ドラゴンは眠らない




生まれ出ずる鋼



彼は、脈動していた。


冷ややかな石の内側で、青き世界の中で、魂を滾らせる。時折触れてくれる彼女は、温かく、柔らかい。
優しい声と、慈しむ言葉、そして、白い指先。それらの感覚を内に溜め込み、魂に取り込み、積み重ねていく。
彼女の熱は、脈となる。脈打つたびに外の世界への渇望を強め、青き世界の中での虚無感を、深めていく。
どくん。音のない音が、自分だけに聞こえる。どくん。震動のない震えが、魂を震わせる。どくん。どくん。
ど、くん。




共和国首都の西海岸沿いに、一つの島がある。
跳ね橋を渡して陸地と繋げてあるが、普段はその跳ね橋を上げていて、許可を得た者しか橋を渡れない。
その橋は、常に共和国軍兵士が固めているが、その兵士達が身に付けている軍服の色は通常の緑ではない。
一般の兵士とは対照的な、暗い赤である。それはすなわち、彼らが特異な存在であることの、証なのだ。
跳ね橋の先にある島は、高い塀によって囲まれている。簡単には乗り越えられず、覗けないようになっている。
遠目に見れば、灰色の箱のように見える。その内には、人であって人でない兵士達、異能部隊がいるのである。
だが、この事実を知る者は共和国軍の一部の人間と異能者と関わりの深い魔導師協会の一部だけなのである。
灰色の塀に囲まれた共和国軍基地の島、ということで、首都の住民達からは、通称基地島と呼ばれている。
塀の内側には、営舎が複数存在する。中でも、一番奥にあるものは特に大きく、佐官や下士官が使用している。
その営舎の一階にある部屋で、机を挟み、フローレンスは異能部隊の副隊長であるダニエルと対峙していた。
縦長の窓を背にして椅子に座っているダニエルは、フローレンスの視線をなんとも思わずに、書類を書いている。
ダニエルの傍には、異能部隊の隊長であり少佐であるギルディオスが立っていた。彼は、太く逞しい腕を組む。

「無理言うな、フローレンス」

フローレンスは、むくれている。

「たったの五十万ネルゴじゃないですか。捻出出来ますって、それぐらい」

「部隊の予算を喰い潰す気か? そんなでかい金、ほいほい出せるかってんだ」

ギルディオスは机に腰掛けると、足を組んだ。ダニエルは手前にある上官の背越しに、フローレンスを見る。

「大体、そんな大金を何に使うと言うんだ、曹長」

「魔導兵器を一から作るに決まってんじゃないですか!」

身を乗り出し、フローレンスはギルディオスに迫る。

「ね、隊長、いいですよね? あの子に体を造ってあげるんですから、無駄じゃないですよ!」

「あの子って、ああ、お前の執心している魔導鉱石のことか」

ダニエルは書き終えた書類を押しやると、羽根ペンをペン立てに差した。

「だが、無駄なものは無駄だ。そんなガラクタを造ったところで、使い物にならないのが目に見えている」

「その辺は大丈夫ですよ、あたしの設計に抜かりはありません」

フローレンスは暗い赤の作業着から、折り畳まれた紙を取り出すと、ダニエルに差し出した。

「仮設計の段階なんですけど、まぁこんな感じですね。石炭の代わりに魔導鉱石を燃料にした蒸気機関を使えば、効率的で燃料費は掛からないし、二足歩行式にするから、機動力にも問題ありません。砲や銃の類は装備出来ませんけど、その代わりに腕を蒸気で発射させる機能があるんですよ! 右腕は肘から先を分離させて発射させるんですけど、左腕は中に鎖が仕込んであって、色々な戦い方が出来るようになっているんですよ!」

