれた。

「浴衣、あんまり汚すんじゃないわよ。あ、でも、戦いになったら無理かな?」

「戦闘にならないに越したことはないよ。でも、隊長もいるから、大丈夫じゃないの?」

私が返すと、お母さんはちょっと眉を下げた。

「だけど、朱鷺田さんってちゃんと強いのかしら?」

「一尉だもん、強くなきゃおかしいよ」

私は確証はなかったが、そう答えておいた。考えてみたら、朱鷺田隊長が戦っている様なんて見たことはない。
訓練も一緒にやったことなんて数えるほどだし、そのどれもが基礎訓練程度で、戦闘の訓練ではなかった。
だけど、朱鷺田隊長は普通の人ではない。雰囲気は穏やかだけど、目付きはやたらに鋭いし言うことが違う。
私の想像でしかないが、朱鷺田隊長の過去は相当なものに違いない。戦闘の経験だって、ちゃんとあるはずだ。

「じゃ、行ってくるから」

私は自分の部屋の扉を開けて、廊下に出た。お母さんは私に続いて廊下に出ると、手を振った。

「行ってらっしゃい」

「行ってきまーす」

私はとんとんと階段を下りて、一階の廊下を抜けて玄関に向かった。そこには、朱鷺田隊長とお父さんがいた。
玄関先で話し込んでいたらしい二人は、私に気付いて振り向いた。お父さんは、玄関から廊下に下がった。

「いいじゃないか、礼子。可愛いぞ」

頬を緩ませ、お父さんは私の浴衣姿を褒めてくれた。私はそれが照れくさて、上手く答えられなかった。

「…うん」

玄関に用意してあった黒の下駄を引っ掛けて、外へ出る。朱鷺田隊長も一緒に外へ出ると、私を眺めてきた。

「そういうのを着ると、お前が女だってことを思い出すよ。戦闘服だと、男か女か解らないからな」

「そりゃどうも」

褒めているのか貶しているのかよく解らない朱鷺田隊長の言葉に、私は曖昧な返事をした。どっちなのやら。
朱鷺田隊長も、その理由は解らないが、浴衣姿だった。黒地の雨模様で、えんじ色の帯を締めている。
似合っているか似合っていないかと言えば、似合っている部類に入るのだけど、違和感の方が強かった。
私がかなり怪訝な顔をしていたらしく、朱鷺田隊長は苦々しげにした。浴衣の袖に腕を入れ、腕を組む。

「間宮の奴にやられたんだよ。どうせなら着ておいた方がいいだろう、って押し切られちまってな」

「それは意外です。でも、悪くありませんよ」

そうか、すばる隊員が犯人か。私が素直な感想を漏らすと、朱鷺田隊長は眉根を歪める。

「おかげで、武装が大分減っちまったよ」

「それでは、うちの娘をお願いします、朱鷺田さん」

お父さんは、朱鷺田隊長に深々と頭を下げた。朱鷺田隊長も、頭を下げ返した。

「承知しております。大事な部下はきっちり守ってやりますので、ご心配なく」

では失礼、と朱鷺田隊長は下駄を転がしながら玄関から離れた。

「じゃ、行ってきます」

私はお父さんに言ってから、朱鷺田隊長に続いた。下駄なので上手く走れずに、少々遅れてしまった。
家の門から道路に出た私と朱鷺田隊長は、昼間の暑さが残っている道路の端の歩道を、歩いていった。
二人分の、タイミングが違う下駄の足音が響く。からん、ころん、からん、ころん、といい音がしている。
住宅街を出て、人通りの増えた市街地に繋がる道を歩きながら、私は表情の見えない朱鷺田隊長を窺った。
薄暗いからと言うこともあるのだが、いつにも増してそうだった。この人は、私以上に感情を見せない。
袖の中で、腕を組んだままでいる。だが、そうしていても、朱鷺田隊長の身のこなしに隙はなかった。
歩道を明るく照らしている街灯の下を抜けて、商店街に近付いていくと、騒がしさが僅かに聞こえてきた。
駅前商店街を突っ切った先にある神社は、境内に繋がる階段にいくつもの提灯が下がっているのが見えた。
そこから聞こえてくる、笛や太鼓の祭り囃子と人々のざわめきが、夏祭りらしい雰囲気を生み出している。
商店街に入ると、同じように浴衣を着た女の子達がきゃあきゃあと騒ぎながら、私達の傍を通りすぎた。
不意に、朱鷺田隊長はため息を零した。私よりも随分早かった歩調を緩めて、私に合わせて歩いてくれた。

