アステロイド家族




芳しき秋



 どうしても寝付けなかった。
 ベッドを囲むカーテンの内側に凝った暗闇を見つめながら、アウトゥムヌスは自責していた。ヤブキを無下にした わけではないが、彼に会わせる顔がないから、どうしても向き合えなかった。その好意を受けられなかった。だが、 彼はそうは思わなかったようで、頼りない足取りで姿を消した。ちゃんと言葉にすればよかった、何が不安なのかを 明言すべきだった、と後悔しても手遅れだ。ヤブキを傷付けてしまった。
 枕元の情報端末には、姉妹からのメールと父親からのメールとサナからのメールが届いていたが、ヤブキからの メールは一通もなかった。それが彼に与えた痛手の強さを現しているようで、アウトゥムヌスは胸と共に胃がきつく 痛んでしまった。栄養剤と生理食塩水の点滴のパックは交換されたばかりなので中身がたっぷり残っていて、左腕 の内側に刺されているチューブが付いた注射針が煩わしかった。

「うー……」

 どうしたらいいのだろう。どんな言葉を掛けるべきなのだろう。どうして、こうなってしまったのだろう。

「大丈夫、問題はない」

 口癖である言葉を自分に言い聞かせてみるが、そんなもので紛れるはずもない。そもそも、なぜこの言葉を口に するようになったのか。大丈夫、問題はない。誰に対して大丈夫だと言い、どんな問題に対して問題はないと言って いたのか。大丈夫、問題はない。言葉を繰り返すと、旧い宇宙の夢に混じっていた記憶が呼び起こされた。
 大丈夫、問題はない。アウトゥムヌスがただの脆弱な人間であり、母親から科せられた役割を知らずにいた頃、 やはり何も知らずに彼に恋い焦がれた。彼は旧人類の生き残りという立場に苦しみながらも必死に生きていたが、 その度に世間や新人類が彼の道筋を阻んだ。せめて寄り添ってあげたいと願い、彼に思いを伝えて、通じ合おうと したが、新人類達は旧人類である彼を傷付けようとするがあまりにアウトゥムヌスを陵辱した。だが、陵辱した罪を 負わせられたのは彼であり、新人類の男達ではなかった。
 その後からだ。不安を誤魔化すための言葉を、自分に言い聞かせ始めたのは。大丈夫、問題はない。避妊薬の 処方が間に合わなかったから、不運にも受胎してしまった子供を堕胎した時に言った。大丈夫、問題はない。彼が 収監されてしまった時も、声を震わせないようにしながら言った。大丈夫、問題はない。出所してきた彼を出迎え、 家と呼ぶには狭すぎて汚らしい住み処に向かった時も、笑顔を作って言った。大丈夫、問題はない。これまでの 理不尽な扱いに耐えかねて新人類に抗う術を模索し始めた彼を見つめて、その未来が開けることを祈って言った。 大丈夫、問題はない。彼の思想に賛同した第三人類が蜂起し、戦争が始まり、大きなうねりとなって太陽系全体を 飲み込んでいった時も、彼に寄り添いながら言った。大丈夫、問題はない。戦闘中に肉体を破損してしまい、生体 コンピューターとして彼の機動歩兵に搭載されることに決めた時も、彼に言った。大丈夫、問題はない。

「そんなわけ、ない」

 アウトゥムヌスは背を丸め、枕にしがみついた。長い髪が乱れ、歪んだ顔を覆い隠す。

「辛い……」

 だから、強くなるしかない。二度と彼を苦しめないために、辛い目に遭わせないために、アウトゥムヌスが立派な 大人になってヤブキを支えるのだ。けれど、思うようにならない。国家資格試験の結果は芳しくないし、定期テスト の点数だって落としてしまうし、体も悪くしてしまうし、何よりヤブキに会えないのが辛い。会っている時は幸せでも 離れてしまうと辛いから、なるべく甘えないようにしていたのに、我慢すればするほど辛くなる。けれど、これぐらいの ことを耐えられなければ立派な大人にはなれない。だけど。
 目尻から溢れた涙が枕に吸い込まれ、喉の奥で泣き声が詰まった。アウトゥムヌスが寂しさと不安と具合の悪さ で震えていると、窓が叩かれた。こんな夜中になんだろう、とアウトゥムヌスが顔を上げて振り向くと、嵌め殺しの窓 の外には、サイボーグの男が浮いていた。両足のスラスターを用いて飛んでいるが、重心が今一つ不安定だ。