どうだ凄いだろう、とでも言いたげにフローレンスは大きな胸を張っている。ダニエルは、その設計図を眺めた。
確かに、フローレンスの設計はなかなかのものだ。魔導金属を用いた魔導兵器の、内部構造図が書かれている。
蒸気機関を使用するので、胴体全体が蒸気釜のように丸くなっており、背部には太い排気筒が装備されていた。
人間のように両手両足と頭部が付いているが、いずれもかなりの太さだ。大きな体を支えるためなのだろう。
丸い胸部には、魔導金属製の台座がある。そこに魔導鉱石を填め込むことで、この人形は魔導兵器と化すのだ。
普通の機械として動かすのは、まず無理な構造だ。だが、魔法を用いて意思を与えれば、動かせないこともない。
魔導鉱石の魂から発せられる思念を、各部に伝えるための魔導金属製通力板と、音声変換用の振動板がある。
通力板は蒸気釜状の胸部、頭部、左腕、右腕、左手、右手の各関節、両足、腹部、腰、背部、排気口にあった。
この通力板は、魔力伝導率が高い魔導金属に更に魔法が施してあり、思念を使えば操れるようになっている。
胸部の蒸気釜は、内部の蒸気圧に耐えうるためにかなりの厚さになっており、銃撃程度では壊れそうにない。
フローレンスの自慢した通り、両腕には細工が施されている。左腕は肘から先を、分離出来るようになっている。
通力板を填め込まれた関節は思念だけで動かせるようになっており、左上腕には蒸気圧が注入出来るようだ。
つまり、左腕を蒸気圧で飛ばせる仕掛けらしい。丁寧なことに、飛ばした後に戻ってくる魔法も仕掛けてある。
動作反復の魔法だ。滅多なことでは消えないようにするためか、鋳る段階で、魔法陣を描き加えるようだった。
右腕と右肩には、魔導金属製の太い鎖とそれを巻く回転軸が内蔵してあり、これまた通力板を仕掛けてある。
回転軸には歯車がいくつも噛み合わされていて、蒸気圧を用いて回転させ、鎖を自在に出し入れ出来る。
左腕は遠距離の砲弾代わり、右腕は近接戦闘向きの武器と言ったところだろう。よく、こんなに考えるものだ。
ギルディオスはフローレンスの着想に感心したが、その下に書いてある予算の計算を見ると、げんなりした。

「あー、そうか…。魔導金属を馬鹿みたいに使うから、金も馬鹿みたいに掛かるんだな?」

予算の内訳は、こうだった。通力板用高純度魔導金属に三万ネルゴ、装甲用の合成魔導金属に十二万ネルゴ。
特注の小型蒸気機関に五万ネルゴ、右腕の内部に使用する魔導金属製の鎖に二万ネルゴ、歯車に七万ネルゴ。
魔導鉱石の原石の加工代に五千ネルゴ、魔導鉱石の台座用の魔導金属に二万五千ネルゴ、その他雑費諸々。
締めて、四十九万七千四百二十一ネルゴ。四捨五入すれば五十万ネルゴ。何にせよ、とんでもない大金だ。

「本当はもうちょっと必要なんですけど、材料費とかその辺だけにしときました」

フローレンスは、悪びれる様子もない。ダニエルは軽い頭痛を感じてしまい、額を押さえた。

「…お前という奴は」

「この、装甲の部分から魔導金属を差っ引けばもうちょい安くなるだろ。それで計算しなおさねぇ?」

ギルディオスが計算式を指すと、フローレンスは首を横に振る。

「装甲を差っ引いちゃダメなんです! ただの鉄なんかで造ったら、魔力伝導率が悪いじゃないですか! そんなんじゃ、反応速度が鈍っちゃって近接戦闘で負けちゃうじゃないですか!」