「俺も、切りの良い時に結婚でもしとくべきだったかな」

「そういえば、隊長って独身なんですよね」

私は朱鷺田隊長の隣に付き、見上げた。朱鷺田隊長は、まぁな、と短く答えた。

「若い頃は外人部隊になんか入っていたせいで、適当な結婚相手を見つけられなかったからな」

「知りませんでした」

私が言うと、朱鷺田隊長は遠くを見るように目線を投げた。

「本当なら俺は自衛隊になんか入れないはずなんだが、高宮重工が手を回してくれたらしい。俺としては、あのまま外人部隊にいても良かったんだが、どういうわけだか帰国させられて、お前らの隊長なんかやらされちまっている。給料が良いから、続いているようなもんだ」

「はぁ」

私は、気のない相槌を打った。朱鷺田隊長は、私を見下ろしてきた。

「まぁ、その理由は解っているんだがな」

「そういえば、隊長」

私は朱鷺田隊長が隊長となった理由も気になっていたが、今はあの単語のことがかなり気になっていた。

「メモリー・デルタって、なんのことですか?」

「一言で言えば、危険物だ」

朱鷺田隊長の表情が、ほんの少しだけ厳しくなった。

「今の人類にとっちゃ、過ぎた代物だ。俺も、馬鹿共の上になった時に中身を一通り見せられたが、ぞっとしたぜ。北南はそいつと高宮重工が保有する人型兵器を元にして造られたんだが、その技術の全てを使ったわけじゃない。十分の一も使っていない、と美人の所長が以前に言っていたからな。そんなデータが十分の一であっても外に漏れたら、間違いなく世界は混乱する。色んな意味でな」

「…なんか、最後だけ話が急に大きくなった気がするんですけど」

朱鷺田隊長らしからぬ飛躍ぶりに、私は困惑した。朱鷺田隊長は、がっしりした肩を小さく竦める。

「仕方ないだろう、事実なんだから」

「南斗も似たようなこと、言ってました。十年前の爆発事件に、神田さんって関わっていたんですね」

私は歩いているうちに少しずれてしまった、ポシェットの位置を直した。朱鷺田隊長は、声を潜めた。

「聞いたのか?」

「少しだけですけど。最後の方ははぐらかされちゃいましたから」

「そうか」

朱鷺田隊長は、安堵とも落胆とも付かない言葉を漏らした。歩調をまた元に戻し、私より少し先を歩いていった。
商店街を抜けて、神社に続く道に出る。道の両脇にはずらりと夜店が並んでいて、人通りも格段に増えていた。
焼きそばやたこ焼きの店からソースの匂いが、綿飴の店からは甘ったるい匂いが、熱気と共に流れてくる。

「鈴木、なんか喰うか? そんなに買ってやれんが、一つ二つなら構わんぞ」

朱鷺田隊長に尋ねられた私は、立ち止まった。夜店を見回していたが、ある店で目を留めた。

「あれがいいです」

「うわ…」

朱鷺田隊長は、私の視線の先にある夜店を見て顔を引きつらせた。それは、チョコバナナを売っている店だった。
だが、そのバナナに掛けられているチョコの色が物凄い。人工着色料ばりばりの、添加物まみれの原色だった。
やたらと鮮やかなブルー、食べ物として有り得ないグリーン、蛍光色のようなイエロー、普通のチョコレートなど。
朱鷺田隊長は、明らかに引いている。それはそうだろう、あんな強烈な色のチョコレートがおいしいわけがない。
でも、私は食べたいのだ。絶対においしくないことも、体に悪いことも解っているが、無性に食べてしまいたい。