「ジョニー君……」

 アウトゥムヌスが徐々に目を見開くと、ヤブキは上を示した。屋上に出てきてくれ、という意味かとアウトゥムヌス が同じ仕草をしながら問い掛けると、ヤブキは大きく頷いた。そして、ヤブキはふらつきながらも高度を上げ、屋上へ 向かった。アウトゥムヌスは驚きと戸惑いとその他諸々の感情に見舞われたが、唇を引き締めて堪え、反重力装置で 宙に浮いている点滴スタンドの土台であるプレートを脇に抱え、備え付けのスリッパを履いた。
 階段を昇っていけるほど気力も体力もなかったので、エレベーターに乗って屋上に行った。アウトゥムヌスは人工 月光を浴びてほのかに光を帯びている屋上に出ると、屋上を囲んでいるフェンスの上に、ヤブキが腰掛けていた。 だが、スラスターを切った途端にバランスを崩して転げ落ちてしまい、背中からコンクリートに突っ込んだ。あまりの 締まりのなさに、アウトゥムヌスはまたも目を丸めた。

「ふへへへ」

 ヤブキは照れ臭そうに笑ってから、着古したTシャツに付着した砂埃を払った。迷彩柄の作業着の上半身だけを 脱いでいて、袖を腰で縛っている。

「ジョニー君。所用?」

 アウトゥムヌスは居たたまれず、目を逸らす。ヤブキはアウトゥムヌスに近付いてくると、身を屈めた。

「むーちゃんこそ、起きて大丈夫っすか?」

「大丈夫、問題はない」

 そんなもの、大嘘だ。アウトゥムヌスは入院着の裾を握り締め、表情筋を動かさない代わりに手に力を込めた。

「全然大丈夫じゃないし、問題大有りっすよ」

 ヤブキはアウトゥムヌスと目線を合わせると、顎に手を添え、顔を上げさせてきた。

「だって、むーちゃんが泣きそうな顔しているっす。それのどこが大丈夫なんすか」

「大丈夫」

「肝心な時に頼ってくれないだなんて、凄く寂しいじゃないっすか。むーちゃんのことだったら、どんなことでもオイラは 知りたいし、解っていたいんすよ。それが辛いことであっても。それは、むーちゃんの一部なんすから」

 ヤブキはアウトゥムヌスを抱き寄せると、背を丸め、夜気から守るように少女の細い体を覆い隠す。

「だっ、て」

 ヤブキの硬い胸はスラスターを使用した際に生じる余熱で熱く、動力源がその内で唸っていた。アウトゥムヌスは 力の入れづらい左手で、彼のTシャツの裾をそっと握る。離されてしまわないように。

「私は、何も出来なかった。ジョニー君を助けたかったのに、私がやることは全部ジョニー君をひどい目に遭わせる ことばかりだった。体さえもジョニー君のものにならなかった。それなのに、ジョニー君は私を責めない。それどころ か、私を必要としてくれる。だから、私は頑張るしかない」

「全くもう、むーちゃんは頑張り屋さんっすねぇ」

 ヤブキは笑い出したかのように声色を上擦らせたが、泣き声に等しかった。アウトゥムヌスを抱えて腰を下ろし、 屋上のコンクリート床に座り込むと、乱れ放題の長い髪にマスクフェイスを埋めてきた。二次性徴を迎えていても、 身長もあまり伸びず、体形も未だに丸くならない、未熟な肢体の厚みと温もりを確かめてくる。姉や妹達とは違って 骨張っている体を恥じ、アウトゥムヌスは唇を噛む。