「こんな鉄塊とやり合える相手はいない。だから、近接戦闘を行うわけがない。馬鹿なことを言うな」

ダニエルが淡々と返すと、フローレンスは眉を吊り上げる。

「これからの戦闘は、こういう近代兵器が物を言うんです! きっと、今に機械人形が世間に普及しますよ!」

「…すると思うか?」

ギルディオスは身を屈め、ダニエルに尋ねた。ダニエルは、設計図から目を上げた。

「しないと思います。大体、機械が二本足で歩く必要性が見当たりません。車輪を用いて線路の上を突き進む機関車のように、安定した形状と明確な使用目的を持った機械であれば普及しますが、曹長のものはただの木偶人形です。両腕の武装にしても、非現実的極まりない馬鹿げた代物です。こんなものを使うぐらいだったら、我々の力を使って戦った方が余程効率的で無駄がありません。曹長、あまり無駄なことに時間を割かないでくれ。お前にも任務があるだろう、そちらに集中したらどうなんだ」

ダニエルはぞんざいに、設計図を机に放り投げた。フローレンスは、だん、と机に両手を付く。

「いいったらいいんです! やるったらやるんです! だから、お金出して!」

「隊長。どうにかして下さい」

フローレンスの勢いに押され、ダニエルはやや身を引いた。ギルディオスは、曖昧な言葉を漏らす。

「どうにかってもなぁ…」

フローレンスは、今度はギルディオスを見上げている。青い瞳には熱意が籠もっており、唇を固く締めている。
彼女の感情が高ぶったために、僅かに漏れ出ている思念も、熱が滾っている。フローレンスは、本気なのだ。
ここまで気合いを入れているフローレンスを、ないがしろにしては可哀想だとは思うが、現実的な問題がある。
共和国軍から異能部隊に与えられる軍資金には、限りがある。上半期で、それを使い切るわけにはいかない。
そうなれば、隊員達にろくな食事を与えることも出来なくなるし、任務を行う際に支障を来してしまうのだ。
ギルディオスの信念としては、喰うものがなければ戦えない、なので、隊員達の生活費を削ることは出来ない。
増して、暗殺などの重要な任務のために必要なものや情報を買い取るために、金を惜しんでは任務をしくじる。
それでなくても、戦闘部隊というものは金が入り用だ。それを、彼女一人の我が侭で破綻させることはならない。
作戦を立てて部隊を率いるのが佐官の仕事だが、部隊を守り、隊員達を支えるのも、立派な佐官の仕事だ。

「隊長」

フローレンスはギルディオスを、睨むように見つめている。ギルディオスは、意味もなく天井を仰ぐ。

「だから、無理なんだよ。諦めてくれや、フローレンス」

「あれがあるじゃないですか」

フローレンスは、真顔で窓の外を指した。ギルディオスは、彼女が示した先を見た途端、ぎょっとした。

「あっ、あれって、ありゃオレらの移動手段だろうが! 大陸で任務がある時に、必要なものだろうが!」

「アイゼン曹長! 非常識にも程がある!」

あまりのことに、ダニエルは立ち上がった。フローレンスは、至って平然としている。

「あれ、いい値段で売れると思いますよ? 軍用だから丈夫だし、部屋数も多いから改装すれば客船になりますし」

「だ、だからってよぉ…」

ギルディオスは、なんだか目眩がしてきた。フローレンスが指している先には、異能部隊専用の装甲船があった。
跳ね橋と繋がる門の隙間から、黒く塗られた船腹が見えている。大きさはそれほどでもないが、武装は立派だ。
砲弾にも耐えられるように船体には鉄板を貼り付け、機動力を高めるために帆ではなく蒸気機関を備えている。
異能部隊基地のある首都は共和国の本土とも言える大陸から離れた島にあるので、移動には船が欠かせない。
海上戦となる場合にも必要だし、緊急時の避難用としても必要だ。そんなに大事なものを、売れと言うのか。
ギルディオスは、内心で渋面を作った。フローレンスはそれを感じ取ったのか、勢いを失い、悲しげな目をした。