「な、何色だ?」

戸惑いながら、朱鷺田隊長はチョコバナナを指した。私は迷わず、ブルーのチョコバナナを指した。

「青で」

「お前、どういう趣味をしているんだ。青なんて、絶対にまずいに決まっているぞ。普通のにしとけ」

困ったような朱鷺田隊長に、私はにやりと笑った。

「まずいから食べるんです。それに、こういう時でないと、あんなに凄まじいものは食べられないじゃないですか」

「北斗じゃないが、俺もお前が理解出来ない」

そう言いながらも、朱鷺田隊長は小銭入れを取り出した。私は、一足先にチョコバナナの夜店に向かっていった。
朱鷺田隊長は私の考え方を理解しかねるらしく、しきりに首を捻っていた。それは、至極当然の反応だと思う。
でも、あんなにまずいチョコレートを食べる機会なんて滅多にないのだから、逃しては惜しい気がするのだ。
我ながら、妙な楽しみ方だとは思うけど。




ブルーのチョコバナナを手に、私と朱鷺田隊長は神社の境内に入った。
盆踊りが行われているやぐらから少し離れた、物陰にあったベンチに並んで腰掛けて、ぼんやりとしていた。
私は、予想通り全然おいしくないチョコバナナを囓り、朱鷺田隊長はセブンスターをひたすら吹かしていた。
私の家にいる時は気を遣って吸っていなかったので、ここぞとばかりに吸っていて、辺りは煙たくなっている。
至るところに吊り下げられた提灯の後ろなので、明かりも弱く、朱鷺田隊長のタバコの赤い火が目立っていた。
私は、チョコバナナの青いチョコとその上に付いた大量のカラースプレーを舐めつつ、バナナを食べていた。
まずい。チョコなんてただ甘いだけで、後は人工着色料の味だけだし、チョコレートらしさなんて皆無だ。
カラースプレーだって似たようなもので、中心のバナナで口の中の味を誤魔化しながらなんとか食べている。
これは、食べて楽しむものじゃない、見て楽しむためのものだ。全く、誰がこんなものを考えたのだろう。
そして、なぜこんなものを売っているのだろう。でもって、それをわざわざ食べている私も、充分変だろう。
だが、それがいい。私は、下駄の鼻緒が指の間に食い込んで少し痛い足を気にしながら、黙々と食べていた。

「だが、未だに信じられないな」

朱鷺田隊長は、五本目のタバコを吸いながら呟いた。

「お前みたいな一般家庭の娘が、なぜ俺達と戦い続けることを決めたんだ」

「別にいいじゃないですか。私が決めたんですから。それに、選択肢を渡してきたのは、隊長じゃないですか」

私は、チョコバナナに刺さっている割り箸に気を付けながら、下の方を食べた。朱鷺田隊長は、煙を吐き出す。

「まぁ、それもそうなんだがな。しかし、お前の親父さんと俺の歳は、そう変わらないんだなぁ」

「そういえばそうですね。うちのお父さんは四十五歳で、隊長は四十二歳ですから」

私が返すと、朱鷺田隊長はタバコを口元に戻した。

「てぇことは、親父さんが三十の時の子供か」

「で、お母さんは二十五歳でした。なかなか上手く行かなかったらしくて、色々と苦労したんだそうです」

私は、チョコバナナを三分の二ほど食べ終えた。唇を舐めて、こびり付いてしまったチョコレートを拭い取る。

「だから、かなり可愛がられもしましたけど、締めるところはきっちり締められました。自転車だって最初から補助輪がなかったし、ちょっといけないことをしたら一人で謝りに行かされたし、食べ物の好き嫌いを作らないようになんだって食べさせられたし、テレビの時間もきっちり二時間に決められていて、夜はすぐに寝かしつけられたから小さい頃は夜更かしなんて出来なかったし、本屋に行けば漫画よりも子供向け小説を買い与えられたし、おもちゃの類も家の手伝いをしないと買ってもらえませんでした」