「そこまでしなくても、オイラは逃げないし、むーちゃんもいなくならない。でもって、コロニーも逃げないっす」

 アウトゥムヌスの右手を解かせたヤブキは、その小さな手に自分の銀色の手を絡ませる。

「オイラ達の幸せだって、逃げないっすよ」

「ジョニー君……」

 ヤブキの太い指と握り合った指を緩め、アウトゥムヌスは視線を彷徨わせた。嫌われてもいなかったし、疎まれても いなかったし、見限られてもいなかった。だが、不安が全て解消されたわけではない。アウトゥムヌスは思案した 後、彼に後ろを向いてくれと指示した。ヤブキはその意図を察してくれたのか、腰を屈めて背を向けてくれたので、 アウトゥムヌスはヤブキの腕を足掛かりにして、彼の広い背中に覆い被さった。

「あの、ね」

「はいはい、なんすか?」

「あの……ね」

「ゆっくりでいいっすよ、むーちゃん。ゆっくりで」

「あのね、ジョニー君。あのね」

 ヤブキの頑強な肩に頬を預けながら、アウトゥムヌスは少しずつ息を吸って、調子の悪い腹に力を込めて覚悟を 据えた。そうでもしなければ、強がりではない本音は言えそうになかったからだ。いつのまに、心から愛している彼に 対して意地を張るようになってしまったのだろう。それだけ自我が成長した証拠でもあり、少しでも良い状態の自分を 見てほしいという願望の表れでもあるが、積もり積もると辛いだけだ。以前の自分も今までの自分も、そんな簡単な ことを見失っていたから、こんなことになってしまった。だから、勇気を出さなければ。

「大丈夫ではなかった。問題も多かった」

 長い長い間を経て、アウトゥムヌスは真意を述べた。

「けれど、そう言わなければ耐えられなかった。ずっと、ずっと、ずっと。前の私も、今の私も、それほど器用では ないから。私が頑張ればジョニー君が喜んでくれると思っていたから、頑張っていた。けれど、もう頑張れそうに ない。お腹が痛い。お腹が空かない。寂しい。勉強したくない。ジョニー君とこうしていたい」

「んで、今は?」

「……大丈夫。問題は、ない」

 かつての自分が求めて止まなかったヤブキの背中に寄り掛かって、アウトゥムヌスは口角を緩める。胃の内側と 胸の奥に凝っていた異物が柔らかくなり、崩れていった。言葉と気持ちを抑え付けていたものが失せると、涼風が 通ったかのように楽になり、アウトゥムヌスはどうしても言えなかったことを言えた。

「あのね、ジョニー君。国家資格試験、落ちた。三度目」

「なんだ、そうだったんすか。オイラが訓練学校で落第した回数に比べれば、どうってことないっすよ! ちなみに、 どの国家資格っすか?」

「多次元構造式量子転換炉所有免許、及び多次元構造式量子転換炉操縦免許、及び多次元構造式量子転換炉 整備免許。全ての資格試験に三度挑み、三度落ちた」

「うえっ?」

「え?」

「それって、コロニーはコロニーでも外宇宙探索も可能な大型移民船のコロニーの動力炉っすよ。うちのコロニーで 使われている動力源は、周囲の宙域に設置したソーラーパネルっすけど、前回の教訓を元に設置したサブ電源の 動力炉も小型のクエーサー式陽子転換炉っすよ。それを扱う国家資格も必須ではあるっすけど、多次元構造式 よりもレベル高くないっすよ。そこまでコアでハイレベルな資格を取るのは、光速航行する戦艦の整備員か銀河横断 探査船の整備員ぐらいなもんっすよ。てか、ハイスクールの学力でその資格が取れたら天才すぎてヤバいっすよ。 ちなみに、何次試験で落ちたんすか?」