「やっぱり、ダメですか」

「ダメだな。悪ぃけどよ」

ギルディオスは、フローレンスの髪をぐしゃりと乱した。フローレンスは、目線を落とす。

「あたしは、どうしてもあの子の体を造りたいんです。隊長だって、前に造ってやるって言っていたじゃないですか」

「ああ、言ったな。確かに言った。だがな、フローレンス。物事には限度っつーもんがあるんだよ」

解ってくれや、とギルディオスはフローレンスの頭をぽんぽんと軽く叩いた。フローレンスは、項垂れる。

「でも」

「金が足りていたら、オレもお前のやりたいようにやらせたよ。だが、やっぱり、五十万ネルゴは無理なんだよ」

目に涙を溜めているフローレンスに、ギルディオスは申し訳なくなってきた。だが、仕方ないものは仕方ないのだ。

「な」

ギルディオスに宥められ、フローレンスはぎゅっと目を閉じた。悔しくてやるせなく、また、とても空しかった。
自分でも、五十万ネルゴは無茶苦茶だと解る。軍隊とて、そこまでの額の金をいきなり調達出来るわけがない。
だが、ああでなくてはいけないのだ。生半可な設計で柔な作りの魔導兵器になど、大切な彼を乗せたくない。
思う存分体が動かせるように蒸気機関で力を与え、言葉を操れるようにさせてやり、共に戦ってもらいたい。
そのためにも、馬力がある人型魔導兵器を造らなくてはならない。だから、必死になって、設計図を書いたのだ。
異能部隊にいる魔導技師や、以前は鉄工だった隊員に教えてもらった技術を注ぎ込んで、考えに考え抜いた。
何としてでも、造ってやりたい。だが、冷静になってみると、どれだけ自分が無茶を言っていたのか理解した。
頭の上に置かれているギルディオスの手は、子供の頃と同じように撫でてくる。それで、余計に情けなくなった。
フローレンスは目元を拭い、ギルディオスの手の下から頭を引いた。なんて、子供染みたことをしていたのだろう。

「…すみませんでした」

フローレンスはギルディオスに深く頭を下げた。くるっと背を向け、髪をなびかせながら足早に部屋を出ていった。
扉が閉められ、足音が遠のいていく。ダニエルは、嵐が過ぎ去ったことに安堵して、椅子に深く座り込んだ。

「やっと終わりましたか」

フローレンスの足音が聞こえなくなってから、ギルディオスは設計図を手に取った。清書だが、端書きもあった。
枠からはみ出した部分に、走り書きがいくつも並んでいる。だが、その多くが線を引かれて消されている。
線を引かれていない走り書きを、ギルディオスは読み取ろうとしたが、フローレンスの字のクセで読みづらい。