「ほう。そいつは随分と立派だな」

「お父さんもお母さんもきっちり躾けられて育ったんだそうで、で、私もそうするって決めていたんだそうです」

「だから名前が、礼子、か。麗しいでも命令の令でもなくて、礼節の礼か。最近の子供にしては渋い名前だと思ってはいたが、ちゃんとした理由があるなら納得が行く」

朱鷺田隊長は、吸い殻で一杯の携帯灰皿に五本目のタバコを押し付けた。私は、チョコバナナを食べ切った。

「そうらしいです。まぁ、私もこの名前は結構好きですけどね。そういう隊長の昔って、どうだったんですか?」

「聞いて面白いもんじゃないから、聞かない方がいい」

朱鷺田隊長の口調はいつも通りだったが、語気が少々険しかった。まずかったかな、と私はすぐに謝った。

「あ、すいません」

「いや、構わん。それで、お前を待っている間に、親父さんから十年前の話を聞いてみたんだが」

朱鷺田隊長はセブンスターのソフトケースから新しいタバコを出すと、唇に挟んでライターで火を灯した。

「十年前は、ここに住んでなかったんだな。もうちょっと都心部にいたんだな」

「あ、はい。そうです」

私は、チョコバナナのなくなった割り箸で、夜空の東側を指した。小さい頃に住んでいたのは、そっちなのだ。

「十年前のあの事件が最初に起きた場所に、割と近い場所だったので、事件が頻発していたんです。一度だけですけど、私、ちょっと巻き込まれちゃったんですよ。外出するのは危険だから、ってことで幼稚園に行けなかったので、その日は公園で遊んでいたんですけど、雨が降ってきたから乗っていった三輪車を忘れてきちゃったんですよね。お母さんは、三輪車を取りに行くのは明日でもいい、って言ったんですけど、普段から忘れたらすぐに取りに行けって教えられていたから、そうしたんです。そうしたら、なんか、変なものが現れちゃいまして」

「変なもの?」

朱鷺田隊長の相槌に、私は割り箸を動かして夜空に大きな四角を書いた。

「変なものです。今から考えてみると、有り得ないものなんですよね。物理的にも何にしても。だって、家なんかよりも遥かに巨大な戦車が空に浮いていたんですから。しかもそれが人型に変形して、私のすぐ前に降ってきたんです。今から考えると、それは夢じゃないのかって思うんですよね。毎日のように爆発事件のニュースをやっていて、現場に残っている機械らしき破片から想像されたロボットの映像なんかが流されていたから、その辺のことが頭に残っていたんじゃないかって思うんです。しかも、その日は強い雨が降っていて寒かったから、ひどい風邪を引いちゃったんですよね。だから、夢と現実がごっちゃになったんじゃないかなーって」

「空飛ぶ戦車か」

朱鷺田隊長は、興味深げにした。私はこの話を言ってしまったことを、少しだけ後悔し、目を伏せる。

「信じないなら信じないで構いませんよ。今までもそうでしたから。夢だって言われて、笑われましたから。私も、あれが現実だなんて思っていませんし」

「今でも、本当にそう思うのか?」

朱鷺田隊長の鋭利な眼差しが、私を捉えた。私は目を上げたが、また伏せてしまった。

「そりゃ、あの二人とずっと一緒にいると、あれは本当のことだったんじゃないかって思ったりもしますけど、小さい頃のことでしたから本当かどうかなんて解りませんし」

「そうか」

朱鷺田隊長は立ち上がると、弾切れだ、と空になったタバコのケースを振り、明るい通りに歩いていった。
私も立ち上がると、手近な場所にあったゴミ箱にチョコバナナの割り箸を捨ててから、またベンチに戻った。
朱鷺田隊長が戻ってくるのを待ちながら、十年前の記憶を呼び起こしたが、未だにあの出来事は信じていない。
両親だけでなく、幼稚園や近所の友達にも何度となく話したけど、誰一人として信じてもらえなかったのだ。
だから、私も、あの日のことを信じないことにした。夢なら夢で終わらせておいた方がいいのだと、結論付けた。
もういい、このことは忘れよう。今は任務に集中する方が先だ、十年も前のことを考えている場合じゃない。
私はポシェットに手を当てて、その中に入れているグロック26の感触を確かめて、雑踏に目を配らせた。
すると。一際騒がしく喋りながら歩いていた、派手な恰好をした女子の一団が私に気付き、目を向けてきた。
それは、同じクラスの女子達で、特に目立つグループの子達だった。その中の、リーダー格の子が私を見ている。
その目には興味と嘲笑が入り混じり、あまり気持ちの良いものではなかった。私は、その目をじっと見返した。
グロック26を、握り締めながら。





 


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