「三次試験。二百五十六時間の実習免除試験は合格したから、受験出来た」

「うおぇっ!?」

「それ、凄いこと?」

 アウトゥムヌスは彼の背中に隠れながら問うと、ヤブキは首が吹っ飛びそうな勢いで頷いた。

「そりゃーもう! 落ちて当然、っつーかオイラは一次試験の段階でまず無理っすね!」

「でも、受験費用。無駄にした」

「んなもん、軍人の家族なんすから、軍人の身内を支援する制度のお金を使ったに決まってんじゃないっすか。ハイ スクールの学費だって、半分は政府のお金じゃないっすか。むーちゃんは良い子っすねー、いや本当に」

「知らなかった」

 ということは、今までの苦労は無駄だったのか。途端に緊張の糸が切れてしまい、アウトゥムヌスはヤブキの背中に しがみついて肩を震わせた。安堵感もさることながら、いかに空回りしていたのかを自覚したせいで、泣けてきた からだ。ヤブキは肩越しに手を伸ばし、アウトゥムヌスの頭を撫でてきてくれた。

「気が済むまで、そうしてくれりゃいいっすよ。んで、元気になったら、食べたい物があれば……」

「おにぎり」

「んじゃ、それを」

「豚汁。キツネうどん。天ぷらそば。筑前煮。カボチャの煮付け。タコ焼き。お好み焼き。焼きそば。サバの味噌煮。 ヒジキの炒め煮。鶏ゴボウの炊き込み御飯。お赤飯。バター入り味噌ラーメン。ギョウザ。麻婆豆腐。天津飯。エビ チリ。角煮の蒸しまんじゅう。オムライス。ナポリタンスパゲティ。鶏の唐揚げ。おでん。お寿司。カブトガニ」

「え、あー……。程々にしておくんすよ? 作れるだけ作るっすけどね! むーちゃんのためならば!」

「期待」

 食べたい料理を並べたら、久々に空腹を覚えた。アウトゥムヌスは身を乗り出し、ヤブキのマスクフェイスにそっと 唇を添えてから頬を寄せた。夜気で冷えていたが、高揚して火照った頬には心地良かった。アウトゥムヌスの心身が 欲しているのは、単純に胃袋を膨らませる食べ物だけではない。ヤブキが愛情と手間を掛けて作ってくれる食事 だから、とてもおいしいし、食べたくてたまらなくなるし、満たされる。
 ヤブキの背中から膝の間に移動したアウトゥムヌスは、屋上を囲むフェンスの向こうにある鮮やかな色彩に目を 奪われた。自然公園の一角がライトアップされていて、燃えるような赤と煌びやかな黄色に紅葉した木々が、時折 吹き付ける夜風に枝葉を揺すっていた。勉強に追われすぎて、季節の移り変わりすら忘れてしまっていたらしい。 アウトゥムヌスは自然公園を示して、ヤブキに言った。退院したら、お弁当を持ってピクニックに行こう、と。
 もちろん、彼は快諾してくれた。




 後日。
 無事退院し、ハイスクールにも復学したアウトゥムヌスは、資格試験と買い出しのためにエウロパステーションに やってきたヤブキと共に件の自然公園に赴いた。紅葉シーズンが終わる寸前だったようで、赤く色づいた広葉樹 からは雨霰と枯れ葉が舞い落ちていた。イチョウ並木にはギンナンの実が散らばっていて、独特のつんとした匂い が鼻を突いてくる。芝生や花壇だけでなく歩道にも枯れ葉が分厚く積もり、柔らかな絨毯のようだった。
 マサヨシの住む官舎のキッチンを借り、ヤブキが張り切って作った弁当箱は五段重ねの重箱に収まった。中身は アウトゥムヌスがリクエストしたものばかりで、いくつかの料理はアウトゥムヌスが手伝って作った。木星と宇宙空間 が映し出されたスクリーンの中を宇宙船が横切っていき、人工池から飛び立った赤トンボも視界を横切っていった。 アウトゥムヌスは、この日のために新調した秋物のワンピースを着て長い髪を二つの三つ編みにしていた。広場に 差し掛かると、ヤブキと繋いでいた手を外し、数歩先に出た。