「なぁ、ダニー。これ、なんて読むと思う?」

ギルディオスは設計図を差し出し、消されていない走り書きを指した。ダニエルは、あまり面白くなさそうにする。

「それはそうとして、隊長。いい加減に私を秘書代わりに使うの、やめてくれませんか」

「えー、あー…だってよぉ…」

ギルディオスはばつが悪そうに、あらぬ方向に顔を向けた。

「書類って、目ぇ通したら終わりだろ? それをもう一度読んで、いちいち処理するの、面倒臭ぇんだもん」

「ですが、せめて署名ぐらいは自分で書いて下さい。おかげで、すっかり隊長の筆跡を覚えてしまいましたよ」

偽造も簡単ですね、と毒突きながらダニエルは書き終えた書類を重ねた。ギルディオスは、声を引きつらせる。

「あ…悪用、すんなよ、ダニー?」

「しませんよ。やれるとは思いますけどね」

ダニエルはギルディオスの不精さに呆れたが、顔には出さなかった。彼は尊敬出来る存在だが、欠点がある。
五百年近くもの年月を長らえるうちに、読み書き計算を覚えたのだが、中世時代は全く覚えていなかった。
というより、勉強しようとしなかったのだ。剣術にばかり精を出して、せっかく入った学校もあまり通わなかった。
その頃の感覚を引き摺っているので、書類仕事や数字の関わることや、作戦以外の会議には出たがらない。
面倒が嫌い、というか、苦手なのだと言っていた。だが、佐官ともなれば、面倒だがやるべきことは出来る。
しかし、それすらも放ったらかしにしてしまうことが多々あり、溜まるたびにダニエルが呼び付けられている。
まるで、課題を残した学生である。放ったらかしにされた書類の中には重要機密があることも、しばしばだ。
なのでダニエルは、ギルディオスの書類仕事を手伝わざるを得ない。手伝わなければ、後で大変なことになる。
ダニエルはため息を押し殺してから、ギルディオスの示した名前を見た。左が下がっている、クセの強い字だ。
上と下の文字と文字が重なっていたり、小文字のはずなのに大文字のようであったりして、確かに読みづらい。
だが、読めないこともない。ギルディオスの、力ばかりが入った歪んだ文字を見慣れているから、なのだろう。

「ヴェイパー、ですかね」

「そう読むのか、これ」

ギルディオスが聞き返すと、ダニエルは上官を見やる。

「綴りが間違っていなかったら、そう読みます。これが、どうかしましたか?」

「名前なのかもしれねぇな、こいつの」

ギルディオスは設計図を机に置いて、紙上の魔導兵器を撫でた。

「ヴェイパー、か」

フローレンスは、どんな思いでその名を付けたのだろう。ギルディオスはそれを想像し、少しばかり苦しくなった。
彼女が、あの青い魔導鉱石の原石を大事にしていることは、異能部隊の誰であろうと知っている周知の事実だ。
フローレンス以外の人間には、あの石の声は聞こえないらしく、人によってはフローレンスを気違いだと言う。
それでも、フローレンスは石を愛でている。大事な友人として扱い、掛け替えのない仲間として接している。
ギルディオスは、フローレンスが聞いている声の存在を信じている。きっと、あの石の内には誰かがいるのだ。
無機物の中に魂を得た、何かが。フローレンスはその何かに、機械の体を与え、自由をも与えようとしている。
彼女をあそこまで突き動かすのだから、きっと、その誰かは相当強く願っているのだ。体を得たいのだ、と。
フローレンスをそこまでさせるものは、一体何なのだろう。ギルディオスは、懸念と同時に不安を感じた。

「なぁ、ダニー」

ギルディオスは設計図を折り畳むと、ぱしっと手のひらに当てた。

「悪ぃが、また書類仕事、頼んでいいか?」

「今度は何ですか」

「精神感応通信の使用許可と承認の書類を頼む」

「途中までは書きますが、署名は書きませんからね。それぐらいは労働して下さい」

ダニエルがぼやくと、解ったよ、とギルディオスは苦笑した。さすがに、それぐらいはしなくてはいけない。
フローレンスの独断で事を起こすのはまずいが、そのヴェイパーの意思を聞いてから判断するのは良いだろう。
そのためには、フローレンスの力を借りなくてはいけない。ギルディオスには、異能の力などないのだから。
フローレンスが異能部隊に入隊したばかりの頃、こんな出来事があった。今から、もう八年も前のことだ。
ただの一度だけだが、魔導鉱石の原石を通じてフローレンスの思念を受け、それと共に石と思しき思念を感じた。
その時と同じ方法を使えば、ギルディオスに異能の力がなくとも、ヴェイパーとやらと会話が出来るはずだ。
ヴェイパー。その名を与えられた石の中の住人は、一体どんな者なのか、楽しみでもあり、不安でもあった。
彼が兵器として役に立つのであれば、正式に異能部隊隊員として認め、魔導兵器として活躍してもらえばいい。
だが、石の中に住まう魂の性根が善良ではなく、フローレンスを惑わしているのであったのなら、話は別だ。
魔力を帯びた存在は、希に悪しき魂を持つことがある。それは時として、人の魂を乱し、魅了してしまうのだ。
もしも、ヴェイパーなる魂がそういった魔性の者であるなら、フローレンスのためにも破壊しなければならない。
部下を守るのも、また、佐官の仕事だ。







06 9/7