「これ」

 アウトゥムヌスはヤブキに向き直ると、首筋に巻いたオレンジ色のスカーフを抓んでみせた。

「そのスカーフのこと、オイラが忘れるわけないじゃないっすか。婚約記念のプレゼントなんすから」

 アウトゥムヌスの赤茶色の髪に栄えるオレンジ色を見、ヤブキは少し照れつつも、迷いなく言った。

「好きです、結婚して下さい」

「喜んで。私も、あなたが好き」

 あの日と同じ言葉で誓い合った二人は、どちらからともなく笑い出した。プロポーズも、愛の言葉も、好意を伝える ことも、何百回何千回と繰り返しているのに、互いの気持ちを確かめるとその度に嬉しくなるからだ。その気持ちを 疑うこともしなければ見失うこともなかったが、思い詰めてしまうことはある。それが解ったのだから、あの苦しみも 無駄ではなかったのだ。アウトゥムヌスはその場でくるりと回ってから、ヤブキを見上げる。

「満足」

「お弁当はこれからっすよ?」

 ヤブキはちょっと肩を竦めたが、小走りに駆けていくアウトゥムヌスを追ってくる。広場の中央にあるベンチに到着 したアウトゥムヌスは、ヤブキが来るのを待った。ヤブキが重厚な弁当箱をベンチに置いたので、アウトゥムヌスは 靴を脱いでベンチの上に立った。ヤブキはすぐにその意図を理解し、アウトゥムヌスの前に立つ。

「むーちゃんは、本当に名前通りっすよ」

「そう?」

 出来る限り背伸びをしてヤブキと目線を合わせたアウトゥムヌスに、ヤブキは笑う。

「だってそうじゃないっすか。オイラが作る御飯を食べて栄養を付けた分だけ、オイラにこれでもかってぐらいに好き を返してくれる。実りの秋っすよ。髪の色は紅葉と同じで、いや、もっと綺麗っすよ。広葉樹の葉の色が変わるのは、 寒暖差と日照時間の変動で葉緑素が分解されて色素が変わっちゃうからっすけど、むーちゃんのはそうじゃない。 永遠に、綺麗なままだ。だから、逃げたところですぐに見つけちゃうっすからね?」

 でもって良い匂いだ、と、ヤブキはアウトゥムヌスの長い髪を一束持ち上げ、嗅覚センサーに添えた。それが無性 に恥ずかしくなったが、悪い気はしなかったので、アウトゥムヌスは顔を伏せながらも口角を上げた。

「違う。見つけるのは、私の方。どこにいても、どの宇宙に生まれても、ジョニー君と生きるの」

 ヤブキのマスクフェイスを引き寄せると、アウトゥムヌスは彼の首に腕を回した。かかとどころかつま先まで浮いて しまったが、ヤブキが腰を支えてくれたので問題はなかった。人目がないのをいいことに深いキスをし、これでもかと 愛情を注ぎ合ってから、二人は額を合わせて笑い合った。
 それから、時間を掛けて五段重ねの重箱にみっちりと詰まった弁当を食べた。ヤブキの作った手の込んだ料理を 味わいながら、今後について話し合った。籍を入れるのはハイスクールの卒業直後なのか、アウトゥムヌスが大学に 進学した後なのか、それとも新居に行った時なのか、などなど。明るい未来について語るのは喜ばしく、時間が経つ のを忘れてしまった。弁当箱が空になり、日も暮れた頃、二人は手を繋いで帰路を辿った。
 この先の未来に問題があろうとも、二人一緒ならば大丈夫だ。







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